【過払い金】不動産担保証券の売買を巡る争い

被告
平成
12

主文

1被告は,原告A2に対し,金9200万9999円及びこれに対する平成12年6月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2被告は,原告A3に対し,金4922万9999円及びこれに対する平成12年6月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3原告A2及び同A3のその余の請求並びに原告A1,同A4,同A5及び同A6の請求をいずれも棄却する。
4訴訟費用は,これを12分し,その3を被告の負担とし,その1を原告A3の負担とし,その余を原告A1,同A4,同A5及び同A6の負担とする。
5この判決は,第1項,第2項,第4項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由

第1請求

1被告は,原告A1,同A2,同A3及び同A4に対し,それぞれ金9460万9999円及びこれに対する平成12年6月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2被告は,原告A5に対し,金9457万5000円及びこれに対する平成12年6月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3被告は,原告A6に対し,金9619万9999円及びこれに対する平成12年6月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

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第2事案の概要

本件は,信託銀行である被告から,不動産共有持分の購入資金を借り入れ,不動産会社を代理した被告から,共有持分化された事業用建物の持分権を購入し,それについて,被告と信託契約を結んだ原告らが,被告に対し,説明義務違反による債務不履行若しくは不法行為又は信託契約違反による債務不履行若しくは不法行為に基づき,さらに,原告A2については,買取り約定についての債務不履行に基づき,不動産共有持分権の購入価格と信託契約終了時の売却価格の差額等を損害賠償として請求している事案である。
1争いのない事実等
(1)ア原告A1(以下「原告A1」という。),亡A2憲夫(後記(3)エのとおり,原告A2(以下「原告A2」という。)が亡A2憲夫を相続して,被告との間の契約の権利義務を承継した。),原告A3(以下「原告A3」という。),原告A4(以下「原告A4」という。),原告A5(以下「原告A5」という。)及び原告A6(以下「原告A6」という。)(以下,これらを総称して単に「原告ら」ということがある。)は,被告との間で,後記のとおり,不動産売買契約及び不動産信託契約を締結した者である(争いのない事実)。
イ被告は,信託業務,資金の貸付等の銀行業務及びそれに付随する業務を目的とする株式会社であり,昭和63年ころから平成元年ころにかけて,売主を代理して,都心の事業用建物などの不動産を共有持分権化して販売し,同不動産の共有持分権について信託を受け,これを被告において,一体的に管理及び処分するという不動産小口化商品を販売していた(以下,商品名である「サミット」という。)(争いのない事実)。
ウ株式会社C(以下「C」という。)は,昭和63年及び平成元年当時,別紙物件目録1(1)記載の不動産(以下「a」という。)及び同目録1(2)及び(3)記載の各不動産(以下「b」という。)(以下,これらを総称して「c」という。)を所有しており,各不動産を小口化して共有持分権に分割しリンクという名称を付して,買受人が,被告との間に,信託契約を締結することを前提として,被告を代理人としてその共有持分権を販売した(争いのない事実)。
エD株式会社(以下「D」という。)は,平成元年当時,別紙物件目録2(1)及び(2)記載の各不動産(以下「dビル」という。)を所有しており,各不動産を小口化して共有持分権に分割しゲインという名称を付して,買受人が,被告との間に,信託契約を締結することを前提として,被告を代理人としてその共有持分権を販売した(争いのない事実)。
(2)原告A1について
ア原告A1は,Cの代理人である被告から,昭和63年9月24日,aの20分の1の持分権を代金1億円で買い受けた(以下「本件A1売買契約」という。)(争いのない事実)。
イ原告A1は,被告から,平成元年1月ころ,金7500万円を,最終返済期日平成12年3月26日,変動利息の約定で,当初の利息年5.7パーセントとして借り受けた(以下「本件A1消費貸借契約」という。)(争いのない事実,乙32)。
ウ原告A1と被告は,平成元年1月26日,原告A1を委託者兼受益者,被告を受託者として,aの20分の1の持分権について,下記のとおり,信託契約を締結した(以下「本件A1信託契約」といい,これと同一内容の信託契約について「a信託契約」という。)(争いのない事実)。
(ア)信託不動産aの20分の1の持分権(第1条(2))
(イ)信託の目的不動産にかかわる共有持分権の一体的管理及び管理終了に伴う一体的処分(第1条(1))
(ウ)信託の期間平成元年1月26日から平成12年3月15日まで(第1条(3))
(エ)信託の計算信託財産に関する計算期日は,毎年6月,12月の各末日及び信託終了の時とし,受託者は,当該計算期間の収支計算書を作成して,委託者兼受益者に報告する(第1条(5))。
(オ)収益の交付受託者は,計算の結果生じた収益を各計算期間の翌営業期日以降に委託者兼受益者に対し金銭をもって支払う(第1条(6))。
(カ)受益権の譲渡禁止委託者兼受益者は,やむを得ない事情による場合を除き受益権を譲渡又は質入れすることはできない(第4条)。
(キ)信託不動産の管理・処分受託者は,信託目的に従って,Cに対して,受託者が相当と認める条件で信託不動産を一体として賃貸する。
この場合,賃借人は,これを第三者に転貸できるものとする(第5条)。
(ク)信託報酬受託者は,信託報酬として信託財産の各計算期ごとの受入賃貸料収入合計額に対し10パーセント相当額を各計算期日及び信託終了の時に信託財産の中から受け入れるものとする(第12条)。
(ケ)解除本契約は,信託目的の達成又は信託事務の遂行が不可能又は著しく困難と認めた場合に受託者が解除できる場合を除き,解除することができない(第13条)。
(コ)信託の終了受託者は,信託期間満了時に受託者が定める価格(受託者が指定する不動産鑑定業者による不動産鑑定評価額を基準とする。)及び方法により信託不動産を一体として売却し,信託終了時に残存する信託の元本は,最終計算の承認を得た後,金銭をもって委託者兼受益者に交付する。
ただし,委託者兼受益者のために不利益であると受託者が認めたときは,信託財産を現状のまま委託者兼受益者に引き渡すことができる(第5条第4項,第14条)。
エ被告は,平成12年3月15日,aについて,2億7980万円(20分の1の持分権当たり,各1399万円)で売却した。
原告A1の信託元本は,留保金1円を加えた1399万0001円である(争いのない事実)。
(3)原告A2について
ア亡Bは,Cの代理人である被告から,昭和63年9月20日,aの20分の1の持分権を代金1億円で買い受けた(以下「本件A2売買契約」という。)(争いのない事実)。
イ亡Bは,被告から,平成元年1月26日,金3000万円を,最終返済期日平成12年3月16日,変動利息の約定で,当初の利息年5.5パーセントとして借り受けた(以下「本件A2消費貸借契約」という。)(争いのない事実,甲5)。
ウ亡Bと被告は,平成元年1月26日,亡Bを委託者兼受益者,被告を受託者として,aの20分の1の持分権について,a信託契約を締結した(以下「本件A2信託契約」という。)(争いのない事実)。
エ亡Bは,平成9年11月20日,死亡し,娘であるE(以下「E」という。)の子であり,亡Bと養子縁組をしていた原告A2が,相続により亡Bと被告との間の契約の権利義務を承継した(争いのない事実)。
オ被告は,前記(2)エのとおり,aを売却した。
原告A2の信託元本は,留保金1円を加えた1399万0001円である(争いのない事実)。
(4)原告A3について
ア原告A3は,Cの代理人である被告から,昭和63年9月20日,aの20分の1の持分権を代金1億円で買い受けた(以下「本件A3売買契約」という。)(争いのない事実)。
イ原告A3は,被告から,平成元年1月ころ,金1億5000万円を,最終返済期日平成12年3月26日,変動利息の約定で,当初の利息年5.7パーセントとして借り受けた(以下「本件A3消費貸借契約」という。)(争いのない事実,乙22,弁論の全趣旨)。
ウ原告A3と被告は,平成元年1月26日,原告A3を委託者兼受益者,被告を受託者として,aの20分の1の持分権について,a信託契約を締結した(以下「本件A3信託契約」という。)(争いのない事実)。
エ被告は,前記(2)エのとおり,aを売却した。
原告A3の信託元本は,留保金1円を加えた1399万0001円である(争いのない事実)。
(5)原告A4について
ア原告A4は,Cの代理人である被告から,昭和63年9月16日,aの20分の1の持分権を代金1億円で買い受けた(以下「本件A4売買契約」という。)(争いのない事実)。
イ原告A4は,被告から,平成元年1月ころ,金1億円を,最終返済期日平成12年3月26日,変動利息の約定で,当初の利息年5.3パーセントとして借り受けた(以下「本件A4消費貸借契約」という。)(争いのない事実,乙15)。
ウ原告A4と被告は,平成元年1月26日,原告A4を委託者兼受益者,被告を受託者として,aの20分の1の持分権について,a信託契約を締結した(以下「本件A4信託契約」という。)(争いのない事実)。
エ被告は,前記(2)エのとおり,aを売却した。
原告A4の信託元本は,留保金1円を加えた1399万0001円である(争いのない事実)。
(6)原告A5について
ア原告A5は,Cの代理人である被告から,平成元年11月2日,bの18分の1の持分権を代金1億0036万8160円で買い受けた(以下「本件A5売買契約」という。)(争いのない事実)。
イ原告A5は,被告から,平成元年12月ころ,金1億円を,最終返済期日平成12年4月27日,変動利息の約定で,当初の利息年6.3パーセントとして借り受け(以下「本件A5消費貸借契約」という。)(争いのない事実,乙14)。
ウ原告A5と被告は,平成元年12月19日,原告A5を委託者兼受益者,被告を受託者として,bの18分の1の持分権について,下記のとおり,信託契約を締結した(以下「本件A5信託契約」といい,これと同一内容の信託契約について「b信託契約」という。)(争いのない事実)。
(ア)信託不動産bの18分の1の持分権(第1条(2))
(イ)信託の目的不動産にかかわる共有持分権の一体的管理及び管理終了に伴う一体的処分(第1条(1))
(ウ)信託の期間平成元年12月19日から平成12年3月15日まで(第1条(3))
(エ)信託の計算信託財産に関する計算期日は,毎年5月,11月の各末日及び信託終了の時とし,受託者は,当該計算期間の収支計算書を作成して,委託者兼受益者に報告する(第1条(5))。
(オ)収益の交付受託者は,計算の結果生じた収益を各計算期間の翌営業期日以降に委託者兼受益者に対し金銭をもって支払う(第1条(6))。
(カ)受益権の譲渡禁止委託者兼受益者は,やむを得ない事情による場合を除き受益権を譲渡又は質入れすることはできない(第4条)。
(キ)信託不動産の管理・処分受託者は,信託目的に従って,Cに対して,受託者が相当と認める条件で信託不動産を一体として賃貸する。
この場合,賃借人は,これを第三者に転貸できるものとする(第5条)。
(ク)信託報酬受託者は,信託報酬として信託財産の各計算期ごとの受入賃貸料収入合計額に対し10パーセント相当額を各計算期日及び信託終了の時に信託財産の中から受け入れるものとする(第12条)。
(ケ)解除本契約は,信託目的の達成又は信託事務の遂行が不可能又は著しく困難と認めた場合に受託者が解除できる場合を除き,解除することができない(第13条)。
(コ)信託の終了受託者は,信託期間満了時に受託者が定める価格(受託者が指定する不動産鑑定業者による不動産鑑定評価額を基準とする。)及び方法により信託不動産を一体として売却し,信託終了時に残存する信託の元本は,最終計算の承認を得た後,金銭をもって委託者兼受益者に交付する。
ただし,委託者兼受益者のために不利益であると受託者が認めたときは,信託財産を現状のまま委託者兼受益者に引き渡すことができる(第5条4項,第14条)。
エ被告は,平成12年3月15日,bについて,2億5245万円(18分の1の持分権当たり各1402万5000円)で売却した。
原告A5の信託元本は,1402万5000円である(争いのない事実)。
(7)原告A6について
ア原告A6は,Dの代理人である被告から,平成元年1月28日,dビルの37分の1の持分権を代金1億円で買い受けた(以下「本件A6売買契約」といい,これと本件A1売買契約,本件A2売買契約,本件A3売買契約,本件A4売買契約及び本件A5売買契約を総称して「本件原告ら売買契約」という。)(争いのない事実,甲19)。
イ原告A6は,被告から,同年3月16日,金1億円を,最終返済期日平成12年5月ころ,変動利息の約定で,当初の利息年5.3パーセントとして借り受けた(以下「本件A6消費貸借契約」といい,これと本件A1消費貸借契約,本件A2消費貸借契約,本件A3消費貸借契約,本件A4消費貸借契約及び本件A5消費貸借契約を総称して「本件原告ら消費貸借契約」という。)(争いのない事実,弁論の全趣旨)。
ウ原告A6と被告は,平成元年3月16日,原告A6を委託者兼受益者,被告を受託者として,dビルの37分の1の持分権について,下記のとおり,信託契約を締結した(以下「本件A6信託契約」といい,これと本件A1信託契約,本件A2信託契約,本件A3信託契約,本件A4信託契約,本件A5信託契約を総称して「本件原告ら信託契約」という。)(以下,本件A6信託契約と同一内容の信託契約について「dビル信託契約」といい,これとa信託契約及びb信託契約を総称して「本件各信託契約」という。)(以下,本件各信託契約の各信託不動産の共有持分権について「本件共有持分権」という。)(以下,本件原告ら売買契約,本件原告ら信託契約及び本件原告ら消費貸借契約を総称して「本件各契約」という。)(争いのない事実)。
(ア)信託不動産dビルの37分の1の持分権(第1条(2))
(イ)信託の目的不動産にかかわる共有持分権の一体的管理及び管理終了に伴う一体的処分(第1条(1))
(ウ)信託の期間平成元年3月16日から平成12年5月16日まで(第1条(3))
(エ)信託の計算信託財産に関する計算期日は,毎年6月,12月の各末日及び信託終了の時とし,受託者は,当該計算期間の収支計算書を作成して,委託者兼受益者に報告する(第1条(5))。
(オ)収益の交付受託者は,計算の結果生じた収益を各計算期間の翌営業期日以降に委託者兼受益者に対し金銭をもって支払う(第1条(6))。
(カ)受益権の譲渡禁止委託者兼受益者は,やむを得ない事情による場合を除き受益権を譲渡又は質入れすることはできない(第4条)。
(キ)信託不動産の管理・処分受託者は,信託目的に従って,Dに対して,受託者が相当と認める条件で信託不動産を一体として賃貸する。
この場合,賃借人は,これを第三者に転貸できるものとする(第5条)。
(ク)信託報酬受託者は,信託報酬として信託財産の各計算期ごとの受入賃貸料収入合計額に対し10パーセント相当額を各計算期日及び信託終了の時に信託財産の中から受け入れるものとする(第12条)。
(ケ)解除本契約は,信託目的の達成又は信託事務の遂行が不可能又は著しく困難と認めた場合に受託者が解除できる場合を除き,解除することができない(第13条)。
(コ)信託の終了受託者は,信託期間満了時に受託者が定める価格(受託者が指定する不動産鑑定業者による不動産鑑定評価額を基準とする。)及び方法により信託不動産を一体として売却し,信託終了時に残存する信託の元本は,最終計算の承認を得た後,金銭をもって委託者兼受益者に交付する。
ただし,委託者兼受益者のために不利益であると受託者が認めたときは,信託財産を現状のまま委託者兼受益者に引き渡すことができる(第5条第4項,第14条)。
エ被告は,平成12年5月16日,dビルについて,4億5880万円(37分の1の持分権当たり各1240万円)で売却した。
原告A6の信託元本は,留保金1円を加えた1240万0001円である(争いのない事実)。
(8)別紙a当初委託者兼受益者欄記載のとおり,原告A1,同A2,同A3及び同A4を含め,合計20名の顧客が,被告との間で,aの各20分の1の持分権について,a信託契約を締結していたところ,そのうち9名が,別紙a受益権譲受人欄記載の譲受人に対し,信託期間中に,同持分権を売却して,被告との間のa信託契約を解約し,新たに,同受益権譲受人らが被告との間で,同持分権について,a信託契約を締結した(争いのない事実)。
(9)別紙b当初委託者兼受益者欄記載のとおり,原告A5を含め,合計16名の顧客が,被告との間で,bの各18分の1の持分権について(Cについては18分の3の持分権),b信託契約を締結していたところ,そのうち12名が,別紙b受益権譲受人欄記載の譲受人に対し,信託期間中に,同持分権を売却して,被告との間のb信託契約を解約し,新たに,同受益権譲受人らが被告との間で,同持分権について,b信託契約を締結した(争いのない事実)。
(10)別紙dビル当初委託者兼受益者欄記載のとおり,原告A6を含め,合計34名の顧客が,被告との間で,dビルの各37分の1の持分権について(杉浦仁太郎については37分の3,日向方斉については37分の2の持分権),dビル信託契約を締結していたところ,そのうち22名が,別紙dビル受益権譲受人欄記載の譲受人に対し,信託期間中に,同持分権を売却して,被告との間のdビル信託契約を解約し,新たに,同受益権譲受人らが被告との間で,同持分権について,dビル信託契約を締結した(争いのない事実)。
2争点
(1)総論
ア被告の違法行為の前提となる本件各契約の特性について
イ説明義務違反について
ウ信託契約違反について
(ア)本件原告ら信託契約の目的
(イ)管理方法変更義務の有無及び同義務違反の有無
(ウ)平等義務の有無及び同義務違反の有無
エ損害論
(2)各論
ア原告A1について
イ原告A2について
ウ原告A3について
エ原告A4について
オ原告A5について
カ原告A6について
3争点に関する当事者の主張
(1)総論
ア被告の違法行為の前提となる本件各契約の特性について
(原告らの主張)
(ア)本件原告ら売買契約,本件原告ら信託契約及び本件原告ら消費貸借契約の三者が一体となった商品
a本件原告ら売買契約及び本件原告ら信託契約の一体性
本件原告ら売買契約第3条は,物件の引渡し時に買主である原告らを委託者兼受益者,被告を受託者とする信託契約を締結することをあらかじめ承諾するとされているし,本件原告ら売買契約についての重要事項説明書の特約条項にも,信託契約を物件引渡し時に締結すると記載されているから,本件原告ら売買契約は,本件原告ら信託契約と一体となるものである。
b本件原告ら消費貸借契約と本件原告ら売買契約及び本件原告ら信託契約の一体被告の作成した本件原告ら売買契約及び本件原告ら信託契約についてのパンフレットには,ローン金利や減価償却などの経費控除が認められるとの記載のほか,ローンを設定すると所得税や相続税対策になるとの説明もされ,被告から融資を受けてサミットを購入することの利点が強調されており,被告は,融資を一体のものとして,サミットの購入を勧誘していた。
これらの事実にかんがみれば,本件原告ら売買契約及び本件原告ら信託契約と本件原告ら消費貸借契約は,一体の契約であると解される。
cサミットの問題点
(a)多額の借入れによる新たな危険の負担
既存の自己保有不動産を信託する場合には,委託者兼受益者は,信託期間中不動産価格が下落することによる資産価値の目減りという損失を被るだけであるが,本件のように,融資を受けて信託不動産を購入する場合,委託者兼受益者である原告らは,利息を含めた多額の負債総額の返済という新たな危険を負担することになり,他方で,被告は,多額の利息収入を得ることができることとなる。
(b)契約に基づく危険やその程度が容易に理解できない
サミットは,被告が新しく開発した商品であって,その内容は一般には熟知されていない状況にあり,しかも,元本保証のある貸付信託との違いが分かりにくく,加えて,本件原告ら信託契約の信託期間は,約11年であり,委託者兼受益者である原告らは,11年後の不動産市況やそれに伴う危険性を実感することができず,原告らにおいて,本件原告ら信託契約に基づく危険性を認識することができなかった。
(イ)委託者兼受益者が損失の拡大を防止できない商品
a委託者兼受益者は自らの判断で信託財産の管理,運営,処分方法を変更できな本件原告ら信託契約では約11年もの長きにわたる信託期間中,委託者兼受益者には,信託の受益権の譲渡,質入れは原則として認められず(第4条第1項),また,委託者兼受益者側からする信託契約の解除も認められていない(第13条)。
さらに,信託不動産は,受託者が一体的に管理し,管理終了後には一体的に処分され(第1条(1)),管理方法については,受託者が相当と認める条件において第三者に信託不動産を一体として賃貸し(第5条第1項),処分方法については,信託期間満了時に受託者が定める価格(受託者が指定する不動産鑑定業者による不動産鑑定評価額を基準とする。)及び方法により,一体として売却するとされている(第5条第4項)。
すなわち,本件原告ら信託契約書上,信託財産の管理,運営,処分方法など一切の権限がすべて受託者に委ねられ,委託者兼受益者は,自らの判断で管理,運営,処分方法を変更することは認められておらず,一度信託契約を締結すると,信託契約によって極めて強い拘束を受けるものであった。
b委託者兼受益者自らは,何らの損失防止策を講ずることができない上記のような契約上の拘束によって,委託者兼受益者には,実質上,下記のとおり,信託期間中の損失を自ら回避することができない。
(a)一般の不動産の共有権者のように,適切な時期に,委託者兼受益者が他の委託者兼受益者と共同して自らの判断で信託不動産を一体として処分することができない。
(b)適切な時期に,信託契約を解除して,自らの不動産持分権を処分することができない。
(c)受益権譲渡が制限されているばかりか,そもそも受益権に市場性がないため,委託者兼受益者が実際上,受益権を譲渡して損害を食い止めることもできない。
(ウ)サミットは,信託不動産のキャピタルゲインを前提とする金融商品であったサミットは,節税対策のために借入れをした場合,毎年の収支は,赤字であるから,信託不動産の共有持分権が,信託終了時において,当初の購入価格である1億円で売却できたとしても,最終的には利益が得られない仕組みとなっており,信託終了時に譲渡益を得られた場合に初めて黒字になる可能性のある商品であって,キャピタルゲインを目的とした投機的商品であった。
(エ)元本保証としての買取り制度
サミットには,やむを得ない場合,1億円の購入価格で売主が買い取るという買取り制度があった。
これは,被告が,サミットを購入した者に対し,元本保証したものと理解できる。
(被告の主張)
(ア)本件原告ら売買契約,本件原告ら信託契約及び本件原告ら消費貸借契約の個別性
原告らは,本件原告ら売買契約,本件原告ら信託契約及び本件原告ら消費貸借契約が一体の契約であると主張しているが,これらの契約が,法律上,別個の契約であることは明らかであり,原告らの主張は全く根拠がない。
また,本件原告ら消費貸借契約は,手持ち資金が不足する不動産購入希望者の便宜のためのものにすぎず,不動産購入希望者が被告との間で消費貸借契約を締結する必要はないし,不動産購入価額全額を借り入れる必要もない。
(イ)本件各信託契約を中途解約できないことの合理性
原告らは,本件原告ら信託契約は中途解約ができないこと及び受益権の譲渡が原則として禁止されていることをもって,原告らが本件各信託契約によって極めて強い拘束を受けていると主張しているが,かかる主張は失当である。
本件原告ら信託契約において,中途解約や受益権譲渡が禁止されている理由は,信託契約の解除を認めると,不動産を一体として管理又は処分することが現実的に極めて困難となり,本件原告ら信託契約の目的が達せられないこととなる可能性が極めて大きくなること及び不動産投資の適格のない者が本件共有持分権を取得することを防止するためであり,いわば当然のことである。
したがって,中途解約の禁止は,原告ら委託者兼受益者の利益のためのものであり,原告らを合理的理由なく拘束するものではない。
なお,本件各信託契約を終了させ一部の共有持分権が受託者から委託者兼受益者に移転し,本件各信託不動産の一体性が確保されないこととなる本件各信託契約の中途解約は認められないが,不動産投資の視力と能力を有し,本件各信託契約の内容を理解できる投資家が,自らの判断で,本件共有持分権の購入を希望し,新たに被告との間で本件各信託契約を締結することに同意した場合には,その不動産投資家が被告との間で新たに従来と同内容の本件各信託契約を締結することを条件に,本件各信託契約の解除を例外的に認めることは,本件各信託契約第13条の趣旨に反しないと考えられ,被告は,原告らを含む委託者兼受益者が本件各信託契約を解除し本件共有持分権を売却したい(損切りしたい)という意向を持っている場合,可能な範囲で,委託者
兼受益者に対するサービスとして,本件共有持分権の購入希望者を紹介したり,購入希望情報を収集することに協力した。
(ウ)サミットがキャピタルゲインを前提としていることについて
前記(ア)のとおり,本件原告ら信託契約と本件原告ら消費貸借契約は一体の契約であるということはできないから,これを前提とする原告らの主張は理由がなく,本件原告ら信託契約の信託終了時の信託元本が,信託不動産の価格によって定まることは明らかであり,このことを,原告らは理解していた。
(エ)本件各信託契約の買取り制度は,買取り保証や元本保証ではないこと本件各信託契約のうち,Cが売主となったものについては,やむを得ない場合に限って買取り制度が存在したが,これは,都心の不動産価格が今後も高騰することを前提に,投資家が破産しあるいは相続が発生したことによって不動産投資の適格を喪失して本件共有持分権を現金化する必要がある場合に限り,投資家がキャピタルゲインを放棄し,他に購入希望者がいない場合には,売主が販売価格で買い取る意向を有していることを意味しているにすぎず,買取り制度は,不動産価格の高騰を前提としているし,投資家が,売主に対し,買取りを法的に請求できるという意味での買取り保証ではないし,元本を保証するものでもない。
イ説明義務違反について
(原告らの主張)
(ア)説明義務の根拠及び重要性
aサミットを販売した被告には,信義則上,顧客である原告らに対し,正しい選択をするのに必要な事項及び情報について,サミットの危険性も含めて説明する義務があった。
このことは,証券取引法第50条において,断定的判断の提供が禁止され,保険業法第300条,東京都消費生活条例第19条,平成7年に施行された不動産特定共同事業法第20条及び平成13年に施行された消費者契約法第1条及び第4条において,不実告知が禁止され,重要事項については,説明する必要があるとされていることからも明らかである。
b専門家と非専門家の間の危険性を伴う投資商品についての取引においては,両者の情報量及び知識等に差があることから,専門家において,説明義務が加重されるというべきであるし,前記ア(原告らの主張)記載の本件原告ら信託契約の特性を考えると,被告は,信託銀行として,金融商品についての専門家であり,顧客に対し自己責任を負担させる前提として,サミットについて,後記(イ)のとおり,説明を尽くす義務があった。
また,被告は,原告らが高学歴であり,投資経験も豊かであったから,サミットの内容について容易に理解できたと主張するが,原告らは,金融以外の分野についての専門家であるから,金融商品であるサミットについて容易に理解できるとはいえず,被告の説明義務を免除することの根拠にはならないし,原告らは,資産は有していたが,投資によって得たものではないから,原告らについて投資経験が豊富であるとする被告の主張は誤っている。
(イ)被告において説明すべき内容
被告は,本件原告ら売買契約締結時において,原告らに対し,前記ア(原告らの主張)記載のサミットの特性及び問題点を説明すべきであったし,とりわけ,サミットの危険性については,下記の点について説明すべきであった。
aサミットに元本保証がないこと
サミットが開発された当時,「信託」として周知性があったのは,元本保証があり,期間中の解約も可能であったビッグやヒットなどの貸付信託であったところ,本件原告ら信託契約は,貸付信託と「信託」という点で共通点があり,またサミットやリンク,ゲインといった名称が付されていて,貸付信託と混同される可能性があったから,サミットは,元本の保証のない投資商品であることを明確に説明すべきであった。
b損益分岐点となる最終処分価格
また,被告としては,信託期間中の損益や収支について,おおむね予測することもできたのであるから,収支均等にするためのキャピタルゲイン,すなわち,信託期間中の収支及び信託期間満了時に不動産を売却するための諸経費(譲渡所得税を含む)等を支払った後の総計において,損失が出ないといえるために必要なキャピタルゲインの目安についても説明すべきであった
c将来不動産市況が悪化する可能性があったこと
また,原告らが本件原告ら信託契約を締結した平成元年当時,地価上昇率が急激に鈍化しており,将来において地価が下落する可能性があったのであるから,これを説明すべきであった。
(ウ)説明義務違反
ところが,被告は,以下のとおり,サミットが元本の保証のない投資商品であることを明確に説明しなかったばかりか,サミットが安全性の高い商品であると説明して勧誘を行った。
aサミットは,本質的にキャピタルゲインを前提とした投資商品であって,元本保証がない危険性の高い投資商品であるが,被告は,パンフレットにこの点を記載していないし,また,実際の勧誘に際しても,被告の担当者は,信託銀行の堅実確実なイメージを強調するのみで,サミットの本質的特性や危険性について,明確な説明をしなかった。
b被告の担当者は,サミットの利点のみを強調し,危険性についての記載のないパンフレットに基づき,サミットがキャピタルゲインを目的とした投機的な危険性の高い商品であるにもかかわらず,積極的に,本件信託契約が「資産の保全」となり「安全」な商品であると誤解させ,しかも,被告の責任回避となり,危険性の存在を予想させる免責条項について説明を行わず,最終処分価格が1億円を下回ることはないとの説明を行った。
(エ)原告らのサミット購入の動機
亡Bを含む原告らは,被告担当者による,サミットを購入することが「資産の保全」になるとの説明を信用し,本件原告ら信託契約信託期間満了時において,最終処分価格が購入価格の1億円を下回ることがなく,「資産の保全」になると誤信して,現有資産の保全の目的で,サミットを購入した。
(オ)結論
被告の勧誘行為は,最終処分価格が購入価格の1億円を下回ることがなく,サミットを購入することが「資産の保全」となると誤解させる違法な勧誘行為であり,説明義務違反としての債務不履行及び不法行為が成立する。
(被告の主張)
(ア)本件各契約について,被告に特別の説明義務はないこと
平成元年当時,多数の信託銀行が不動産小口化商品を取り扱っており,投資家が,信託銀行に対して,購入した不動産共有持分権を,その不動産共有持分権の一体的管理及び一体的処分を目的として信託する信託契約は,決して珍しいものではなかった。
また,本件原告ら信託契約は,いわゆる管理処分型の不動産信託に属するが,この信託契約は,ワラント取引等と異なり,一般的に見ても専門的知識の特に要求される複雑な取引に当たるとはいえない。
したがって,被告が,原告らとの間に,本件原告ら信託契約を締結する際,被告において特別な説明義務を負っているとは考えられない。
また,原告は,本件原告ら売買契約及び本件原告ら信託契約が不動産投資であることを十分理解していたが,不動産投資の場合,不動産の価格が不動産市況の変動に伴い上下するものであることは常識であり,原告らの知的レベル及び投資経験にかんがみれば,原告らと被告の間に,不動産の価格が不動産市況の変動に伴い上下する点について,知識情報の差があるはずもないし,原告らが不動産投資を行う際,専門家である被告の知識及び経験を信頼して判断せざるを得ないなどということはあり得えない。
特に,本件において,原告らは,利益はあるが危険性はない不動産投資がこの世に存在しないことを当然分かっていたというべきであり,原告らがこの程度のことを理解できずに不動産投資を行うことはあり得ない。
したがって,被告は,本件原告ら売
買契約について,重要事項説明を行うことの外に,特別な説明を行うべき義務を負っていない。
さらに,原告らは,本件原告ら信託契約書や本件原告ら売買契約書を読むことによって,本件原告ら売買契約が不動産投資であることが理解できたし,本件原告ら信託契約書第9条第2項には,「受託者は,受託者の責に帰すべき事由による場合を除き,事由の如何を問わず,信託財産について生じた価格の下落その他の損害について責を負わない。」ことが明記されており,投資家が不動産の価格の下落による危険性を負担していることは容易に理解できたのであるから,被告が,原告らに対して,改めて不動産市況の変動に伴う危険性や本件原告ら信託契約の内容について,パンフレットやリーフレットに記載されている内容以外の事柄について,殊更に説明するべき義務はない。
(イ)被告に説明義務違反のないこと
仮に,被告に何らかの説明義務が認められたとしても,投資家に対する説明義務の程度は,投資家の知的レベル,投資経験,資力,投資に対する主体性及び投資の目的など投資家の属性によって異なる。
原告らは,いずれも投資経験の豊富な知的レベルの高い資産家であり,被告は,原告らに対し,パンフレット及びリーフレットを交付し,本件原告ら信託契約は原告らが購入した本件共有持分権を他の投資家の本件共有持分権と共に被告に信託するものであること,本件原告ら信託契約の信託の目的は信託不動産の一体的管理及び一体的処分であること,信託期間が約10年であること,信託期間中は被告が第三者に対して本件共有持分権を一括して賃貸すること,約10年後に信託期間が満了した時点で被告は第三者に対し本件共有持分権を一体として時価
で売却し,その売却代金を委託者兼受益者に対し交付することなど,本件原告ら信託契約の内容について説明を行った。
また,信託期間中の信託配当は,不動産所得となり,本件原告ら消費貸借契約に基づく借入金利息額が信託配当額を上回り,不動産所得が赤字となる場合には損益通算により課税所得が低くなること,不動産所得が黒字となる場合には,納税額が増えること,不動産は実勢価格よりも低い路線価ベースで評価されるため,相続税対策になる場合があること,税務面の説明は当時の税制に基づくものであり,今後の税制改正によって変更になる場合があることなど,本件原告ら売買契約及び本件原告ら信託契約の内容について説明を行った。
また,被告は,原告らに対して,重要事項説明書に基づき本件原告ら売買契約の内容について,説明を
行った。
また,被告は,原告らに対して,原告らの投資判断を誤らせるような断定的説明を行ったことはないのであるから,被告に説明義務違反はない。
なお,原告らは,信託期間中の信託配当が赤字であるため,節税額を考慮してもキャッシュフローベースでは赤字であること,したがって,信託期間満了時の最終処分価格が1億円であると,原告らの収支は,赤字になることについて説明を受けなかったため,この点を理解できなかったと主張しているが,不動産投資においては投資対象不動産の価値が不動産市況の変動に伴い上下する危険性があることは常識であり,不動産共有持分権を購入することによる節税効果等を熟知していた原告らがこのような常識的な事柄を理解できないはずがなかった。
ウ信託契約違反について
(原告らの主張)
(ア)信託の意義,目的と受託者の権限行使基準
a信託制度は,専門的知識などを有する第三者に自己の財産の管理を委ねるための制度であり,委託者兼受益者と受託者の信頼関係を基礎としており,受託者は,委託者兼受益者の意図した目的,すなわち信託の本旨に従って財産を管理しなければならず,そのために与えられた権限を適切に行使する義務を負う。
受託者の権限の行使基準については,信託契約書に記載された文言を形式的に解釈するのではなく,委託者兼受益者が受託者に委託した具体的な信託行為の中に見出す必要がある。
すなわち,受託者の職務執行上の基準となるのは,具体的な信託行為の条項を離れて,信託制度の存在理由やそこから派生した原理,原則であり,信託を行う上で委託者兼受益者が意図した目的である。
b本件についてみると,委託者兼受益者の意図した目的は,「資産の保全」であり,受託者の権限は,委託者兼受益者の資産の保全に適合するよう行使されなければならない。
委託者兼受益者の意図した目的が「資産の保全」にあることは,サミットは,資産の保全に役立つ,節税効果があるとの被告の勧めに応じて,原告らが被告から多額の資金を借り入れてサミットを購入し,これを被告に信託したという一連の経過から明らかである。
なお,被告は,信託の目的が「不動産共有持分権の一体的管理及び一体的処分」であると主張するが,原告らが被告に求めたのは,信託銀行としての専門的な知識に基づき原告らの資産を保全することであり,「不動産共有持分権の一体的管理及び一体的処分」は,そのための信託財産の管理方法であって,これが委託者兼受益者の意図した信託目的ではないことは明白である。
(イ)信託法上受託者である被告の負うべき義務
a善管注意義務と誠実義務
信託は,委託者兼受益者と受託者との信頼関係が基礎となっており,受託者は,信託行為が有償か無償かにかかわらず,委託者兼受益者の意図した目的に従って,善良な管理者の注意をもって信託財産を管理するという善管注意義務を負う。
また,受託者は,信託目的の範囲内では,もっぱら信託財産(委託者兼受益者)の利益のために行動すべきであり,自らを信託財産から利益を受けるような立場に置いてはならないという誠実義務(忠実義務)を負っている。
特に,本件においては,被告は,金融の専門家として原告らから1億円の価値を有する多額の資産の信託を受け,原告らから信託報酬をも得ているのである。
これらの義務は,信託の意義,本質から必然的に導かれる受託者の基本的な義務であり,受託者は,信託が終了し元本を委託者兼受益者に交付するまで,委託者兼受益者に損害が被らないよう信託財産を管理すべきである。
そして,信託期間中に委託者兼受益者に損害が生じるような事態が生じたならば,その権限を適切に行使し損害が拡大しないよう行動する義務(損害拡大防止義務)がある。
b信託財産の管理変更義務
受託者の損害拡大防止義務の具体化として,信託財産の管理方法変更義務が導かれる。
管理方法の変更は,受託者からの適切な情報の提供(書類設置義務,報告義務,信託法第39条,第40条)を前提に,委託者兼受益者にも認められてはいるが(信託法第23条),信託業務は,免許を受けた信託銀行以外認められておらず,委託者兼受益者は,受託者の有する専門的な知識を信頼して信託を行うことからすると,素人である委託者兼受益者がこの権限を行使することは事実上不可能である。
管理方法の変更について,信託法第23条は「裁判所ニ請求スルコトヲ得」と規定しているが,信託の本旨,受託者の有する専門性,免許を受けた信託銀行以外信託業務が認められていないことなどからして,信託財産の管理継続が委託者兼受益者の利益に反することが明確となった場合には,管理方法の変更は,受託者の義務と解すべきである。
特に,本件では,委託者兼受益者の解除権が否定され,委託者兼受益者は,自己の責任において信託財産の損害を防止する手立てを与えられておらず,資産の保全は,すべて受託者である被告の手に委ねられているのであるから,信託の本旨に従うならば委託者兼受益者に損失が発生する場合には,管理方法の変更義務は,受託者の重大な義務であり,少なくとも,信託行為に基づく財産の管理が,信託の本旨に反する事態が生じているのを放置するのは,受託者の管理方法変更義務違反となることは明らかである。
したがって,信託行為の当時予見することができなかった特別の事情が発生し,信託行為の定めに従って信託財産の管理を続けることが委託者兼受益者の利益に適しなくなった場合には,受託者である被告は,裁判所に信託財産の処分も含め,信託財産の管理方法の変更を請求する義務を負うというべきである(信託法23条)。
(ウ)被告の義務違反
被告は,(イ)に述べた信託法上の義務に照らして,次のとおり,各時点において,原告らの損害を拡大させないために具体的義務を負っていたが,被告は,いずれの義務も履行することなく,原告らに損害を与えた。
a平成4年末段階における管理変更義務
(a)本件原告ら信託契約締結直前の昭和63年12月1日現在,首都圏の地価上昇率は,沈静化に向かっていたものの,緩やかな上昇傾向を示しており,本件原告ら信託契約締結当時,不動産の時価が急激に下落することは,少なくとも一般人には予想できなかった。
しかしながら,バブル経済の崩壊により平成3年ころから不動産の地価は上昇せずに下落する傾向をたどり,被告の「信託不動産の状況報告書」によれば,本件共有持分を取得した平成元年当時の近隣地価の指数を100とした場合,同2年の指数は104,同3年の指数は107であったが,同4年は100,同5年は76,同6年は51,同7年は36,同8年は26,同9年は24,同10年は24,同11年は22と著しく下落している。
(b)ところで,サミットは,キャピタルゲインが得られなければ,委託者兼受益者には必然的に損害が発生する商品であり,本件各信託契約は,委託者兼受益者の資産の保全が目的であり,この目的を達成するためには,少なくともキャピタルロスが発生しないことが必要不可欠であったから,平成4年末ころには,不動産市況の回復の見込みは絶望的であったことを考えると,信託契約を継続しても委託者兼受益者の意図した資産の保全という信託目的の達成は不可能となっていたというべきであり,「信託の目的を達することができない場合」には,信託は終了すると定めた信託法第56条の規定に基づき,遅くとも平成4年末ころには,本件各信託契約は,目的達成することが不能となって終了したと解すべきである。
(c)そして,被告は,信託業務の専門家で不動産市況についても十分な知識を有していたから,遅くとも平成4年末ころには,今後地価が下落するであろうことを十分認識することができたというべきであり,したがって,被告は,信託法第62条及び本件原告ら信託契約第14条に基づき,本件各信託契約を終了し信託不動産を一体的に処分して委託者兼受益者に元本を交付して,原告らの損害の拡大を防止すべき義務があった。
(d)仮に,当時の状況が「信託の目的を達することができない場合」とまではいえなかったとしても,引き続き地価が下落することは明白であったから,被告は,遅くとも平成4年末ころには信託財産の管理方法を変更し,原告らの損害が拡大しないように必要な措置をとる義務を負うに至った。
この場合,被告は,まず委託者兼受益者に対し,現状及び今後の見通しについて速やかに情報を提供し(説明義務,信託法第39条,第40条),委託者兼受益者全員の同意又は裁判所の許可に基づいて期間の満了を待たず本件各信託契約を終了し,本件各信託契約第14条の手続を行い,委託者兼受益者に元本を交付すべきであった。
b平成5年末段階における管理変更義務
仮に,被告において,平成4年末ころ上記行為を行うことが困難であったとしても,平成5年には不動産の指数は,76と急激に落ち込んでいたのであるから,平成5年末ころには今後も地価が下落することは十分予想が可能であり,被告は,こうした事態が発生することを認識していた。
したがって,この時点において,被告は,上記措置を講ずべきであった。
c平成9年段階における管理変更義務
仮に,被告において,平成5年末ころ上記行為を行うことが困難であったとしても,被告が多数の委託者兼受益者との間で本件各信託契約の合意解約をした平成9年段階において,すべての委託者兼受益者のために上記措置を講ずべきだったのであり,これを行わなかった被告の行為は,明らかに受託者の義務に違反している。
d被告の義務違反
ところが,被告は,いずれの時点においても,必要な措置を講じようとせず本件各信託契約を終了しないまま放置することによって,受託者としての上記義務に違反した。
また,被告は,本件原告ら信託契約第12条1項により,安定的に信託報酬を得ることができ,また,原告らがサミットを購入するに当たり被告から借り入れた購入資金の利息収入も得ることができる立場にあり,被告は,本件原告ら信託契約を継続することで,原告らに損害を与える一方,自らは利益を上げることができたのであり,かかる行為は,信託法上の誠実義務にも違反するというべきである。
(エ)中途売却における平等義務違反
a平等義務の根拠
信託法第20条の善管注意義務は,平等義務を包含する。
したがって,中途売却を含むすべての信託事務処理について,被告は,委託者兼受益者を平等に取り扱う義務を有する。
b契約内容の変更と平等義務
本件原告ら信託契約書上,委託者兼受益者たる原告らには信託契約の解除が認められておらず(第13条),また,受益権の譲渡も認められていない(第4条)にもかかわらず,被告は,別紙a,同b及び同dビル記載のとおり,一部の委託者兼受益者に中途売却を認めている。
仮に,中途売却が可能となったのであれば,このことは契約内容の変更に当たるのであるから,被告は,原告らを含むすべての委託者兼受益者に対して,文書により明確にその旨を連絡することが必要であり,中途売却に関する情報提供や対応も平等に行うことが必要である。
被告が,強く中途売却を求めた委託者兼受益者に対してのみ中途売却を認め,被告の関連会社に買い取らせ,原告らに対し,その事実を告知せず,また,十分な情報を提供せずに,中途売却の機会を喪失させたのは,受託者としての平等義務に反する行為であるといわなければならない。
c中途売却に関する被告の関与
被告は,信託法上の平等義務を否定した上で,「中途売却(損切り)は,売主と買主の間の相対取引で信託契約とは関係のない事柄」であると主張する。
しかしながら,被告は,原告らに対しては,中途売却を拒否して損害を拡大させていながら,多数の委託者兼受益者には被告の密接な関連会社であるF株式会社(以下「F」という。)やG株式会社(以下「G」という。)への譲渡を積極的に認めている。
また,中途売却は,被告の各支店内の応接室で行われていたのであり,これらのことからも「中途売却(損切り)は売主と買主の間の相対取引で信託契約とは関係のない事柄」などとは到底いえない。
d中途売却と受益権譲渡
さらに,被告は,中途売却(損切り)について,信託契約を解約した上で,本件共有持分権を第三者に譲渡するものであり,信託契約を存続させたまま受益権を譲渡する場合と全く異なると主張する。
しかし,信託契約を解約して本件共有持分権を第三者に譲渡する際,譲受人は,被告との間で,従前と同じ内容の信託契約を締結することが前提とされており,信託契約を締結しない本件共有持分権だけの譲渡はあり得ず,また,中途売却(損切り)は,経済的には受益権譲渡と全く同様である。
したがって,一部委託者兼受益者にのみ中途売却を認めた被告の対応は,明らかに平等義務に違反して違法である。
(被告の主張)
(ア)本件原告ら信託契約の目的
本件原告ら信託契約の目的は,同契約書第1条(1)に記載されているとおり,不動産にかかる共有持分権者から信託された共有持分権の一体的管理及び管理終了に伴う一体的処分であり,かかる信託の目的に照らして,受託者たる被告の義務も理解されるべきである。
原告らは,信託の目的は資産の保全であり,資産の保全とは原告らの資産を減少させないことを意味すると主張するようであるが,これは,原告らが共有持分権を購入した主観的動機にすぎず,信託の目的とはなり得ない。
信託の目的は,上記のとおりであるし,また,パンフレットの「資産の保全」という記載についても,「購入いただいた共有持分権を不動産信託していただくことで,個々の委託者兼受益者に生じた事情を全体としては受けずに,事業運営が安定し,建物のクオリティも維持され資産価値の保全に役立つことになります。」と説明されているとおり,建物の一体的管理による建物の物的価値の保全や一体的賃貸による収益の安定など,時価に相応した価値の維持を意味していることは明らかであり,原告らの資産を減少させないことを意味
するものではなく,原告らが主張する資産の保全という目的によって,受託者たる被告の義務が導き出されるものでもない。
(イ)管理方法変更義務について
a誠実義務及び損害拡大防止義務
原告らが主張する誠実義務を認める実定法の規定は存在しないし,本件原告ら信託契約においても,そのような義務を定めた規定はないから,被告にこのような義務が存しないことは明らかである。
原告らの主張が信託法上の忠実義務を主張する趣旨であれば,被告は,本件原告ら信託契約に基づき委託者兼受益者の利益のために信託財産の一体的管理を忠実に継続しており,原告が主張するような忠実義務違反はない。
原告らは,被告が信託契約に基づき報酬を受領したことをもって,被告と原告らの間に利益相反の状態にあると主張するようであるが,被告は,不動産の一体的管理及び一体的処分を行うことの対価として,信託契約であらかじめ定められた割合の信託報酬を信託財産から受領しているにすぎず,受託者が報酬を受領することは信託法でも許容されていることであり(信託法第37条),被告を非難すべき事情にはならない。
また,原告らが主張する損害拡大防止義務を認める実定法上の規定は存在しないし,本件原告ら信託契約においてもそのような義務を定めているわけではなく,信託の意義,本質及び目的から必然的に導かれるということはできないから,被告において,損害拡大防止義務を負っていない。
原告らが主張する「委託者兼受益者の損失が拡大しないような適切な措置」の内容についても全く明らかではなく,具体的に,受託者はどのような状況の下でどのような行為を行う義務を負っているのか,明らかではない。
なお,仮に,原告らが主張するような損害拡大防止義務なるものが観念できたとしても,原告らが主張する損害は,不動産市況の変動に伴う不動産共有持分権の価格の下落により生じたものであり,かかる損害と被告の行為とは何ら因果関係がない。
b管理変更義務
受託者たる被告は,信託契約に従って信託の目的を達成するために信託財産を管理する義務を負っているものである。
また,信託法第23条第1項は,「信託行為の当時予見することを得ざりし特別の事情に因り信託財産の管理方法が委託者兼受益者の利益に適せざるに至りたるときは・・・・裁判所に請求することを得」と定めており,受託者に,原告らが主張する信託財産の管理方法を変更する義務を課したものでない。
管理方法の変更の申立てをすべきか否かは受託者をして信託の目的を達成することが困難な程度の事情変更があったか否かという観点から検討されるべきであるが,本件原告ら信託契約の信託の目的は不動産共有持分権の一体的管理及び一体的処分であり,信託期間満了までの間,不動産共有持分権を一体的に管理及び処分することが信託の目的として明示されているのであるから,被告はかかる目的に従って信託期間満了まで信託事務を処理すべき義務を負っており,信託の目的と直接関係ない不動産市況の下落によって信託財産の管理方法を変更する義務を負うことはない。
また,原告らは,被告において,原告らに対し,地価の下落の現状や今後の見通しについて説明し(書類設置,説明義務),委託者兼受益者全員の同意又は裁判所の許可に基づいて,本件各信託契約を終了するべきであったとも主張するが,受託者である被告は,本件原告ら信託契約や信託法に定める義務を負っているにすぎず,これと関係のない信託期間中の不動産市況の変動について説明する義務を負わないから,原告らの主張は失当である。
(ウ)平等義務
原告らの平等義務に関する主張は,すべて争う。
原告らが主張する平等義務について,実定法に直接の規定は存在しないし,本件各信託契約においてもそのような義務を定めているわけではないから,被告において平等義務を負っていないことは明らかである。
また,各委託者兼受益者は,それぞれ個別に,被告との間で,信託契約を締結しているのであるから,別個の信託契約に基づく法律関係について,受託者である被告が各委託者兼受益者を平等に扱わなければならないという義務を導くことは到底できない。
平等義務が問題となるのは,1つの信託契約において複数の委託者兼受益者がいる場合であり,本件は,本件共有持分権を購入し被告に対して信託した委託者兼受益者が複数存在し,その委託者兼受益者と被告が個別に信託契約を締結している場合であり,委託者兼受益者が締結した各信託契約の間に平等義務を観念することはできないというべきである。
さらに,原告らの主張によっても,平等義務の具体的内容は明らかではなく,被告としてはいかなる行為を行えば,あるいはいかなる行為を行わなければ,平等義務違反となるのか全く明らかではない。
受託者は,信託目的を達成するために必要な範囲内で,信託契約に基づく法律関係について義務を負っているにすぎないが,中途売却(損切り)は,本件共有持分権の当初購入者(売主)が,その買主が売主と同一の条件で被告に対して本件共有持分権を信託することを前提に,売主が被告との間の信託契約を解約し,売主が買主との間で,本件共有持分権を譲渡し,買主が,被告に対して,本件共有持分権を信託するものであり,本件共有持分権の売買は,売主と買主の間の相対取引であるから,信託契約とは関係のない事柄である。
なお,仮に,平等義務が観念できたとしても,被告は,原告らが本件原告ら信託契約を解除し本件共有持分権を売却したい(損切りしたい)という意向を持っている場合,可能な範囲で,委託者兼受益者に対するサービスとして,本件共有持分権の購入希望者を紹介したり,購入希望情報を収集することに協力したから,被告には,同義務の違反がない。
エ損害論
(原告らの主張)
(ア)契約締結時における説明義務違反による損害
a 信託期間満了に伴う目的物の売却とその代金
被告は,前記1(2)エ,(3)オ,(4)エ及び(5)エのとおり,平成12年3月15日,aを金2億7980万円で売却し,原告A1,同A2,同A3,同A4は,それぞれ20分の1の持分権に従って売却代金1399万円に留保金の1円を加えた1399万0001円をそれぞれ受領した。
被告は,前記1(6)エのとおり,同日,bを金2億5245万円で売却し,原告A5は,18分の1の持分権に従って売却代金1402万5000円を受領した。
被告は,前記1(7)エのとおり,同年5月16日,dビルを金4億5880万円で売却し,原告A6は,37分の1の持分権に従って売却代金1240万円に留保金の1円を加えた1240万0001円を受領した。
b購入代金と売却代金の差額
原告A1,同A2,同A3及び同A4は,本件共有持分権の購入代金として支出した1億円から,少なくとも上記1399万0001円を控除した8600万9999円の損害を(原告A2については,亡Bが購入代金を支出し,原告A2が信託元本の交付を受けた。),原告A5は,本件不動産の購入代金として支出した1億円から,少なくとも上記1402万5000円を控除した8597万5000円の損害を,原告A6は,本件不動産の購入代金として支出した1億円から,少なくとも上記1240万0001円を控除した金8759万9999円の損害をそれぞれ被った。
c弁護士費用
原告らは,上記損害を回復するため,本訴訟の提起を余儀なくされた。
これに要する弁護士費用は,それぞれ上記損害額の約1割の860万円である。
d総損害額
したがって,原告A1,同A2,同A3,同A4の損害は各金9460万9999円,原告A5の損害は金9457万5000円,原告A6の損害は金9619万9999円である。
(イ)信託契約違反による損害
a平成4年末段階の損害
(a)売却可能な金額と売却代金の差額
被告が,平成4年末時点で信託財産の管理方法を変更して売却すれば,本件共有持分権は,購入時の価格1億円で売却することが可能であったが,被告は,このような措置を講じることなく,前記(ア)記載のとおり,信託期間満了に伴って信託財産を売却した。
そこで,原告らは,平成4年末時点で売却可能であった1億円と,前記(ア)記載の本件原告ら信託契約終了時の価格との差額の損害を被ったから,原告A1,同A2,同A3及び同A4の各損害額は8600万9999円,同A5の損害額は8597万5000円,同A6の損害額は8759万9999円である。
(b)弁護士費用
原告らは,上記損害を回復するため,本訴訟の提起を余儀なくされた。
これに要する弁護士費用は,それぞれ上記損害額の約1割の860万円である。
(c)総損害額
したがって,原告A1,同A2,同A3及び同A4の総損害額はそれぞれ金9460万9999円,原告A5の総損害額は金9457万5000円,原告A6の総損害額は金9619万9999円である。
c平成5年末段階の損害
(a)売却可能な金額と売却代金の差額
購入時の価格が1億円でこのときの不動産指数が100であるから,不動産指数が76であった平成5年末時点においては,本件共有持分権は,7600万円で売却することができたはずである。
そこで,原告らは,売却可能金額の7600万円と,前記(ア)記載の本件原告ら信託契約終了時の価格との差額の損害を被ったから,原告A1,同A2,同A3及び同A4の各損害額は6200万9999円,同A5の損害額は6197万5000円,同A6の損害額は6359万9999円である。
(b)弁護士費用
原告らは,上記損害を回復するため,本訴訟の提起を余儀なくされた。
これに要する弁護士費用は,それぞれ上記損害額の約1割の620万円である。
(c)総損害額
したがって,原告A1,同A2,同A3及び同A4の総損害額はそれぞれ金6820万9999円,原告A5の総損害額は金6817万5000円,原告A6の総損害額は金6979万9999円である。
d平成9年段階の損害
(a)売却可能な金額と売却代金の差額
仮に,平成5年末段階で不動産を7600万円で売却できなかったとしても,被告は,平成9年3月24日,受益者が被告の系列会社であるGに不動産共有持分を6600万円で売却することを承諾しているから,少なくとも,原告らの本件共有持分権を6600万円で売却することができた。
原告らは,売却可能金額の6600万円と,前記(ア)の本件原告ら信託契約終了時の価格との差額の損害を被ったから,原告A1,同A2,同A3及び同A4の各損害額は5200万9999円,同A5の損害額は5197万5000円,同A6の損害額は5359万9999円である。
(b)弁護士費用
原告らは,上記損害を回復するため,本訴訟の提起を余儀なくされた。
これに要する弁護士費用は,それぞれ上記損害額の約1割の520万円である。
(c)総損害額
したがって,原告A1,同A2,同A3及び同A4の総損害額はそれぞれ金5720万9999円,原告A5の総損害額は金5717万5000円,原告A6の総損害額は金5879万9999円である。
(被告の主張)
原告らの主張する損害は争う。
(2)各論
ア原告A1について
(原告A1の主張)
(ア)勧誘に関する状況
原告A1は,昭和63年当時,定年後の生活や子供への相続のために,危険な投資ではなく,堅実に節税やインフレ対策などを行って,資産の保全をすることを考えていたため,「資産の保全」が強調されている被告のパンフレットは,安全を第一とする自らの考えに合致するものであった。
原告A1は,被告担当者から,年2回の配当金額が経過年数に従い,減少することはなく増額され,不動産信託は事業運営が安定していて,委託者兼受益者は法的に保護されており,資産価値の保全に役立つものであるとの説明を受けた。
原告A1は,サミットの契約をする際,1自分の収入に比べ多額のローンを組み,返済をすることができるのかどうか,2万一死亡した場合に,相続人である妻や子供達がローンの返済に困らないかどうかについて心配していた。
被告は,原告A1に対し,1について,利息のみを毎年支払えばよく,元本は,信託終了時に信託財産の処分により一括支払が十分可能であること,賃料収入が年200万円程度あり,借入金の利息の支払に充当できるし,残りの借入金利息は,節税対策で大半を埋めることができることを説明したのみであり,サミットが不動産価格の変動により大きな危険性を伴う商品であることの説明や不動産が値下がりした場合に信託終了時において,どのような事態,損害を受ける危険性があるかについては全く説明をしなかった。
原告A1は,被告に対し,2について,契約者が死亡した場合に,相続人が借入金の返済に困ることがないようにするため,通常の住宅ローンと同じように消費貸借契約時に死亡保険を付けられないかどうか確認したところ,被告は,死亡保険は付けられないが,不動産の売却代金で十分に借入金の支払は可能であり問題がないと説明して,信託期間中の相続による売却や11年後の売却により,借入元金を一括して返済できることを前提に,サミットの勧誘をした。
原告A1は,被告に対し,昭和63年の契約前において,信託期間満了時の処分価格を気にして問い合わせをしたが,それは原告A1が,信託終了の11年後は,定年退職のため借入金を精算することができ,インフレにより目減りせずに老後の生活資金として安定したものが残るかどうかが心配だったからである。
それに対し,被告の担当者が,「全く心配する必要がない」と言うので,原告A1は,当時の収入からすれば,極めて多額の借入れを行い,被告が勧めるサミットを購入する決断したのである。
原告A1は,被告から原告A1が受領する賃料が値上がりをしていくとの説明を受けたため,サミットの値下がりなどは考えられず,本件A1信託契約終了時において,多額の負債が残る危険があるとは全く理解することができなかった。
また,原告A1は,そもそも,昭和63年9月の本件A1売買契約時において,信託契約を前提にするものであるにもかかわらず,本件A1信託契約書を示されて信託契約の内容の説明を一切受けていないし,被告は,サミットの購入者にとってマイナスとなることは一切説明をしていない。
(イ)中途解約に関する状況
被告から,信託不動産の状況報告がされたのは平成8年になってからであり,それ以前は,確定申告資料が送付されるだけであり,原告A1において,信託不動産の状況を理解するのは困難であった。
原告A1は,信託不動産の価格が下落している報告書を見て,今後の処理について不安を感じ,損失を拡大させないために,中途売却をした方がよいと考え,平成9年5月に被告渋谷支店に赴き,中途売却の相談をした。
被告担当者H1は,中途売却の事例の有無や可否について本部に問い合わせるとの回答をした。
他方,当時,原告A1が所有していた建物の共同所有者である知人が,建物全体を処分しなければならなくなり,原告A1が所有している2フロア分の持分権をも売却してほしいとの打診を受けた。
原告A1において,持分権の売却をすると譲渡益が出るため,損失が発生し,最終処分時にはさらに損失が拡大すると思われる本件共有持分権も一緒に処分して,被告からの多額の借入れの解消と譲渡所得税の節税を図った方がよいと考え,税理士
に損益通算についての確認を行ったところ,税理士から損益通算は可能であるが,利益よりも損失を先に確定することが重要であるとの忠告を受けた。
そこで,原告A1は,税理士の忠告に基づき,被告渋谷支店の担当者H1に本部からの回答を確認したところ,本部からの回答は,相続などの特別な事情の場合に,中途売却をした例があるが,それ以外では中途売却は認められないとの回答であったことを知らされ,中途売却を断念した。
(ウ)属性等
原告A1は,昭和63年当時,I建築事務所に勤務して設計の仕事に従事しており,金融関係の特別の知識はなかった。
原告A1が持分権を有していた建物は,親の代からの知人に建物の建築資金を捻出するため購入してほしいと頼まれ,相続によって取得した不動産を売却した資金で購入して,賃貸していたものであり,積極的に不動産投資をしていたものではない。
また,原告A1が所有していた株式は,資産としてのNTT株と妻の父が結婚の支度金及び子供の出産のお祝いに贈与してくれたものであり,原告A1が積極的な株式投資を行っていたことはない。
(エ)まとめ
a原告A1は,サミットを購入する際に,被告からサミットの危険性について全く説明を受けず,逆に安全で堅実な商品であり,資産の保全に最適であるという,サミットの特性とは異なる説明を受けて,サミットを購入した。
原告A1が,サミットの危険性の説明を受けていたならば,資産の保全を目的にしていたから,サミットを購入することはなかった。
被告の説明義務違反により,原告A1は,前記(1)エ(原告らの主張)(ア)のとおり,金9460万9999円を下らない損害を受けた。
b原告A1は,平成9年5月に中途売却の可否について,被告の渋谷支店担当者H1に問い合わせたところ,本部から相続などの特別の場合以外は,中途売却は認められないとの回答を伝えられ,中途売却を断念しなければならなかった。
中途売却を不可能とされたことによって原告A1が被った損害は,前記(1)エ(原告らの主張)(イ)のとおりである。
(被告の主張)
(ア)勧誘について
原告A1は,所得税対策,住民税対策及びキャピタルゲインを期待して,aの不動産共有持分権を購入した。
原告A1がaの不動産共有持分権を購入するきっかけは,被告によるダイレクトメール及び日本経済新聞の広告を見て,被告に問い合わせてきたことである。
原告A1は,パンフレット,本件A1売買契約書及び本件A1信託契約書を熟読し,これらの内容を十分理解し,本件共有持分権の購入を決断した。
また,原告A1は,同原告の顧問税理士であるJ税理士からの助言により不動産に関する税制や信託期間満了時の処分価格が不動産市況の変動に伴って上下し,原告A1が利益を得るか損失を被るかは約10年後の一体的処分時の価格によって決まることを理解していた。
被告は,このように不動産税制を熟知し,不動産投資による損益分岐点を理解していた原告A1に対して,リーフレット及びパンフレットを交付し,本件A1売買契約及び本件A1信託契約の内容を説明し,重要事項説明書を交付し,重要事項の説明を行ったのであるから,被告に説明義務違反などあるはずがない。
(イ)中途売却(損切り)時について
被告は,原告A1に対して,原告A1が希望するのであれば本件共有持分権の買手探しに協力することは可能であると説明したが,原告A1からは,不動産市況が「底」であるとの予測の下,買手探しに協力してほしいという意向表明は全くなかった。
(ウ)原告A1の属性について
原告A1は,株式投資,不動産投資の経験を有する資産家であり,早稲田大学理工学部及び同大学院を卒業し,当時,日本有数の著名設計事務所である株式会社I設計の管理職の地位にあり,その知的レベルは非常に高い。
原告A1は,昭和50年ころ,共同所有者と共にビルの2フロアを約1億円で購入し,これを賃貸することで約600万円の不動産所得を得ていたし,平成11年時点において,1500万円相当の株式を有していた。
イ 原告A2について
(原告A2の主張)
(ア)勧誘時に関する状況
a亡Bは,昭和61年3月に妻を交通事故で亡くし,加害者からの損害賠償金や加入していた保険金などを受領した。
亡Bは,妻の形見にするつもりで,受領した賠償金などを不動産のような形に残るものに変えておきたいと考えていた。
このころ,被告担当者は,亡B宅を定期的に訪問しており,亡Bは,被告担当者からサミットを勧められた。
被告担当者は,亡Bに対し,昭和63年夏ころ,リンクのリーフレットやパンフレットを示しながら,当該物件は,東京23区内でも特に注目を浴びている渋谷にあること,渋谷駅にも近く幹線道路にも面している稀少物件であること,不動産は,値上がりが期待できること,土地及び建物の評価額は,時価より低いので相続税対策としても有利であること,相続の時には借入残高が多いほど有利であること,購入資金は全額を被告が融資すること,不動産は,被告が責任をもって管理し一括して借り上げるので賃料収入も確実に入ること,借入金は,毎月利息を返済し,元金は,10年後に不動産を処分して清算すること,不動産は,これまで下がったことがなく,借入金は,売却代金で返済でき売却益も見込めることなどの説明をして,サミットを購入する
ことを勧めた。
亡Bは,不動産を購入すると万一のとき相続税の支払に支障を来すと考え,サミットの購入を迷っていた。
被告担当者は,亡Bに対し,「(5)買戻し制度やむを得ない場合に限り購入価格(1億円)にてCが買戻しをします。」との記載のある御報告書と題する書面を交付して,相続の場合には解約が可能であること,相続時に時価が1億2000万円の場合に時価ですぐ買い取ることはできないが,購入価格の1億円であればCが速やかに買い戻すことを説明した。
亡Bは,御報告書の記載や被告担当者らの説明などから,相続発生時には必ず1億で買い戻してもらえるものと理解し,このことが契約締結の大きな動機となった。
b亡Bは,被告と,昭和63年9月20日,被告横浜支店において,本件A2売買契約を締結する際,本件A2売買契約書に買戻し制度に関する記載が存在しないため,被告担当者に買戻し制度について文書に残すことを求めた。
これに対し,被告担当者は,買戻しについて税法上文書化することはできないが,被告が約束するので間違いないと説明したので,亡Bは,これを信用して本件A2売買契約を締結した。
c被告担当者は,サミットが「資産の保全」に役立つことを強調し,亡Bをして一連の契約を締結させた。
しかしながら,サミットは,客観的にはキャピタルゲインを目的とする投機的な商品であり,サミットの危険性については,全く説明がされなかった。
また,本件A2売買契約は,後に締結する本件A2信託契約が前提になっているが,昭和63年9月20日の本件A2売買契約締結時までに,亡Bは,信託契約書に基づき信託契約の内容について具体的な説明を受けていなかった。
(イ)中途売却に関する状況
a亡Bは,平成5年,自宅敷地にあるアパートが道路拡張のため収用となったため,K銀行から融資を受けて換地にアパートを新築した。
亡Bは,平成9年の初めころ,被告担当者から金利が下がっていることを理由に,アパートのための借入金の借換えを勧められ,同年1月29日,被告との間でアパートの借入金の借換えに関する契約を締結した。
亡Bは,借入金の借換えの際,被告から,特別な話として本件共有持分権の中途売却が可能であること,被告の紹介する会社が本件共有持分権を6600万円から6700万円で買い取ることなどの話が持ち出されたため,被告に対し,本件共有持分権を中途で売却し新たな不動産を買うことを申し出たが,中途売却は,新規購入物件が見つかってからでもよいとの被告の説明を信じ,被告の紹介するL株式会社(以下「L」という。)を通じて買換え物件を探していた。
中途売却に関する亡Bの申出は,被告本社にも報告され,亡Bを担当する被
告担当者の間でも引き継がれていた。
b亡Bは,平成9年11月20日死亡し,原告A2が相続により亡Bの権利義務を承継した。
Eは,原告A2宅を訪問した被告担当者に対し,同年12月初旬,相続が発生したことを告げ不動産買戻し制度の適用を求めたが,被告担当者は,不動産買戻し制度について,その存在を否定し,Cに本件共有持分権を買い戻させることを行わなかった。
c原告A2は,被告から,買戻し制度の適用を拒絶されたため,やむなく平成9年初めに話のあった被告が紹介する会社に本件共有持分権を6600万円から6700万円の価格で買い取らせるよう求めたが,被告は,買主はいないとして中途売却をも拒否した。
被告担当者は,亡Bに対し,中途売却は新規購入物件が見つかってからでもよいと説明したので,亡Bは,被告が紹介したLを通じて買換え物件を探していたのであるから,被告は,中途売却を打ち切るのであればその時期を通知し,亡B又は原告A2がサミットの中途売却を行う機会を失うことがないようにすべき信義則上の義務があるというべきである。
ところが,被告は,信義則上の義務に違反して,中途売却打切りの時期を通知しないで,亡B又は原告A2が中途売却を行うことを不可能にした。
(ウ)属性等
被告は,亡Bが資産家であたかも積極的に投資行為を行っていたと主張するが,事実に反する。
亡Bは,横浜市水道局の職員として勤務していた元公務員であり,本件A2売買契約及び本件A2信託契約当時既に退職していた。
亡Bは,自宅と同じ敷地にアパートを所有していたが,これらの不動産は,亡Bと妻が働いて得た収入で購入したものである。
また,本件A2売買契約及び本件A2信託契約締結前に亡Bが有していた預貯金は,交通事故によって死亡した妻の保険金や損害賠償金であるし,平成5年に新築したアパートは,自宅敷地にあったアパートが道路拡張のため立退きとなり,その換地に建築したものである。
本件A2信託契約も,既に述べたとおり,妻の保険金などを形のあるものに変えておくという意図の下に締結したものであって,積極的な不動産投資を企図していたものではない。
(エ)まとめ
a被告は,亡Bに対し,サミットを購入する際,相続が発生した場合,Cが1億円で買い戻すことを約束した。
しかるに,被告は,亡B死亡後,買戻し制度の適用を拒絶して,Cに1億円で買い戻させることをしなかった。
これは,被告の債務不履行であり,これによって,原告A2が被った損害は,前記(1)エ(原告らの主張)(ア)のとおり,金9460万9999円を下らない。
b仮に,Cに1億円で買い戻させることが被告の債務ではなくても,亡Bは,被告からサミットの危険性について全く説明を受けず,逆に安全で堅実な商品で資産の保全に最適であるというサミットの特性とは異なる説明を受け,しかも,相続時には購入価格の1億円でCが買い戻すとの説明を信用して本件A2売買契約及び本件A2信託契約を締結したのであり,亡Bは,被告の説明義務違反によって,前記(1)エ(原告らの主張)(ア)のとおりの損害を被った。
cまた,中途売却を不可能とされたことによって原告A2が被った損害は,前記(1)エ(原告らの主張)(イ)のとおりである。
(被告の主張)
(ア)亡Bに対する勧誘について
亡Bは,昭和63年当時,73歳で,3億2000万円相当の不動産,6700万円の預金等及び3000万円相当の有価証券を所有しており,相続が発生した場合,相当多額の相続税が課されることが予想されていたため,相続税対策に強い関心を持っていた。
亡Bがaの不動産共有持分権を購入したのは,相続税対策のためである。
亡Bがaの共有持分権を購入するに至ったきっかけは,亡Bが,被告に対して問い合わせてきたことである。
被告は,亡Bらに対し,パンフレット及びリーフレットを交付し,本件原告ら売買契約及び本件A2信託契約について説明し,重要事項説明書を交付して,重要事項の説明を行った。
亡Bは,被告横浜支店従業員の説明により,信託期間の満了時のcの一体的処分による最終配当が1億円を下回る可能性があることを理解し,さらには,相続時に1億円で買い取る制度があると考えていなかったため,自分の返済能力以上の借入金を行いたくないという意向を有しており,被告から不動産共有持分権の購入資金として3000万円だけ借り入れることになった。
亡B及びEらにおいて,被告に対し,相続が発生した場合,Cに対し買取りを請求してほしいと要求したことは一度もなく,むしろ,買換え用不動産を探した後に中途売却を考えていたのであり,このことから,被告が,亡Bに対し,相続時に1億円で買い取ることを約束したこともないし,そのような説明を行ったこともないことは明らかである。
以上のとおり,被告は,相続税対策に関心を持っており,知的レベルの高い亡Bらに対して,売買契約や信託契約の内容を一通り説明したのであるから,亡Bが,サミットの購入が不動産投資であることを理解していたことは明らかであり,被告に説明義務違反はないし,被告が,亡Bに対し,サミットを購入する際,相続が発生した場合,Cが1億円で買い戻すことを約束した事実もない。
(イ)中途売却(損切り)時について
被告は,亡Bらに対し,亡Bらが本件共有持分権を売却して損失を確定させることを希望するのであれば,買手探しに協力することは可能であると説明したが,亡Bらは,買換え用不動産の購入を優先し,それが見つかってから本件共有持分権の買手探しを行ってほしいという意向を持っていた。
亡Bらの熱心な買換え用不動産探しにもかかわらず,買換用不動産は見つからなかった。
被告は,Eに対し,aの不動産共有持分権の中途売却(損切り)だけでも早く行った方がよいと提案したが,Eは,「亡Bの体調が不良であり相続が発生する可能性があるため,本件共有持分権の売却と買換え不動産の購入とを同時にやらなければ心配である。
紹介物件の中では気に入った物件がないので,更に情報がほしい。」と依頼し,買換え用不動産を探すことを最優先にしたいという希望を持っており,あくまで,買換え用不動産と同時に行うことに固執して,中途売却(損切り)の話は全く進展しなかったところ,その後の経済環境の激変により希望に沿う買手候補も見つからなくなり,結局,中途売却も実現しなかったのである。
なお,Eは,亡Bが死亡する前後を通じて,本件共有持分権を6600万円で中途売却(損切り)する前提として,まず買換え用不動産を探すことに全力を傾注しており,被告横浜支店従業員が,亡B及びEらから,本件共有持分権を1億円で買い取るよう要求を受けた事実はない。
(ウ)亡Bの属性について
亡Bは,前記(ア)のとおり,株式投資,アパート経営の経験を有する富裕な資産家であり,長年,横浜水道局の経理を担当しており,その知的レベルは非常に高い。
また,Eは,大学を卒業後,中学校の教員を務めており,その知的レベルは高い。
ウ原告A3について
(原告A3の主張)
(ア)勧誘時の状況
a原告A3は,昭和63年,M税理士の紹介で,被告担当者と会った。
M税理士は,原告A3の顧問税理士であったが,被告担当者を紹介しただけで,サミットの内容を原告A3に説明したことはない。
b被告の担当者は,原告A3に対し,リンクのパンフレットを見せて勧誘した。
(a)被告担当者は,原告A3に対し,サミットを購入すれば,相続の際,不動産価格は低く評価され,借金分も相続財産の評価から控除されるから,相続税対策となることを強調し,原告A3は,若いときから血圧が高く,小児麻痺に罹患したこともあったため,この相続税対策について強い関心を持った。
原告A3は,契約当時,1億を超える預金を有していたが,被告担当者から相続税対策とするには,多額の借金をすることが必要と勧められたので,aの共有持分権の購入資金として1億円,eマンション購入資金として5000万円を借りた。
原告A3は,返済方法について,1元本据置金利支払方式(信託終了時元本一括返済)と2元利均等支払方式のいずれかの返済方法が選べたところ,被告から,aの信託終了時における処分により,借入金を容易に返済できるとの説明を受けたため,支払総額が多く,原告A3にとっては不利になる元本据置金利支払方式を選択した。
また,原告A3は,相続税対策が昭和63年8月1日現在の税制に基づくものであり,今後の税制改正によって変更になる場合があることについては説明を受けなかった。
(b)原告A3は,被告担当者から,サミットについて,元本保証がないことや危険性についての説明を受けておらず,かえって,原告A3の質問に対し,目的が債権か不動産かの違いがあるが,ビッグなどの貸付信託と同じものであるとの説明を受け,元本保証があるとの誤解を助長させた。
(c)また,原告A3は,パンフレットに基づき,「資産の保全」に役立つという点ばかり強調され,不動産価格については「下がることはない。」「物件が非常に優秀だから下がることはない。」という説明を受けた。
(d)原告A3は,信託期間中の受益権の譲渡や中途解約については,原則としてはできないが,相続などの場合例外はありうるという説明を受けた。
c原告A3の妻は,原告A3を代理して,被告との間で,昭和63年9月20日,被告池袋支店において,本件A3売買契約を締結し,原告A3は,平成元年1月26日,被告池袋支店において本件A3信託契約を締結した。
原告A3は,本件A3信託契約を前提とする本件A3売買契約を締結する時点で信託契約書を示されず,その詳しい説明も受けていないし,また,肝心の本件A3信託契約締結時においてさえ,本件A3信託契約書の内容について詳しく説明されたことはなかった。
d以上のとおり,被告は,原告A3にサミットがキャピタルゲインを目的とした危険性の高い投資商品であり,1億円の融資を受けて購入すれば,1億円で売却できたとしてもキャッシュフローは,マイナスでありよほどの値上がりがない限り損失が出る投機的商品であること,元本の保証はないことなどを説明せず,かえって「資産の保全」に役立つとともに,相続税対策となる商品であると説明したのであり,かかる被告の行為は,説明義務に明らかに違反しており,これを信じて本件A3売買契約及び本件A3信託契約を締結した原告A3に対し,債務不履行責任及び不法行為責任を負う。
(イ)中途売却に関する状況
a原告A3は,被告から,平成9年2月ころ,信託不動産の現状を説明したいとの連絡を受け,同月12日に被告東京中央支店八重洲に赴いたところ,信託不動産の状況報告書を初めて渡され,3年後の満期において元本割れとなる可能性があることの説明を受けた。
原告A3に同行したM税理士は,被告に対し,元金は確保してもらいたい,満期時の軟着陸を考えてほしいと述べた。
b原告A3は,同月14日,被告池袋支店のH2課長代理に電話して,同月12日の会合の際に話題となった資産の状況について,現時点での不動産の評価額を知らせるように依頼したが,被告は,数日後に,評価が困難という理由で回答できないという返答をした。
cそこで,原告A3は,被告に対し,「仮に当該ビルの信託対象となっている部分が住友信託銀行に売却された場合に,住友信託銀行としてはいかほど評価をつけて顧客に紹介するでしょうか,その金額をお教えください。」と質問事項を工夫して問いただしたところ,被告は,単に6000万円と回答してきただけであり,買主探しに協力するという対応は示さなかった。
原告A3は,6000万円という金額に納得できなかったばかりか,質問の仕方を工夫してようやく評価額を回答するという被告の消極的で無責任な対応に失望し,被告を信頼することができなかったので,それ以上中途売却について申し入れることはしなかった。
しかし,原告A3は,平成9年10月ころになって,本件共有持分権の処分について改めて被告に申入れたが,これに対しては,被告からは何らの回答もなかった。
d以上のとおり,不動産の価格が下落するに任せ,原告A3に対しても,中途売却を可能にするような積極的な対応をとらなかった被告らの対応は,信託法上の誠実義務及び平等義務等に違反する。
(ウ)属性等
a被告は,原告A3が投資経験豊かであったと主張しているが,これは明らかに事実に反する。
fのマンションは,原告A3が居住しているマンションであるが,その敷地は原告A3の父が原告名義で購入し,昭和46年にさくら銀行から金員を借り入れ,原告が居住用兼賃貸マンションとして建設したものである。
マンションには,11戸が入居しているが,自宅として1戸を使用し,2戸を親族が使用し,残りの8戸を賃貸している。
g,eのマンションは,賃貸している。
また,株式を保有しているが,これは原告A3の親が原告A3名義で購入したものである。
bまた,原告A3は,東京都中央区において,医療法人社団A3歯科医院の院長をしており,高学歴であるが,金融の問題については全くの素人である。
(エ)まとめ
以上により,被告は原告A3に対する関係で,契約勧誘時の説明義務違反による債務不履行及び不法行為,契約後の信託法違反に基づく債務不履行及び不法行為責任を負う。
これによって,原告A3が被った損害については,前記(1)エ(原告らの主張)に記載したとおりである。
(被告の主張)
(ア)原告A3に対する勧誘について
原告A3は,都心のマンションを多数購入し,これらを賃貸することにより,年間約7000万円の賃料収入を得ていた。
原告A3は,このように多額の不動産所得があったため,所得税対策としてN有限会社を設立し,同原告が所有していた区分所有権の管理を同社に委託していた。
原告A3がcの不動産共有持分権を購入したのは,同原告の顧問税理士であるM税理士の勧めによるものであり,その購入動機は,所得税対策及びキャピタルゲインへの期待である。
本件共有持分権購入と同時期に代金6000万円でeの区分所有権をも購入した。
被告は,M税理士の紹介で,原告A3を訪問し,パンフレットを交付して,本件A3売買契約及び本件A3信託契約について説明を行った。
また,被告は,重要事項説明書を交付し,重要事項の説明を行った。
原告A3は,被告からの説明に加え,本件A3売買契約書や本件A3信託契約書を読み,その内容を充分理解していたし,また,本件A3信託契約書9条の受託者の免責条項も読み,その内容を理解した。
原告A3は,知的レベルの高い富裕な資産家であるところ,被告は,このような原告A3に対して,本件A3売買契約及び本件A3信託契約の内容について一通り説明したし,原告A3は,その内容を十分理解していたのであるから,被告に説明義務違反はない。
(イ)中途売却(損切り)時について
被告は,原告A3に対し,平成9年2月,原告A3が希望するのであれば,本件共有持分権の買手探しに協力することが可能であると説明した。
原告A3は,顧問税理士等と検討していたようであるが,原告A3からは中途売却(損切り)を行いたいという意向表明はなかった。
原告A3は,平成9年10月になってようやく,M税理士を通じて損切りしたい旨の要請を行ってきたが,同月以後は,山一証券倒産等の経済環境の激変のため,買手が見つからず,結局,成約には至らなかった。
(ウ)原告A3の属性について
原告A3は,前記(ア)のとおり,不動産投資経験豊富な資産家であり,麻布高校を卒業後,東京大学教養学部に入学し,その後,東京医科歯科大学を卒業しており,その知的レベルは非常に高い。
エ原告A4について
(原告A4の主張)
(ア) 勧誘時に関する状況
a原告A4は,被告阿倍野橋支店とは20年来の取引があったところ,昭和63年秋ころ,同支店の担当者からリンクの勧誘を受けた。
b同支店担当者は,原告A4に対し,リンクのパンフレットに基づいて,「相続税対策のために,まず大きく借金をするべきです。
1億を貸します。
万一相続が発生した場合,土地については実勢価格より低い路線価ベースで評価され,借金の分だけ遺産の評価が下がります。
借金の利息は,賃料で支払えます。
購入後の共有持分権は,住友信託銀行に信託していただきますので,ビルの管理運営に関する手間はかかりません。
信託終了時には共有持分権を売却し,最終配当を渡します。」と説明した。
c原告A4は,従前,何度かダイレクトメール等により,不動産投資の勧誘を受けたことがあるが,危険性を伴う取引はしたくなかったので,すべて断っていたところ,被告から,サミットは,相続税対策になり,危険性はないと言われたため,60代半ばであった原告A4は,この説明に魅力を感じ,また,住友系の銀行は,関西では絶大な信用を誇っていたこともあって,この説明を信じ,サミットを購入することとした。
d原告A4は,被告との間で,昭和63年9月16日,原告A4の自宅で,本件A4売買契約を締結し,平成元年1月26日,本件A4信託契約を締結した。
原告A4が,本件A4信託契約を締結したとき,本件A4信託契約の危険性等について説明がなかったのみならず,契約書の細部をゆっくり見せてもらったり,説明されたということはなかった。
原告A4は,被告が勧誘の過程で十分な説明をせず安全だと繰り返したので,元本保証のあるビックなどの投資信託と同様だと考えていたが,被告において,この誤解を解消することはなかった。
e当時,原告A4は,被告に5000万円ほど預金をしていたが,相続税対策のためには多額の借金をすることが必要であると被告担当者から言われ,また,不動産を売却すれば,売却代金で借金は十分返済できると説明されたため,元本据置金利支払方式にてサミットの購入資金1億円を借り入れた。
f以上のとおり,被告は,原告A4に対し,サミットがキャピタルゲインを目的とした危険性の高い投資商品であり,1億円の融資を受けて購入すれば,1億円で売却できてもキャッシュフローはマイナスであるばかりか,元本の保証はなく相当の値上がりがない限り損が出る商品であるのに,これらのことを説明せずに,「資産の保全」に役立つ安全な商品であること,相続税対策となる商品であるという点のみを強調して勧誘を行ったものであり,説明義務違反による債務不履行及び不法行為が成立する。
(イ)中途解約に関する状況
a原告A4は,被告に対し,平成2年12月13日,自宅において,初めて本件A4信託契約について解約を申し入れた。
原告A4は,このころ,税制の変更によって,それまで可能だった所得税の損益通算ができなくなることを知り,毎月の利息支払が一層の負担となっていたことによりノイローゼ気味になっていたため,妻がみかねて被告に連絡し,自宅で話し合いを持つことになった。
原告A4は,被告に対し,健康を害するため,預金をすべて解約し,借入金を全額返済するので,本件A4信託契約を解約させてほしいこと,場合によっては少し損が出ても構わないことを述べて,中途解約を頼み込んだが,被告は,本件A4信託契約においては中途解約が原則として認められないとして,原告A4の申出を断った。
b原告A4は,被告に対し,平成5年1月5日ころ,自宅において,本件A4信託契約について,2回目の解約を申し入れた。
原告A4は,本件共有持分権について,債務の担保として購入させられたと誤解していたため,借入金を完済すれば,中途解約が認められるのではないかと考えて債務を返済し,被告に対し,再度,信託契約を解約させてほしいと申し入れた。
しかし,被告から,やはり解約は認められていないと断られた。
cなお,平成8年か9年ころに,被告から売却を勧められた事実はない。
d本件において,被告らが原告A4を始めとする原告ら以外の多くの委託者兼受益者の損害拡大防止の要求に対し,中途売却を認めて損害の拡大を防止したことは,前記のとおりであり,これと対比させれば,被告の原告A4に対する対応が,信託法上の誠実義務違反はもとより平等義務に違反していることは明らかである。
(ウ)属性等
a原告A4には,投資経験はなく,投資用マンションを購入したこともないし,資産は,休まず働いて得た収入と父からの遺産によって形成したもので,投資によって築いた資産ではない。
税金対策については,資産は三つに分けるのがよいと聞き,土地,債券,現金と分けているにすぎない。
b原告A4は,昭和63年当時,3700万円程度の年収を得ていたが,当時の預貯金額は1億3500万もなかったし,1億2000万円の有価証券を有していたが,これは割引債券である。
また,原告A4は,平成11年当時,NTTドコモ株,オーストリア輸出銀行債,輸出金融保険公社債,ニューサウスウェイルズザイム,ピムコトータルリターン等を所有していたが,これは,原告A4が,日興証券の担当者に対し,安全なものを購入するようにと言って任せていたところ,同担当者が買い付けたものであって,原告A4において,元本保証のない外国投資信託が含まれているという認識はなかった。
原告A4は,妻名義で,平成元年ころ,h1を購入したが,これは,妻が来客の宿泊用に必要というので自宅近くのマンションを購入したにすぎず,使用頻度がさほど高くないので,数年後に賃貸するようになったが,修繕費など維持費がかかるので処分したものであり,キャピタルゲインを得る目的で購入したのではなかった。
(エ)まとめ
a以上のとおり,被告は,原告A4に対し,サミットが元本の保証はなく,キャピタルゲインを目的とした危険性の高い投資商品であり,1億円の融資を受けて購入すれば,1億円で売却できてもキャッシュフローはマイナスであるばかりか,相当の値上がりがない限り損が出る商品であるのに,これらのことを説明せず,「資産の保全」に役立つ安全な商品であること,相続税対策となる商品であるという点のみを強調して説明し勧誘を行ったものであり,説明義務違反による債務不履行及び不法行為が成立する。
b被告は,原告A4に対する関係で,契約勧誘時の説明義務違反による債務不履行及び不法行為責任を負うとともに,契約後の信託法違反によって債務不履行及び不法行為責任を負う。
これによって原告A4が被った損害については,前記(1)エ(原告らの主張)に記載したとおりである。
(被告の主張)
(ア)原告A4に対する勧誘について
原告A4は,平成11年5月当時,NTTドコモ株並びに為替差損や元本欠損の危険性のある外国債券及び外国投資信託等を保有しており,昭和63年当時も,時価1億2000万円相当の有価証券を所有していた。
したがって,原告A4が,昭和63年当時,利殖目的で,積極的に株式投資等を行っていたことは疑いがない。
また,原告A4は,平成元年7月ころ,h1の区分所有権を,妻名義で現金で購入した。
原告A4は,時価総額6億5000万円の不動産を所有しており,原告A4に相続が発生した場合,1億円の相続税が課税されるのではないかと心配しており,また,当時,年間3600万円の所得を得ていたから,相続税,所得税及び住民税対策に関心を持っていた。
被告は,原告A4に対し,パンフレットやリーフレットを交付して,売買契約及び信託契約の内容について説明した。
また,原告A4は,相続税,所得税及び住民税対策に関心を有していたため,節税効果についても一通り説明した。
さらに,被告は,重要事項説明書を交付し,重要事項の説明を行った。
原告A4は,これらの説明によって,サミットが不動産投資であり,また,本件共有持分権を購入することによって所得税等の節税効果が期待できることを理解し,本件A4売買契約及び本件A4信託契約を締結した。
被告は,投資経験が豊富で知的レベルの高い原告A4に対し,本件A4売買契約及び本件A4信託契約の内容を説明し,原告A4は,この説明によって,本件が不動産投資であることや本件共有持分権を購入することによって所得税等の節税効果が期待できたのであるから,被告に説明義務違反はない。
(イ)中途売却(損切り)時について
被告は,原告A4から,平成2年12月ころ,土地の取得にかかる借入金の利息については,不動産所得として損益通算ができなくなるとの税制改正が報道されたため,サミットの中途解約をしたいとの申入れを受けたが,被告従業員が,税制法案は可決されていない段階であることを説明すると,それ以上解約等の要請はなかった。
被告は,原告A4に対して,平成8年秋ころ,原告A4が希望するのであれば,買手探しに協力することが可能であることを説明したが,原告A4は,「ローンも完済しているから,焦って売る必要などない。」とか,「良いお客さんにしか販売しないと言われたので買った。」「住信が販売するのだから大丈夫だろうと思った。」などと述べ,被告の道義的責任を追及する態度に終始して,中途売却(損切り)を行わなかった。
(ウ)原告A4の属性について
原告A4は,前記(ア)のとおり,株式投資の経験豊かな資産家であり,不動産投資にも強い関心を持っており,本件原告ら売買契約を締結した後,大阪市内のマンションを購入した。
また,原告A4は,大阪大学医学部を卒業し,大阪医師会の理事等を務めた経験もある開業医であり,その知的レベルは高い。
エ原告A5について
(原告A5の主張)
(ア)勧誘時の状況
a 原告A5は,平成元年9月下旬ころ,会計処理を依頼している税理士から被告担当者を紹介され,サミットを知ったが,税理士は,被告担当者を紹介したにすぎず,商品の内容を説明したことはなかった。
被告担当者は,原告A5に対し,リーフレットやパンフレットなどを示し,本件共有持分権の購入代金は1億円であること,購入資金は全額被告が融資すること,融資に対する返済は月々利息のみを支払い,元金は10年後の本件共有持分権売却時に一括して返済すればよいこと,これまで地価は下がったことはなく処分時には売却益も見込めること,購入した不動産は被告が一括して借り上げ転貸するので確実に家賃収入が得られること,節税になることなどの説明を行い,サミットの購入を勧めた。
原告A5は,当時5000万円以上の預金を有していたが,被告担当者の安全確実で節税対策になるとの説明を信用し,一連の契約を締結した。
b被告は,サミットが「資産の保全」になることを強調し,原告A5をしてサミットを購入させた。
しかし,前記(1)ア(原告らの主張)(ウ)において述べたように,サミットは,客観的にはキャピタルゲインを目的とする投機的な商品であるのに,被告からサミットの危険性については全く説明がされなかった。
不動産市況の下落について被告担当者に問い合わせたときも,土地は下がったことはなく絶対大丈夫だから,安心するようにと答え,サミットの危険性について全く説明をしていない。
1億円の購入資金についても,原告A5において返さなくてもよく,満期時に物件の売却代金で支払うことができるという話であった。
被告から,原告A5に対し,本件A5売買契約時に重要事項について詳細な説明はなく,免責条項や本件原告ら信託契約が期間中に解約できないことなどに関する説明もされなかった。
原告A5は,本件A5信託契約を締結するときに,被告の免責条項があることを知っていれば,本件A5信託契約を締結することとはなかった。
上記被告の行為は,説明義務に違反し,債務不履行及び不法行為を構成する。
(イ)中途売却に関する状況
a原告A5は,バブル経済が崩壊し地価が下落していたため,平成6年ころ,被告岡山支店に対し,本件共有持分権の中途売却の可能性について問い合わせた。
被告は,自分で買主を探せば対応するかの口振りであったが,誠意のある対応ではなかった。
サミットは,不動産の共有持分権である上に,中途解約を禁止した本件原告A5信託契約が存在すること,原告A5が岡山に居住していて東京の不動産市況に不案内であることから,原告A5は,中途売却を断念した。
b原告A5は,平成9年になって,被告から届けられた信託不動産の状況報告書を見て,不動産の価格が大幅に下落していることを知り,被告岡山支店に中途売却について問い合わせたところ,6000万円程度で買手を探すことは可能であるが,不動産の価格は,現在底値で来年には持ち直すので様子を見た方がよいとの消極的な対応をされた。
原告A5は,東京の不動産市況がよくわからないこと,専門的な知識を有する者は素人に対し専門家として最も望ましいと考える忠告を当然するものと考え,不動産業務の専門家である被告の説明を信用し,不動産の中途売却を見合わせた。
cところで,信託不動産の状況報告書によっても,cの近隣である「渋谷区ij丁目k番l号」の地価は,昭和64年1月1日を100とした場合の指数が,平成8年には24,平成9年には21と引き続き減少しており,平成10年には不動産市況が持ち直すという兆候は認められず,不動産市況は持ち直すとの被告担当者の説明は,根拠のないものであった。
また,被告担当者によれば,平成9年2月時点において,bの共有持分権の価格は,4000万円程度であろうとのことであり,その後も本件不動産の価値は,減少していたと考えられる。
しかし,被告は,中途売却について問い合わせた原告A5に対し,中途売却をするか否かを判断する具体的な情報を全く提供せず,明確な根拠もなく不動産市況は持ち直すかの説明を行い,同人が適切な判断
を行うための情報を提供しなかった。
こうした被告の行為は,説明義務に違反し,債務不履行及び不法行為を構成する。
(ウ)属性等
a被告は,原告A5が投資経験豊かであると主張しているが,これは事実に反する。
b原告A5は,岡山市内で医療法人社団A5医院の院長をしており,高学歴ではあるが,金融の問題については全くの素人である。
(エ)まとめ
a原告A5は,サミットを購入する際に,被告からサミットの危険性について全く説明を受けず,逆に安全で堅実であり資産の保全に最適であるとのサミットの特性とは異なる説明を受けた。
被告の説明義務違反によって原告A5が被った損害は,前記(1)エ(原告らの主張)(ア)のとおりである。
bまた,被告は,中途売却について問い合わせた原告A5に中途売却をするか否かを判断する具体的な情報は全く提供せず,明確な根拠もなく不動産市況は持ち直すかの説明を行い,同人が適切な判断を行うための情報を提供しなかった。
こうした被告の行為は,説明義務に違反し,債務不履行及び不法行為を構成する。
これによって原告A5が被った損害は,前記(1)エ(原告らの主張)(イ)のとおりである。
(被告の主張)
(ア)原告A5に対する勧誘について
原告A5及びその妻(以下「原告A5ら」という。)は,原告A5が経営する医院の顧問税理士である0税理士の勧めにより,節税目的で医療法人を設立した。
また,原告A5らは,同税理士の勧めで,都心の事業用建物の不動産共有持分権の購入に関心を持っており,同税理士から説明を受けて,本件A5売買契約や本件A5信託契約の概要を理解していた。
原告A5らは,bの不動産共有持分権を購入するのに先立ち,相続税対策及び所得税対策を目的に,mビルの不動産共有持分権1口の購入申込みを行うなど,都心の事業用建物の不動産共有持分権の購入に強い関心を持っていた。
被告は,このような原告A5らに対して,パンフレットを交付して,本件A5売買契約及び本件A5信託契約の内容(信託契約の中途解約が禁じられていること)を説明した。
また,被告は,重要事項説明書を交付し,重要事項の説明を行った。
原告A5らは,その知的レベルが非常に高い者である上に,顧問税理士の助言を得て不動産共有持分権の購入を検討していた者であり,被告は,このような原告A5らに対し,本件原告ら売買契約や信託契約の内容,原告A5が被告に対して約11年間信託すること,被告が信託満了時に一体として処分すること等を説明したのであるから,原告A5らが,bの不動産共有持分権の購入が不動産投資であることを理解できたことは明らかであり,被告に説明義務違反はない。
(イ)中途売却(損切り)時について
被告は,原告A5らに対して,原告A5らが希望するのであれば買手探しに協力することは可能であることを説明したが,原告A5らは,税理士と検討を重ねた結果,信託期間満了まで信託不動産を保有し続けるとの判断をし,中途売却(損切り)を行わなかった。
(ウ)原告A5の属性について
原告A5は,平成元年当時,5000万円の年収を有し,1億3000万円の不動産,5000万円の預貯金,2000万円相当の有価証券を有しており,株式投資の経験豊かな資産家であった。
また,原告A5は,岡山大学医学部を卒業し医療法人の院長であり,原告A5の妻は,津田塾大学の数学科を卒業し,同医院の理事として経理を担当しており,両人ともその知的レベルは非常に高かった。
オ原告A6について
(原告A6の主張)
(ア)勧誘時の状況
原告A6は,サミットを購入する前に,節税対策としてP銀行から同様の商品の勧誘を受けており,そのことを被告の担当者に話したところ,被告にもP銀行と同様の商品であるゲインがあることを知らされ,積極的に勧められた。
当時,原告A6は,節税対策をしながら,老後のために安全及び確実に資産の保全を図りたいと考えていた。
被告の財務担当者が何度も原告A6宅に来て不動産信託をすることが資産の保全となること,金銭の借入れもシステム上,当然の前提であり,全額融資により手続も容易に購入することができると説明した。
結局,P銀行よりも被告の方が,勧誘が熱心であり,先に本件A6売買契約及び本件A6信託契約を締結した。
原告A6にとって重要なことは,危険な借入れをして投資を行うことではなく,安全に「資産の保全」を図ることであった。
被告は,dビルについて,被告が造った又はDに造らせた非常に優良な建物であり,それを多数の者が購入して共有し,約10年間被告に信託し,家賃を受領し,10年後に売却がされること,建物の価値が下がることはなく,最低でも年7パーセント以上の上昇が見込まれること,損益通算がされることなどを説明し,それ以外の細かな説明をしなかった。
被告の説明は,安全で節税対策となり,資産の保全に役立つということが中心であった。
被告から,購入して信託した建物の価値が下がる可能性があり,その場合に銀行が補償しないために損失を受ける可能性があることについて理解できるような説明はなく,原告A6は,損失の危険性について理解することができなかった。
原告A6は,毎月自宅に集金に来ている被告に対し,危険で損失を顧客に与えるような商品を勧めることはなく,変なことはしないとの信頼を寄せていた。
そのため,原告A6は,被告の説明を鵜呑みにして,1億円の借入れをしてゲインを購入したのである。
被告は,平成元年1月28日の本件A6売買契約締結の際,通常の不動産業者とは異なり,重要事項説明書等の読み上げなどもしなかったが,原告A6は,被告の看板を全面的に信用して,担当者に言われるままに署名し,契約をした。
また,節税対策として,購入金額の全額の借入れをした方がよいとの被告の勧めにより,平成元年3月16日に1億円を被告から借り入れた。
原告A6は,被告の担当者から,被告から借り入れた元金の返済について,信託終了時における処分により,十分に返済ができるとの説明を受けた。
そこで,原告A6は,元金1億円の返済について,元利均等支払ではなく,元本の期限一括返済の契約としたが,そのことの危険性は全く説明されなかった。
また,本件A6売買契約時及び本件A6信託契約時のいずれにおいても,本件A6売買契約が,本件A6信託契約を前提としているにもかかわらず,信託契約についての免責条項の説明など全くされなかった。
(イ)中途売却に関する状況
原告A6は,購入先の不動産業者の助言に従い,平成7年から所有していたマンションを売却処分した。
原告A6は,銀行が受託者であるサミットは,通常のマンションの所有とは異なり,不動産価格が下落しても,顧客に損失を与えることはないと信用していたが,それでも心配になって信託期間途中での売却を考え,平成11年以前に被告に対し,本件共有持分権の今後の処理等について相談した。
しかし,被告の担当者は,中途売却について情報を原告A6に提供することはなかった。
原告A6は,平成11年5月に,被告の対応を不信に思い,被告に対し,中途売却をしている人がいるかどうかについての説明を求めたが,被告は,これについての情報を与えなかった。
(ウ)属性等
原告A6は,昭和45年から倉敷市内でA6内科小児科医院を開業してきた。
昭和47年ころから一時的中断はあったものの15年以上にわたって被告の担当者が原告A6のところに毎月集金に来ており,原告A6は,被告を堅実な銀行として信頼していた。
平成元年当時,消費税導入に対応して,医師の所得に対する税制の突然の改正で,税額が急激に増加した。
そのため,東京の不動産業者が,節税対策としてマンションの購入を医師達に勧め,原告A6も,節税対策と老後の生活のためにマンションを購入した。
しかし,知らない業者では不安があったため,長い付き合いの堅実な信託銀行である被告から節税対策として役立つというゲインを勧められて購入し原告A6は,医師として医療の専門家であるが,金融商品や不動産について十分な知識があったわけではなく素人である。
被告からゲインの危険性の説明がなく,信託不動産の価値の下落により損失を受ける商品とは理解できなかった。
(エ) まとめ
a原告A6は,ゲインを購入する際に,被告からサミットの危険性について全く説明を受けず,逆に安全で堅実に資産の保全に最適であるとのサミットの特性とは異なる説明を受けて購入した。
サミットの危険性の説明を受けていたならば,資産の保全を目的にしていた原告A6が,サミットを購入することはなかった。
被告の説明義務違反により,原告A6は,前記(1)エ(原告らの主張)(ア)のとおり,金9619万9999円を下らない損害を受けた。
b原告A6は,平成11年5月に至るまで,被告から中途売却についての情報を知らされたことはなく,また,平成11年5月段階でも,被告担当者から中途売却に関する虚偽の説明を受けた。
委託者兼受益者である原告A6の損失の拡大を防止しようとする態度は,被告には全く見られなかった。
被告の対応は,明らかに受託者としての平等義務に反しており,中途売却を不可能とされたことによって原告A6が被った損害は,前記(1)エ(原告らの主張)(イ)のとおりである。
(被告の主張)
(ア)原告A6に対する勧誘について
原告A6は,被告と本件A6売買契約を締結するのに先立ち,P銀行から1億円を借り入れて,nビルの不動産共有持分権の購入申込みをするなどしており,所得税対策等を目的に不動産共有持分権を購入することに強い関心を持っていた。
原告A6がdビルの不動産共有持分権を購入したきっかけは,被告が送付したダイレクトメールについて,被告に問い合わせてきたことである。
原告A6は,売買契約及び信託契約について,細かい説明を要しないほどによく理解していたが,このような原告A6に対して,被告は,パンフレット及びリーフレットを用いて,売買契約,信託契約の内容を説明した。
また,被告は,重要事項説明書を交付し,これに基づき,重要事項の説明を行った。
原告A6は知的レベルの高い富裕な資産家であるが,被告は,このような原告A6に対し,前述したように売買契約や信託契約の内容,原告A6が被告に対して約11年間信託すること,被告が信託満了時に一体として処分すること等を説明したのであるから,同原告が,dビルの不動産共有持分権の購入が不動産投資であることを理解できたことは明らかであり,被告に説明義務違反はない。
(イ)中途売却(損切り)時について
原告A6は,dビルの不動産共有持分権については,「被告が持ってきたから信頼して買ったんだ。」等被告の道義的責任を追及する主張を繰り返したり,損失補填を要求していた。
被告は,原告A6に対して,原告A6が希望するのであれば買手探しに協力することは可能であることを説明したが,原告A6は,全く損切りの意向を持っていなかった。
(ウ)原告A6の属性
原告A6は,平成元年当時,2600万円の年収を有し,医学生向けの賃貸アパートを所有していた外,1億円の預貯金,1億円相当の有価証券を有しており,その後も多数のマンション等を購入して,積極的に株式投資及び不動産投資を行っていた者であり,岡山大学医学部を卒業し,岡山県医師会の理事を経験するなど,その知的レベルも非常に高かった。

第3争点に対する判断

1本件各契約の特性について
(1)前記第2,1の事実及び証拠(甲1,6ないし10,17,乙ないし3,4(枝番を含む。),5(枝番を含む。),6(枝番を含む。),10,14,15,18(枝番を含む),19(枝番を含む。),32,36,38(枝番を含む。),39,106,119(枝番を含む。),120(枝番を含む。))によれば,本件原告ら売買契約,本件原告ら消費貸借契約及び本件原告ら信託契約の締結経緯及び内容について,以下の事実が認められる。
ア被告は,昭和63年及び平成元年ころ,個人では高額すぎて一棟という単位では投資対象とすることのできない都心の事業用建物について,個人でも投資できるようにするために,所有権を分割化して共有持分権としたサミットという名称の不動産小口化商品を開発して,一口1億円で共有持分権を販売していた。
イ被告は,デベロッパーを代理して,顧客に対し,デベロッパーが分譲対象部分の土地及び建物の所有権を分割化した共有持分権を1口1億円で販売する。
デベロッパーがCであるcについては,リンク,デベロッパーがDであるdビルについては,ゲインと名付けられていた。
原告A1,亡B,原告A3,同A4及び同A5は,昭和63年9月から平成元年11月にかけて,被告からリンクを,原告A1,亡B,原告A3及び同A4については1億円で,原告A5については1億0036万8160円で購入し,原告A6は,平成元年1月に,ゲインを1億円で購入し,被告との間に本件原告ら売買契約を締結した。
ウ顧客は,自己が保有する資金でサミットを購入できることはもちろんであるが,被告は,サミットを販売する際,顧客に対し,1共有持分権(価格1億円)当たり1000万円から8000万円まで借り入れ,信託終了時に元本を一括返済する元本据置金利支払方式と毎月元本と利息を返済していく元利均等方式が利用できる提携ローンを用意していた。
提携ローンによっても顧客の資産状態等に従い1億円を融資できるとされていたし,アパートローンを利用すると,被告は,1億円まで貸し出すことにしていた。
原告A1は7500万円を,亡Bは3000万円を,原告A3,同A4,同A5及び同A6はそれぞれ1億円を,平成元年1月から同年12月にかけて,被告からリンクないしゲインの購入のためにアパートローンとして元本据置金利支払方式で借り受け,被告との間に本件原告ら消費貸借契約を締結した。
エ顧客は,被告との間に共有持分権の売買契約を締結する際,物件の引渡し時に買主を委託者兼受益者,被告を受託者とする信託契約を締結することをあらかじめ承諾することとされ,本件共有持分権を購入した後,それを他の買主と共に,被告に約11年間信託することとされた。
原告A1,亡B,原告A3,同A4,同A5及び同A6は,平成元年1月から平成元年12月にかけて,被告との間に,本件原告ら信託契約を締結した。
オ本件原告ら信託契約における信託契約の目的は,本件共有持分権及び他の共有持分権者の有する持分権全体の一体的管理及び管理終了に伴う一体的処分であるとされ,被告は,信託期間中信託不動産の管理を行うとともに,デベロッパーであるC及びDに対し,信託不動産を一体として賃貸することとされた。
被告は,Cに対し,平成元年1月26日,aを1箇月の賃料について同日から平成2年12月末日まで333万3400円,平成3年1月1日から平成4年12月末日まで366万6700円,平成5年1月1日から平成6年12月末日まで400万円,平成7年1月1日から平成8年12月末日まで433万3400円,平成9年1月1日から平成12年3月15日まで466万6700円と定め,平成元年12月19日,bを1箇月の賃料について同日から平成3年11月末日まで300万円,平成3年12月1日から平成5年11月末日まで330万円,平成5年12月1日から平成7年11月末日まで360万円,平成7年12月1日から平成9年11月末日まで390万円,平成9年12月1日から平成12年3月15日まで420万円と定め,Dに
対し,平成元年3月16日,dビルを1箇月の賃料について同日から平成3年2月末日まで616万7000円,平成3年3月1日から平成5年2月末日まで647万5000円,平成5年3月1日から平成7年2月末日まで678万4000円,平成7年3月1日から平成9年2月末日まで709万2000円,平成9年3月1日から平成12年5月16日まで740万円と定めて,それぞれ賃貸した。
カ本件原告ら信託契約において,被告は,各委託者兼受益者に対し,信託期間中,持分割合に応じて年2回賃料から諸経費,信託報酬等を差し引いた配当を支払うこととされ,リンクに関しては,被告は,原告らに対し,信託期間1年目から2年目は1共有持分権当たり年額200万円,3年目から4年目は同じく220万円,5年目から6年目は同じく240万円,7年目から8年目は同じく260万円,9年目以降は280万円の賃料を支払い,ゲインに関しては,信託期間1年目から3年目は1共有持分権当たり約200万円,4年目から5年目は同じく210万円,6年目から7年目は同じく約220万円,8年目から9年目は同じく約230万円,10年目以降は同じく240万円の賃料を支払った。
キ本件原告ら信託契約における受益権については,やむを得ない事情がある場合を除き,原則として譲渡できず,譲渡する場合には,被告の承諾を必要とし,受益権を譲り受けた者は,委託者兼受益者の権利義務を承継するとされ,信託契約の解除については,受託者が,信託目的の達成又は信託事務の遂行が不可能又は著しく困難と認めた場合に解除できるほかは,委託者兼受益者において解除することができないとされた。
ク被告は,約11年後の信託満了時に,事業用建物を一括売却し,各委託者兼受益者に対し,その売却代金を,持分割合に応じて配当することとされ,被告は,平成12年3月15日,aについて,2億7980万円で売却し,原告A1,同A2,同A3及び同A4それぞれに対し,各信託元本1399万0001円を支払い,bについて,2億5245万円で売却し,原告A5に対し,信託元本1402万5000円を支払い,同年5月16日,dビルについて,4億5880万円で売却し,原告A6に対し,信託元本1240万0001円を支払った。
(2)前記(1)の事実及び証拠(甲17,23,乙4の5,6の3,19の3)によれば,サミットについて,次の事実が認められる。
アサミットは,都心の事業用建物について,これを共有持分権化して販売し,被告が共有持分権の信託を受けて信託不動産を一体的に管理し,信託終了時に処分するという仕組みによって,個人にも都心の事業用建物に対する投資を可能にする商品であり,サミットの購入は,不動産への投資であることは明らかである。
そして,サミットを購入した者は,被告がデベロッパーに対し,信託不動産を一体として賃貸して受領する賃料から配当金の支払を受けて利益を得るとともに,信託終了時における本件共有持分権の一体的処分によるキャピタルゲインを期待して投資しているものであるが,不動産の投資であるがゆえに,元本保証はなく,不動産の価格の下落に伴って損失が生じる商品である。
イ原告らがサミットを購入した昭和63年から平成元年当時において,サミットを購入して被告に信託し,被告が信託不動産を賃貸することは,購入者自身が不動産事業を行っていることになり,固定資産税,都市計画税及び減価償却費などの経費控除が認められるとともに,サミットを借入金で購入し,利息などの支払によって不動産所得に赤字が出た場合には,損益通算の対象になって,その他の所得と合算して課税対象となる課税所得が減額されて,所得税の節税効果をもたらす。
また,相続が発生した場合には,相続人が本件共有持分権を取得したものと扱われ,その評価は一般的に時価より低い路線価で評価されるため,相続税の評価上有利であり,さらに,サミットを借入金で購入した場合,相続財産の価額から相続時の債務額を控除して相続財
産を減らすことができ,これらの点において,サミットの購入は相続税対策となるものであった。
しかし,税制が改正されると,これらの効果は当然変更されるものであった。
ウ課税所得が3000万円の者が,利率6パーセント,元本据置金利支払方式で借り入れた資金でサミット商品の一つであるoビルを購入した場合,信託不動産の売却価格が1億円のときには,借入金が8000万円では最終収支は黒字となるが,借入金が9000万円以上では最終収支は赤字となること,信託不動産の売却価格が1億2000万円以上のときには,借入金が1億円であっても黒字となること,顧客の課税所得が2000万円の場合には,信託不動産の売却価格が1億円のときには借入金が5000万円では最終収支は黒字となるが,借入金が6000万円以上では,最終収支は赤字となること,売却価格が1億2000万円以上のときには,借入金が1億円であっても黒字となるとする課税所得,借入金額及び信託契約終了時の売却価格に
よるキャッシュフローの分析結果が存在する。
エ信託不動産の売却価格によって最終収支が赤字になる場合があるのは,借入金の額によって信託期間中の借入金の利息の支払が賃料収入を原資とする信託配当額よりも上回って赤字が発生し,所得税法上,それを損失として損益通算して所得税額や住民税額を軽減させることができるが,軽減される税額が,損失金額を補う金額ではないため,信託終了時に信託不動産の売却によりキャピタルゲインが得られなければ,全体の収支として最終収支が黒字とならないためである。
オサミットの購入による最終収支が黒字となるか否かは,借入金の金額,借入金の利率,信託期間中の信託配当額,課税所得額,信託不動産の処分価格などの諸条件によって決まるものであるが,本件において,原告らはいずれも被告から借り入れをすることによりサミットを購入しており,特に,原告A3,同A4,同A5及び同A6は,それぞれ1億円を約定利息を年約5ないし6パーセントで借り受けており,利息として年間500万円ないし600万円の支払があり,一方,信託配当額は,200万円ないし280万円の間であるから,損益通算による所得税及び住民税の軽減を考慮しても,最終収支が黒字となるためには,信託終了時に信託期間中の損失を上回るほどに信託不動産の売却によってキャピタルゲインを得ることが必要になる。
(3)前記(1)(2)によれば,サミットの特性として,以下のようにまとめることができる。
アサミットの購入は,不動産への投資であり,配当金の支払を受けて利益を得るとともに,信託終了時の信託不動産の処分によるキャピタルゲインを期待して投資しているものである。
一方,サミットには元本保証はなく,不動産の価格の下落に伴って損失が生じる商品である。
イサミットは,共有持分権を購入した場合,被告に約11年間信託すること,被告は信託期間中信託不動産を一体として賃貸し,委託者兼受益者に対し賃料収益から信託配当額を支払い,信託終了時に信託不動産を一括売却して,委託者兼受益者は信託元本を受領することがあらかじめ決められている商品である。
ウ昭和63年から平成元年当時において,サミットを購入することは,所得税の節税効果をもたらし,相続税対策となるものであったが,税制が改正されると,これらの効果は当然変更されるものであった。
エサミットの購入による最終収支が黒字となるか否かは,借入金の金額,借入金の利率,信託期間中の信託配当額,課税所得額,信託不動産の処分価格などの諸条件によって決まるが,借入金によってサミットを購入すると,最終収支が黒字となるためには,信託終了時に信託期間中の損失を上回るほどに信託不動産の売却によってキャピタルゲインを得ることが必要になる。
(4)原告らの主張について,判断する。
ア原告らは,本件各契約が一体の契約であること,原告らに対し多額の借入れによる新たな危険を負担させること,本件各契約締結に基づく危険性が認識できないことなどにより,サミットは問題を含んでいた商品であったと主張する。
(ア)前記(1)ウエの事実及び証拠(甲1,10,17,乙4(枝番を含む。),6(枝番を含む。),19の3)によれば,本件原告ら売買契約において,当然に本件原告ら信託契約を締結することを前提としており,本件原告ら売買契約と本件原告ら信託契約は,両者あいまってサミットを構成しているということができるし,また,サミットを購入するに当たっては,被告において,パンフレット等で提携ローン又はアパートローンを利用して購入資金の全額を借り入れることができることを記載し,借入金によって購入することが所得税及び相続税対策となることを宣伝しており,原告らはいずれも被告から資金を借り入れてサミットを購入していることが認められ,これらの事実によれば,本件各契約は,密接に関連しているというべきであり,被告に
おける説明義務の範囲を検討するに当たっては,本件各契約の密接な関連性を考慮する必要があることはいうまでもない。
(イ)しかしながら,本件の判断において,本件各契約が法的に一体であるとすることは何の意味も有するものではないし,サミットを購入するに当たって,その購入資金を借り入れた場合,借入金の利息を負担するとともに借入金を弁済しなければならないこと,サミットの購入は不動産への投資であること(前記(2)ア),本件原告ら信託契約の信託期間が約11年であること(前記(1)エ)は,いずれも原告らにとって明らかな事柄であり,仮に,原告らにおいて11年後の不動産市況を実感できなかったとしても,これらを理由にサミットに欠陥等の問題点があるということにはならず,原告らの主張は認められない。
イ原告らは,本件原告ら信託契約において,信託不動産の管理方法,運営方法及び処分方法がすべて受託者の権限とされ,委託者兼受益者においては,適切な時期に受益権を譲渡したり,本件原告ら信託契約を解除したりすることはできないから,サミットは,原告らにおいて損失の拡大を防止することができない商品であると主張する。
(ア)前記(1)キ,(3)イのとおり,本件原告ら信託契約は,約11年間の信託期間中,委託者兼受益者には,原則として受益権譲渡が認められず,解除することも認められていないし,信託不動産の管理処分については,受託者において,信託期間中は第三者に賃貸し,信託終了時には,第三者に売却して配当するとされており,本件原告ら信託契約においては,信託不動産の管理処分については,受託者に委ねられていることが認められ,委託者兼受益者において,これを変更することは原則としてできないことが認められる。
(イ)本件原告ら信託契約には,前記(ア)の内容が明記されており,原告らは,契約内容を同意の上本件原告ら信託契約を締結したものであるし,前記(1)アのとおり,サミットは,高額の都心の事業用建物について,個人でも投資対象とできるように,所有権を分割化して共有持分権として小口化して多数の者に販売し,その後,共有持分権を買い受けた者すべてから信託を受けて,被告において信託不動産を一体的に管理及び処分することにして,信託不動産の管理方法,運営方法及び処分方法について,受託者において決定することとし,委託者兼受益者において,受益権譲渡や解除ができないこととしたのは,多数の委託者兼受益者の利益を一括して平等に保護するという観点から合理性が認められる。
さらに,証拠(乙118,証人E2)によれば,不
動産を譲渡した場合の課税措置について,不動産を取得している期間5年以上を長期譲渡とする法律が平成2年3月31日に失効する可能性があり,取得期間10年以上を長期譲渡とする税法の改正が行われる可能性があったことが認められ,本件における信託不動産の処分が課税上長期譲渡になるように信託期間を11年としたことにも合理性が認められる。
ウ原告らは,サミットには,元本保証としての買取り制度が存在したと主張する。
(ア)本件原告ら信託契約書には,元本保証としての買取り制度については規定されていない(甲7,乙119(枝番を含む。))。
(イ)aしかしながら,被告東京不動産営業部は,サミットの販売担当者が,サミットの仕組み等について理解するために勉強会を開催し,その際内部資料(甲17,以下「サミット内部資料」という。)を作成していたが,同内部資料には,顧客との間の想定問答として,「元本保証はあるのですか」との問いに対し,「投資家からやむを得ない場合に請求があれば購入価格で売主が買取るという買取制度があります。
買取保証付の投資用不動産については相続財産評価の際,購入価格で評価されることになり,相続メリットが享受できない場合もおこりえます。」と記載され,さらに,被告横浜支店の担当者が,亡Bに対し交付した,リンクについての御報告書と題する書面(甲18,以下「リンク報告書」という。)には,買戻し制度について,やむを得
ない場合に限り購入価格(1億円)でCが買戻しをしますとの説明がされている(甲17,18,26,乙118,証人E,同E2)。
bそして,サミット内部資料によれば,本件原告ら信託契約において定められている受益権を譲渡できるやむを得ない場合の例として,破産や相続発生による場合が挙げられこれに限っており(甲17),証人E2は,買取り制度について,買主に相続が発生したり,買主が破産したというやむを得ない事情によって信託期間中に現金が必要になった場合に,売主であるデベロッパーが購入価格で買い取ることによって換金性を付与したものであること,サミット販売当時,不動産の価値は右肩上がりの状況であって,信託不動産の共有持分権の時価が購入価格の1億円を上回っている場合を予想して,時価で買い取ることはできないが,買主の上記事情を考慮して購入価格である1億円であればデベロッパーにおいて買い取る制度であったこと,Cが売主で
あるリンクには買取り制度が存在したが,Dが売主であるゲインには買取り制度が存在しなかったと陳述ないし証言している(乙118,証人E2)。
また,亡Bは,被告から相続が発生した場合,本件共有持分権を適正価格で現金化できないが,元値の1億円で買い取るという買取り制度の説明を受けて,元値保証を文書で明確にするように求めたが,被告から拒否され,上記のとおり,本件原告ら信託契約においては,買取り保証について契約書上明らかになっていない(乙42,証人E)
c以上によれば,買取り制度は,Cが売主であるリンクにだけ存在し,買取り制度が適用されるやむを得ない場合とは,買主に相続が発生し,又は,買主が破産した場合に限られるというべきである。
また,本件原告ら信託契約において,買取り制度について定められておらず,買取り制度についてはサミット内部資料の想定問答や亡Bに対する説明資料にのみ記載されているにすぎないこと,被告は,亡Bからの買取り制度について文書で明らかにするようにとの申出も拒否していること,被告において,地価の上昇を予想して,買主の相続又は破産という事情を考慮して時価ではなく購入価格である1億円でデベロッパーに買い取らせるという買取り制度を設けたことからすると,買取り制度について,被告が,売主に対し,購入価格である1億円で買い取らせる義務を負っていたものであると解することができないといわなければならない。
(ウ)そうすると,サミットには,一般的に元本保証としての買取り制度が存在したとの原告らの主張は認められないし,被告が,亡Bに対し,相続が発生した場合,Cが本件共有持分権を1億円で買い取ることを約束したとの原告A2の主張も認められない。
2被告の一般的な説明義務違反について
原告らは,被告は,金融の専門家であり,サミットは投資商品であるから,原告らに対し,信義則上サミットの危険性について説明すべき義務があり,1サミットには元本保証がなく,危険性のある商品であること,2顧客において,信託期間中は危険性が回避できないこと,3信託期間終了時に最終損益の分岐点となる信託不動産の売却価格,4契約を締結した平成元年当時,地価上昇率が鈍化し,地価が下落に向かう可能性があったことなどについて説明すべき義務があったのに,被告は,これを怠り,サミットが元本保証のない投資商品であることを明確に説明しなかったばかりか,サミットが安全性の高い商品であると説明してサミットの勧誘を行ったものであって,被告には説明義務違反があると主張するので,まず,被告が顧客に対しサミットを勧
誘するために作成したパンフレットなどの記載から,一般的に説明義務違反があったか否かを検討することにする。
(1)被告は,都心の事業用建物について,所有権を分割化して共有持分権としたサミットという名称の不動産小口化商品を開発し,被告の提携ローンを使用してサミットを購入することを勧誘した者として,原告ら顧客に対し,信義則上サミットの内容及び原告ら顧客が締結する売買契約及び信託契約等の内容について正しく説明する義務を負っているというべきであるが,被告が説明すべき具体的内容については,サミット商品の特性を考慮すべきはもちろんのこと,サミットを購入した顧客である原告らがどのような学歴及び地位を有し,また,資産及び経済的取引の経験を有していたかという原告らの状況をも考慮する必要がある。
(2)そこで,原告らの学歴,資産等について検討するに,証拠によれば,以下の事実が認められ,これによれば,亡Bを除き,原告らは,いずれも高学歴で,医師又は建築士という知識人であり,高い所得を有すると共に,高額の預貯金,有価証券及び不動産を所有しており,原告A1には,妻と併せて年間1000万円の不動産収入があり,亡B及び原告A6は,アパート経営を行っており,原告A3,同A4及び同A6は,多数のマンション等を購入し,あるいは,頻回の不動産取引を行っている者であり,また,原告A3及び同A5は,顧問税理士の紹介を受けてリンクを購入した者である。
ア原告A1
(ア)原告A1は,早稲田大学理工学部及び同大学院を卒業し,昭和63年当時,44歳で株式会社I設計に勤務し,構造設計部の課長をして,約1000万円の年収を得ており,預貯金を約2000万円有していた(甲30,乙32,原告A1本人)。
(イ)原告A1は,昭和50年ころ,共同所有者と共に,ビルの2フロアを約1億円で購入し,これを賃貸して,昭和63年当時,年間約600万円の賃料収入を得ており,原告A1の妻も,不動産管理の専従者として,年間約400万円の収入を得ていた。
原告A1には,顧問税理士がおり,所得税対策等について相談し,顧問税理士からアドバイスを受けていた(甲30,乙34,原告A1本人,弁論の全趣旨)。
(ウ)原告A1は,昭和61年ころ,NTT株を購入したほか,平成11年当時,1500万円相当の株式を所有していた(原告A1本人,弁論の全趣旨)。
イ亡B及びE
(ア)亡Bは,高等小学校を卒業し,横浜市の水道局で,職員厚生会の経理の仕事をしており,本件A2売買契約及び本件A2信託契約時には,73歳で既に退職しており,Eは,大学を卒業し,中学校の教員をしていた(証人E)。
(イ)亡Bは,昭和63年ころ,1億6000万円の預貯金,3000万円の有価証券を有し,不動産として自宅及びアパートを所有し,賃貸アパート経営を行っていた(甲18,乙36,証人E)。
ウ原告A3
(ア)原告A3は,麻布高校を卒業後,東京大学教養学部に入学し,その後,東京歯科大学に入学して卒業し,医療法人A3歯科医院の院長を務めており,昭和63年当時,55歳で,年収は約1億円,預貯金は約1億円有していた。
原告A3は,医療法人の顧問税理士であったM税理士(以下「M税理士」という。)からリンクの紹介を受けた(甲28,乙10,原告A3本人)。
(イ)原告A3は,昭和63年当時,合計で約8億円の価値のある,東京都渋谷区所在のg301号室,東京都港区所在のu1010号室,東京都渋谷区所在のビルの504号室(ただし,原告A3の持分が7分の6,原告A3の妻の持分が7分の1),東京都渋谷区所在のビルの1階部分及び2階部分の一部,同ビルの2階部分の一部であるB201号室,同ビルの3階部分の一部であるA301号室,同ビルの4階部分の1部であるC402号室,同ビルの5階部分,6階部分及び7階部分の一部,東京都渋谷区の宅地をそれぞれ所有し,これらを賃貸することにより,年間6737万3648円の賃料収入に加え,礼金の収入も得ており,同年9月20日には,東京都港区所在のe607号(以下「e」という。)を購入した(乙8,10,20(枝番を
含む。))。
(ウ)原告A3は,節税を目的として,前記(イ)の賃貸物件の管理等を業務とするN有限会社を設立し,取締役の地位にあった(乙10,原告A3本人)。
(エ)原告A3は,平成3年の所得税の確定申告において,不動産所得は697万9180円,給与所得は2063万5000円,総計で2773万4300円の所得があったとして申告した(乙9)。
エ原告A4
(ア)原告A4は,大阪大学医学部を卒業し,内科及び外科を専門とする開業医で,大阪医師会の理事等を務めた経験を有する者であり,毎年の所得税の申告については税理士に委任して行っていた(原告A4本人)。
(イ)原告A4は,昭和63年当時,65歳で,約3600万円から3700万円の年収,預金等1億3000万円を有し,不動産は,自宅のほか,大阪府松原市天美東の土地,京都市左京区の土地,兵庫県西宮市松園町の土地,静岡県熱海市の土地及び群馬県嬬恋村の土地を所有し,1億2000万円の有価証券を有し,総計約6億5000万円の資産を有していた。
また,原告A4の妻は,平成元年7月5日,大阪府松原市天美東所在のh1506号室(以下「h1」という。)を,約2000万円で,手持ちの現金で購入し,平成8年5月21日,約1800万円で売却した(甲27.乙15ないし17,原告A4本人)。
(ウ)原告A4は,平成11年5月当時,NTTドコモ株,オーストリア輸出銀行債(当時時価252万9336円),輸出金融保険公社債(当時時価421万3750円),ニューサウスウェイルズザイム(当時時価416万5000円)及びピムコトータルリターン(当時時価1446万84841円)等6120万円相当の有価証券等を所有していた(乙16,争いのない事実)。
オ原告A5
(ア)原告A5は,岡山大学医学部を卒業し,医療法人社団A5医院の院長を務めており,原告A5の妻であるQは,津田塾大学数学科を卒業し,A5医院の理事として経理を担当していた(乙94,証人M)。
(イ)原告A5は,平成元年当時,50歳で,5000万円の年収を得ており,1億3000万円相当の不動産,2000万円相当の有価証券,5000万円の預貯金を有していた。
原告A5は,医療法人及び原告A5個人の顧問税理士を務めていた0税理士から税金対策としてリンクの購入を勧められてこれを購入した(甲31,乙14,証人M)。
カ原告A6
(ア)原告A6は,岡山大学医学部を卒業して,内科及び小児科等を専門とする医院を開業し,岡山県医師会の理事を務めたことがあり,平成元年当時,52歳で,2600万円の年収を得ており,預金等は1億円,有価証券は1億円相当,不動産は3億円相当を有していた(乙106,原告A6本人)。
(イ)原告A6は,岡山県倉敷市に4階建てのアパートを所有して,医学部の学生に賃貸しており,平成元年3月23日には,P銀行からサミットと同様のnビル不動産共有持分権(メッツ)を1億円で購入し,同月16日,東京都文京区所在のp401号室を購入し,平成11年6月23日売却し,平成元年3月23日,東京都豊島区池袋所在のq1002号室を購入し,平成9年8月14日売却し,平成元年3月23日,東京都新宿区新宿5丁目2番地2所在のビルの603号室を購入し,平成11年8月23日売却し,平成元年9月27日,東京都文京区千駄木3丁目65番地4,122番地1,65番地15所在のr,s405号室を購入し,平成10年4月28日売却し,平成元年9月29日,東京都新宿区大久保2丁目7番11の30所在のビルの
903号室を購入し,平成7年10月20日売却し,平成2年1月16日,東京都中野区本町1丁目41番地23所在のt308号室を購入し(ただし,原告A6の持分が3分の2,原告A6の妻の持分が3分の1),平成8年9月2日売却した(乙11(枝番を含む。),24)。
(3)前記(2)に認定した原告らの状況及び前記1(3)に判示したサミットの特性を踏まえて,被告が原告らに対しサミットを販売する上で説明すべき内容及び被告の説明義務違反の有無について検討する。
ア原告らは,本件原告ら信託契約が貸付信託と混同される可能性があるから,サミットには元本保証がなく,危険性のある商品であることを説明する義務があったのに,被告は,サミットが安全性の高い商品であると説明したと主張する。
(ア)前記1(3)に判示したとおり,サミットの購入は,不動産への投資であり,配当金の支払を受けて利益を得るとともに,信託終了時の信託不動産の処分によるキャピタルゲインを期待して投資しているものであって,貸付信託とは異なり,元本保証はなく不動産の価格の下落に伴って損失が生じる商品であるから,まずは,被告において,サミットの購入が,貸付信託とは異なる不動産投資であることを説明すべき義務があったというべきである。
ところで,証拠(甲1,8,9,10,乙4(枝番を含む。),5(枝番を含む。),6(枝番を含む。),18(枝番を含む。),19(枝番を含む。))によれば,サミット,リンク,ゲインに関するパンフレット,リーフレット等(以下,証拠に挙げたパンフレット類を総称して「サミットパンフレット」という。)には,サミットが事業用建物の所有権を分割化した共有持分権を販売するものであって,不動産が運用対象であること,10年後の売却益を期待する商品であること,金員を信託して運用するのが貸付信託や金銭信託であり,土地,建物を信託して管理と運用を任せるのが不動産信託であり,サミットは不動産信託であること,不動産運用の目的は,最終的に資産価値の上昇であること,信託期間の終了時に共有持分権がまとめて売却され
,持分割合に応じて確実に売却代金を受け取ることができることが記載されていることが認められる。
これらのサミットパンフレットの記載によれば,被告は,サミットの購入が不動産投資に当たり,貸付信託とは異なるものであることを説明していたと認められるし,前記(2)に認定した原告らの状況を考えると,原告において,サミットの購入が,貸付信託とは異なる不動産投資であることを十分理解していたと認められ,これに反する原告らの主張は認められない。
(イ)次に,被告において,サミットには元本保証がなく,危険性のある商品であることを説明する義務があったか否かを検討するに,不動産への投資が,不動産市況の変動によって売却利益を得ることができたり,損失を被ったりすることは当然であって,不動産への投資に元本保証がないことは一般人であれば理解できる事柄であるというべきであるし,前記(2)に認定した原告らの状況を考えると,原告らにおいて,このことを十分理解していたと認められるから,被告において,サミットに元本保証がないことまで殊更説明する義務はないといわなければならない。
さらに,前記1(3)に判示したとおり,サミットを借入金で購入した場合,最終収支において損失を被らないためには,信託終了時に信託期間中の利息の支払による損失を上回るほどに信託不動産の売却によってキャピタルゲインを得ることが必要であるが,そのことのゆえに,サミットが危険性のある商品であるということはできないし,被告において,サミットが危険性のある商品であるとの説明義務があったとすることもできない。
原告らは,被告は信託銀行として金融の専門家であるから,説明義務が加重されると主張するが,そのことを理由にして被告には前記の点にまで説明義務があるとは考えられないから,原告らの主張は採用することができない。
(ウ)もっとも,被告において,サミットには元本保証があるなどと虚偽の説明をしたときには,説明義務違反があるというべきであるし,虚偽の説明に至らなくても,原告らをして元本保証があると誤解させるような説明をした場合には,説明義務違反と評価される場合があると考えられる。
aところで,サミットパンフレットには,次の記載がある。
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(q)現在の保有資産を守るために,早いうちから相続税対策を
(r)土地の評価額は実勢価格の上昇に連動しますので,保有資産を守るためには,早いうちから対策をしっかり考えなければなりません。
bまた,リンクのダイレクトメールには,参考資料として,6000万円を借り入れて,1共有持分権を購入した場合,課税所得が3000万円であれば,2年目の予想収支は,不動産所得が赤字となること,所得税の減税を考えてもキャッシュフローは6万円の赤字となること,相続税については,2030万円減額となることが記載され,他方,信託不動産の売却価格が,購入価格を下回る可能性があることについては記載がされていない(乙6(枝番を含む。))。
cさらに,サミット内部資料には,相続メリットを試算した記載があり,その記載では,本件共有持分権の時価の上昇率を年2パーセント,5パーセント,7パーセントと見積もり,時価上昇率が7パーセントで,路線価が時価の70パーセントであると想定すると,10年後の本件共有持分権の時価が,1.97倍となり,路線価が約1億円となるとの記載があるし,ゲイン想定問答集(乙124)には,地価の上昇率について,6大都市における地価の推移は,最近10年間で2.7倍,オイルショックを挟んだ10年間では1.9倍であり,過去のデータから最低でも1.6ないし1.7倍を見込んでいること,金融商品がインフレーション下では目減りする可能性が大きいのに比べて,不動産であるゲインはその可能性が低いこと,デフレーション下
でも地価は値下がりしにくく,ゲインは都心の商業地ビルであるので値下がりの危険は小さいこと,株式の暴落があっても地価への影響は少ないことの記載がある。
d一方,サミットパンフレットのいずれにも,被告において本件共有持分権について元本保証するという記載はないし,サミットパンフレットにおいて記載されている資産の保全,資産の積極的な運用と保全をめざす上で有効なシステム及び将来性や安定性などのメリットがあるとの内容は,サミットパンフレットによれば,予算に合わせて共有持分権を購入できること,返済計画に合わせてローンを選択設定できること,C又はDが信託不動産を一括して借り上げるため,オーナーに手間が一切かからないように運営がシステム化されていること,共有持分権を信託することによる信託配当は不動産所得となって,その所得金額は他の所得と損益通算ができること,相続の際には共有持分権が実勢価格より低い路線価格で評価されること,資産の保全とは被
告に信託されるので長期にわたって資産価値を維持できること,最終配当は持分割合に応じて確実に売却代金を受け取ることができることであり,また,将来より大きな資産価値を期待できることや資産のより大きな形成と言われている内容も,約10年後の売却益の期待や将来的に有利な条件で売却できる可能性があるというにすぎないものであって,これらはサミットパンフレットを検討することによって理解できることである。
e前記1(2)ウのとおり,サミット内部資料には,課税所得が3000万円の者が,利率年6パーセント,元本据置金利支払方式で借り入れた資金でサミット商品の一つであるoビルを購入した場合,信託不動産の売却価格が1億円のときには,借入金が8000万円では最終収支は黒字となるが,借入金が9000万円以上では最終収支は赤字となること,信託不動産の売却価格が1億2000万円以上のときには,借入金が1億円であっても黒字となること,顧客の課税所得が2000万円の場合には,信託不動産の売却価格が1億円のときには借入金が5000万円では最終収支は黒字となるが,借入金が6000万円以上では,最終収支は赤字となること,売却価格が1億2000万円以上のときには,借入金が1億円であっても黒字となるとする課税
所得,借入金額及び信託契約終了時の売却価格によるキャッシュフローの分析結果が存在しており,この分析結果によれば,最終収支が黒字となるためには,信託終了時に信託期間中の損失を上回るほどに信託不動産の売却によってキャピタルゲインを得ることが必要になることは明らかである。
なお,サミット内部資料は,原告A4に交付されていた(甲28,原告A4本人)。
f前記aのサミットパンフレットの記載によれば,資産の保全という言葉が数多く使用され,サミットが資産の積極的な運用と保全をめざす上で有効なシステムであり,将来性や安定性などのメリットがあり,デメリットがないこと,安定した収益と将来のより大きな資産価値を期待できることなどが強調されており,リンクのダイレクトメールやサミット内部資料においても,本件共有持分権の時価が上昇することを前提にして相続税メリットを試算しており,被告において,本件共有持分権の時価の上昇率を年7パーセントであると予想していたと推認されないわけではなく,これらの記載によれば,パンフレットを読む顧客である原告らをして,サミットの購入が不動産の投機としての危険性を有していることを認識させることなく,安全性の高い商品
であるとの誤解を生じさせる面があったといわなければならないし,本件共有持分権が結果的にいわゆるバブル経済の崩壊に伴う不動産市況の悪化によって,信託終了時においてaについては1399万円,bについては1402万5000円,dビルについては1240万円でしか売却できずに,サミットを被告からの資金を借り入れて1億円で購入した原告ら(原告A5については,1億0036万8160円)において多大の損害を被ったことからすると,被告におけるサミットパンフレットの説明には,サミットの安全性の高い商品である面を強調しすぎて,不動産投機としての危険性に注意を与えなかった点に問題があったといえなくもない。
しかしながら,サミットが開発され売り出されたバブル経済崩壊前の昭和63年及び平成元年当時,被告を始め多くの国民において,地価は将来にわたっても上昇を続けると予測しており,地価が将来下落に至ることは予想し得なかった事態であった(乙105,118,証人E2)。
このような当時の状況を考えると,被告において,サミットパンフレットに上記のような記載を行い,また,被告において,本件共有持分権の時価の上昇率を年7パーセントであると予想していたこともやむを得ないことであったといわなければならないし,本件全証拠によるも,被告が本件共有持分権の時価の上昇率を年7パーセントと保証したり,断定したことを認めることができず,上記のようなサミットパンフレットの表現は,被告としての将来の見込みを述べたにす
ぎないものである。
さらに,被告がサミットパンフレットにおいてサミットが安全性の高い商品であることを強調していたとはいえ,前記dに判示したとおりサミットパンフレットにその安全性の内容については正しく記載していたのであり,また,サミット内部資料においても借入金によっては信託不動産が1億円以上に売却できないと,最終収支が赤字となり,借入金によってサミットを購入すると,信託終了時に信託期間中の損失を上回るほどに信託不動産の売却によってキャピタルゲインを得ることが必要になることの分析結果を明らかにしていたし,約10年後の売却益についてもそれは期待や可能性であるとの正しい記載をしており,サミットパンフレット等において,被告が本件共有持分権について元本保証すると記載をしたことはなかったのである。
加えて,前記ア(ア)に判示したとおり,原告らは,サミットの購入が,不動産投資であることを十分理解していたと認められる。
これらの事情を総合考慮すると,被告におけるサミットパンフレットの説明には,サミットの安全性の高い商品である面を強調しすぎて,不動産投機としての危険性に注意を与えなかった点に問題があったといえ,原告らをしてサミットの購入には元本保証があると誤解させるような説明をしたということはできないし,これを説明義務違反として違法行為に当たるとすることはできない。
(エ)次に,信託期間中は危険性が回避できない商品であることについて説明する義務があるかについて検討する。
前記1(1)キのとおり,サミットは,信託期間中は原則として受益権譲渡ができず,委託者兼受益者において,解除することもできないから,単に不動産を購入して個人で所有している場合に,不動産市況に応じて売却することができるのとは異なるのであって,かかる特徴は,その本質が不動産投資であるサミットにおいては,重要なものであるから,被告において,これを説明するべき義務があったと認められる。
証拠(甲1,6ないし10,19,20,乙1ないし3,4ないし6(枝番を含む。),18及び19(枝番を含む。),119及び120(枝番を含む。))によれば,サミットパンフレットには,信託期間が約10年間であること,信託期間終了後に共有持分権が一括売却されることが記載されていること,被告は,原告に対し,本件原告ら売買契約締結時において,本件原告ら売買契約にかかる重要事項を説明したが,重要事項説明書及び売買契約のいずれにおいても,原告らは,被告に対し,本件共有持分権の引渡し時に本件共有持分権を信託すること,被告は,すべての共有持分権を一体的に管理し,管理終了に伴い一体的に処分すること,デベロッパーに対し,信託不動産を一括して賃貸すること,信託期間は昭和64年1月26日から昭和75年
3月15日までであることが明記されていること,本件原告ら信託契約書にも,信託の目的は信託不動産の一体的管理及び処分であり,信託期間中は信託財産より生ずる賃料などを配当として受け,信託終了時には信託財産の売却価格を配当として受けること,信託期間中は原則として受益権の譲渡や信託契約の解除ができないことが明記されていることにかんがみると,被告において,この点の説明義務違反は認められない。
(オ)信託終了時に,損益分岐点となる信託不動産の売却価格について説明する必要があるかについて検討する。
前記1(3)アイのとおり,サミットの購入は,不動産投資にあるのであるから,信託期間中の信託配当による利回りと信託終了時の売却価格による信託配当により委託者兼受益者の受領する金員が定まってくることは明白である。
また,前記1(3)エのとおり,サミットを借入金で購入した場合,最終収支が黒字となるか否かは,借入金の金額,借入金の利率,信託期間中の信託配当額,課税所得額,信託不動産の処分価格などの諸条件によって決まるが,最終収支が黒字となるためには,信託終了時に信託期間中の損失を上回るほどに信託不動産の売却によってキャピタルゲインを得ることが必要になる。
ところで,顧客それぞれの借入金の金額,所得金額などの個別事情によって定まる具体的金額はともあれ,上記の仕組みは,サミットの本質が不動産投資であること,信託期間中の賃料収益から信託配当を受け,信託終了時には売却価格による信託配当を受けることを説明していれば,顧客において,借入金によってサミットを購入した場合,借入金について利息の支払義務があることは当然知悉している事柄であり,上記の仕組みを理解することは容易であると考えられ,被告において,個々の顧客の借入金,課税所得額などに応じて,損益分岐点となる信託不動産の売却価格についてまで説明する義務があったと認めることはできない。
(オ)原告らは,契約を締結した当時,地価上昇率が鈍化し,地価が下落に向かう可能性があったことについても説明するべきであったと主張する。
前記1(3)アのとおり,サミットの本質は不動産投資にあるから,不動産市況の見通しについては,顧客においても重大な関心事であり,本来不動産を購入する者の責任において判断すべき事柄であって,被告において,契約を締結した当時,地価上昇率が鈍化し,地価が下落に向かう可能性があることについて説明する義務があったとは認められない。
また,前記(ウ)に判示したとおり,昭和63年及び平成元年当時は,被告を含め我が国の国民の大多数が,不動産の地価はさらに上昇する見通しを有しており,地価上昇率が鈍化したとしても,それは不動産を購入する好機と考えられていたのであって,被告において,地価が上昇することを述べたとしても,それは無理からぬことであったし,被告の見通しを述べたにすぎないものであり,被告がそれを保証
したという事実がないことは前記認定のとおりであるから,被告にこの点において,説明義務違反があったとは認められない。
(4)以上によれば,サミットパンフレットなどの一般的な検討において,被告に説明義務違反があったとは認められないが,次に,原告らそれぞれについて,個別の説明義務違反があるか否かを検討する。
3原告らの個別的事情による説明義務違反について
(1)原告A1について
ア証拠によれば,原告A1が,リンクを購入した経緯について,以下の事実が認められる。
(ア)原告A1は,預貯金により資産運用をしていると,利息が付いても10年後に約1.4倍になる程度で,インフレーションにより,実質的には預貯金が目減りしてしまうことを危惧し,資産を不動産の形で所有しておきたいと考えていたところ,昭和63年9月8日ころ,日本経済新聞に掲載された広告及び被告から送付されたリンクのダイレクトメールを読んで,リンクについて興味を持ち,被告に対し,リンクについて問い合わせをした(甲30,乙6(枝番を含む。),7の1,99,原告A1本人)。
(イ)原告A1は,同月12日,被告東京本部八重洲において,被告の不動産営業部員から,リンクについてのパンフレットを示されて,リンクについて説明を受け,所得税及び住民税対策のほか,最低1.4倍の値上がりを期待して,リンクを購入して被告に信託することを決意し,c購入希望申込書を提出した(甲8,30,乙4(枝番を含む。),33,99,原告A1本人)。
(ウ)原告A1は,自分の年収が給料860万円程度,不動産賃料収入600万円程度であり,妻の不動産の賃料収入が400万円程度であることから,多額のローンを組めるかどうか不安に思っていたが,ローンが組めなければ,原告A1において何ら違約金等を支払うことなく,売買契約を解除できることから,ひとまずアパートローンとして被告から8000万円を借り入れる計画で,同月24日,被告との間に,aの共有持分権について,売買契約を締結し(申込み即契約締結),その際,原告A1は,被告の担当者から,特約事項として,リンクの購入者は,本件共有持分権を被告に信託し,被告は,信託不動産を一体的に管理し,信託期間終了に伴い一体的に処分するとの記載を含む重要事項説明書について説明を受け,これを受領した(甲30,
乙1,34,98,原告A1本人)。
(エ)原告A1は,同年12月ころ,被告渋谷支店ローン相談課長であったH3(以下「H3」という。)から,ローンについての説明を受け,リンク購入にかかるアパートローンについては,生命保険を付けられず,リンク購入のために7500万円のローンを組んだ場合,ローンの返済額と年間収入を比較すると,1年間に227万5000円の損失が出るとの説明を受けた上で,同月19日,被告に対し,7500万円のアパートローンを組むことを申し込んだ(甲30,37,乙32,99,127,原告A1本人)。
(オ)原告A1は,平成元年1月20日,aの内覧会に出席し,同月26日,被告との間で,本件原告A1信託契約を締結した(乙23,119の5)。
イ(ア)前記ア(ア)(イ)のとおり,原告A1は,リンクのダイレクトメール及びパンフレットを取得し,被告からそれによって説明を受けているから,前記2に判示したところが,原告A1に当てはまり,基本的に原告A1に対する被告の説明義務違反は認められない。
(イ)ところで,原告A1は,多額のローンを組むことに不安があったところ,被告担当者H3において,信託期間終了時の本件共有持分権の売却によりローンが返済できると言われたから安心して本件各契約を締結したと主張し,また,原告A1本人は,aの信託を受けた被告において,Cに対して賃貸する賃料は,上昇していくとの説明を受けたから,本件共有持分権の価格も上昇していくと信じたと陳述(甲30)ないし供述している。
これに対し,H3は,ローンの返済について心配はない,賃料は必ず値上がりしていくなどと述べたことはないと陳述(乙113)している。
(ウ)証拠(乙6(枝番も含む。))によれば,リンクのダイレクトメールに封入された資料の中には,1共有持分権当たりの年額が,2年ごとに20万円ずつ上昇していくとの記載があること,証拠(甲11,乙38の1)によれば,被告とCが平成元年1月26日に締結したaについての賃貸借契約において,1共有持分権当たりの年額に換算すると,2年ごとに20万円ずつ上昇していくと定められていること,平成11年段階のaについての賃料は,同賃貸借契約に従った金額になっていることが認められる。
そうすると,被告において,原告に対し,aの転貸料は,年々上昇していくとの説明をしたと認められる。
また,前記ア(ウ)(エ)に認定したとおり,原告A1は,多額のローンを組めるかどうか不安に思い,かつ,H3から,リンク購入のために組むアパートローンについては,生命保険が付けられないとの説明を受けていたのに,結局,7500万円のアパートローンを組み,被告から同金員を借り入れてリンクを購入していることからすると,原告A1が7500万円のローンを組むに至った過程において,被告の担当者からローンの返済については心配ないという説明を受けていたことが推認される。
(エ)しかしながら,前記2(2)アのとおり,原告A1は,早稲田大学理工学部大学院を卒業した知識人であり,相応の年収も得ており,さらに,不動産を所有して高額の賃料収入を得ていたこと,前記ア(ア)(イ)のとおり,リンクのダイレクトメールを見た上で,リンクのパンフレットに基づき,リンクの仕組みについて説明を受け,さらに,本件A1売買契約書及び本件A1信託契約書にも,信託の目的は信託不動産の一体的管理及び処分であり,信託期間中は信託財産より生ずる賃料などを配当として受け,信託終了時には信託財産の売却価格を配当として受けること,信託期間中は原則として受益権の譲渡や信託契約の解除ができないことが明記されていることにかんがみると,原告A1は,リンクの本質が不動産投資にあることは当然に理解しており,不
動産市況によって,賃料や売却価格に変動が生ずることを理解していたと認められる。
そして,原告A1は,被告から,aの転貸料は年々上昇していくとの説明を受けているが,かかる説明は,現実に被告とCとの間において,そのような賃貸借契約を締結しており,実際に,その契約に従った転貸料を受領していたことからすると,何ら虚偽の説明ではないし,これによって本件共有持分権の価格の上昇や信託終了時の信託不動産の値上がりを保証したということは到底できない。
さらに,原告A1において,ローンは,信託期間終了時の本件共有持分権の売却代金で返済できるとの説明を受けていたとしても,本件全証拠によるも,被告において,それを保証したという事実を認めることはできないし,被告の担当者は,被告を始め多くの国民において,地価が将来にわたっても上昇を続けると予測していた当時の状況を背景にして,将来の見込みを述べたにすぎないのであり,サミットの購入が不動産投資であることを十分理解していた原告A1においては,将来の見込みにすぎないことを理解していたと考えられるし,同原告は,結局,不動産であるならば信託期間終了時において1.4倍以上の価値になるという自らの判断を基にリンクを購入したというべきであり,原告A1の個別的事情を検討しても,被告に説明義務違反がある
ということはできない。
ウ以上によれば,被告において,原告A1に対し,元本が保証されていることや信託終了時には信託不動産は値上がりすると断定的に説明したとは認められないから,被告には説明義務違反は存在しない。
(2)原告A2について
ア証拠によれば,亡Bが,リンクを購入した経緯及びその後の経緯について,以下の事実が認められる。
(ア)被告横浜支店従業員のH4(以下「H4」という。)は,昭和63年当時,亡B宅を月1回程度訪問していたところ,亡Bが,当時73歳で,相続税対策について不安を持っていたことから,亡Bに対し,相続税対策として,都心の事業用建物への不動産投資を勧めた。
その後,亡Bが,被告不動産営業部に対し,cの不動産共有持分権について問い合わせてきたため,H4は,被告横浜支店不動産部従業員と共に,亡B宅へ赴き,リーフレットやパンフレットに基づき,リンクについて説明した。
また,亡Bは,H4に対し,相続が発生した場合のことについて説明を求めたところ,H4は,相続が発生した場合には,売主であるCにおいて購入価格である1億円で買い取る制度が存在することなどを説明した(甲8,17,18,26,乙101,証人E)。
(イ)被告横浜支店従業員は,亡Bに対し,昭和63年9月6日,リンク報告書を交付したが,リンク報告書には,信託期間中の受益権譲渡について,やむを得ない事情により,被告が承諾する場合のみ可能であり,やむを得ない場合に限り購入価格(1億円)にてCが買戻しをするという買取り制度が存在することが記載されていた(甲18,26,乙101,証人E,証人E3)。
(ウ)亡Bは,Eと共に,被告横浜支店において,同月20日,被告から,重要事項説明書について説明を受けた上で,相続発生時にはCが1億円で買い取る制度があることも動機となって,被告との間で,本件A2売買契約を締結した。
その際,亡Bは,被告従業員らに対し,やむを得ない場合の買取り制度について,書面にして確認するよう求めたが,被告従業員らは,買取り制度が存在することを前提にして,被告を信用してください,税法上文章化することはできないため,被告において,書面化することはできないなどと言って,結局,書面化することはしなかった(甲17,18,26,乙42,証人E)。
(エ)亡Bは,平成元年1月26日,被告との間で,本件A2信託契約を締結した(甲7)。
(オ)亡Bは,信託期間中の平成9年11月20日,死亡した(甲26,乙104,証人E,証人E4)。
(カ)Eは,亡Bが死亡した後,被告開発不動産業務部不動産信託チーム課長代理H5(以下「H5」という。)及び被告横浜支店担当者E4(以下「E4」という。)に対し,本件A2信託契約締結時に説明のあった,デベロッパーである売主が購入価格で信託不動産を買い取る買取り制度についての適用を求め,1億円で買い取るように要求したが,H5及びE4は,そのような約束は存在しないと返答した(甲26,40,41,乙42,104,証人E,証人E4)。
(キ)E及び原告A2は,被告に対し,平成11年11月15日,本件A2信託契約締結時に買取り制度の説明を受けていたことから,亡Bが死亡したときに同制度を亡Bに適用するように求め,その際,全国的な地価の下落をも考慮し原告A2において譲歩して,1億円ではなく6600万円から6700万円で買い取るよう求めたのに,被告はEの申出を断ったとして,原告A2に対しては,個別対応をするように求めた。
これに対し,被告は,E及び原告A2に対し,同年12月6日,本件A2信託契約締結時に,元値保証をするなどといったこともなく,本件A2信託契約は,信託不動産の共有持分権を一体的に管理処分することを信託目的としているので,顧客ごとに,個別対応することはできないと返答した(甲26,39,41,乙42,証人E
)。
イ(ア)前記ア(ア)(イ)のとおり,亡Bは,リンクのパンフレット及びリーフレットを取得して,被告からそれによって説明を受けているから,前記2に判示したところが,亡Bに当てはまり,基本的に亡Bに対する被告の説明義務違反は認められない。
(イ)ところで,原告A2は,被告が,亡B及びEに対し,本件A2売買契約を締結する過程において,リンクについて,相続発生時に,売主であるCにおいて,購入価格である1億円で買い取る制度がある旨を説明をしたことが説明義務違反に当たると主張する。
(ウ)前記1(4)ウに判示したとおり,買取り制度については,被告が,売主に対し,購入価格である1億円で買い取らせる義務を負っていたものであると解することができず,また,被告において,地価の上昇を予想して,買主の相続又は破産という事情を考慮して時価ではなく購入価格である1億円で売主に買い取らせる制度を設けたものにすぎないのであるが,証拠(甲17,18)によれば,被告横浜支店従業員が亡Bに交付したリンク報告書には,「やむを得ない場合に限り購入価格(1億円)にてCが買戻しをします。」と断定的記載がされており,サミット内部資料においても,「買取保証付の投資用不動産については相続財産の評価の際,購入価格で評価されることになり,相続メリットが享受できない場合もおこりえます。」とあり,買取保証
という表現が用いられていること,リンク報告書の末尾には,亡Bが被告の説明内容について,税法上,買取り制度は,文章化できないが,受託者とCとの間で文章で確認されていること,やむを得ない場合には,Cが元本1億円で買い戻すことを被告の説明で確認したとの記載がされていることが認められ,かかる事実からすると,被告の担当者が,亡Bに対し,本件A2売買契約に当たり,相続が発生した場合には,Cが本件共有持分権を購入価格である1億円で買い取るとの断定的説明をしたと推認される。
さらに,買取り制度は,被告において,地価の上昇を念頭に置いて,本件共有持分権の時価が上昇している場合であっても,時価ではなく購入価格である1億円でデベロッパーに買い取らせる制度として設けたものにすぎないとしても,前記2(3)ア(ウ)fに判示したとおり,昭和63年及び平成元年当時,被告を始め多くの国民において,地価は将来にわたっても上昇を続けると予測しており,地価が将来下落に至ることは予想し得なかったという当時の状況を考えると,被告において,買取り制度が本件共有持分権の時価が低下した場合には適用されない制度であると説明したとは到底考えられない。
(エ)そうすると,被告は,亡Bに対し,本来買取り制度は,被告において買取り義務を発生させるものではないのに,相続が発生した場合,Cに対し1億円で買い取らせることを断定的に説明し,本件共有持分権が購入価格を下回ったときには買取り制度が適用されないのにそれを正しく説明しなかったことにおいて,被告の説明義務違反が認められる。
そして,前記ア(ア)(ウ)のとおり,相続が発生した場合の相続税の負担を不安に思っていた亡Bは,被告の上記の説明が動機になってリンクを購入し,前記ア(カ)のとおり,Eは,亡Bが死亡した後,被告に対し,購入価格1億円で信託不動産を買い取ることを求めたが,被告はそのような約束は存在しないとして買取りに応じなかったのであるから,被告は,説明義務違反に基づき,原告A2が被った損害
を賠償する責任がある。
ウ前記第2,1(3)のとおり,亡Bは,リンクを1億円で購入し,原告A2は,信託終了時において1399万0001円を受領したから,原告A2は,その差額である8600万9999円の損害を被ったというべきである。
そして,弁護士費用としては,同損害の約7パーセントに相当する600万円が相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。
したがって,原告A2は,被告に対し,説明義務違反による不法行為に基づき,9200万9999円の損害賠償請求権を有する(なお,原告A2は,説明義務違反を理由とする債務不履行又は不法行為を選択的に主張して損害賠償を請求していると解されるから,弁護士費用の損害賠償請求が認められる不法行為請求を認めることとするが,その余の請求については,債務不履行を理由としても認められない。)。
(3)原告A3について
ア証拠によれば,原告A3が,リンクを購入した経緯について,以下の事実が認められる。
(ア)原告A3は,昭和63年9月当時,相続税対策のほか,所得税及び住民税対策をしたいと考えていたところ,原告A3自身が理事長を務める医療法人の顧問税理士であったM税理士の紹介で,被告池袋支店従業員H6(以下「H6」という。)と会い,H6から,リンクのパンフレットに基づき,リンクについて説明を受けた(甲28,乙4(枝番を含む。),21,90,原告A3本人)。
(イ)原告A3は,被告に対し,同月13日,リンクの購入資金として9000万円,eを購入するための資金として6000万円の合計1億5000万円を借り入れることを申し込み,同月20日,同金員を借り入れ,eを購入した(乙10,20の1,原告A3本人)。
(ウ)原告A3の妻は,原告A3を代理して,被告との間に,同月20日,被告池袋支店において,本件A3売買契約を締結したが,その際,被告の担当者から,重要事項説明書について説明を受け,これを受領した(甲28,乙1,22,120の1,原告A3本人)。
(エ)原告A3の妻は,平成元年1月19日,c内覧会に出席した(甲28,乙23,原告A3本人)。
(オ)原告A3は,同月26日,被告との間で,被告池袋支店において,本件A3信託契約を締結した(甲28,乙119の1,原告A3本人)。
イ(ア)前記ア(ア)のとおり,原告A3は,リンクのパンフレットを取得しており,被告からそれによって説明を受けているから,前記2に判示したところが,原告A3に当てはまり,基本的に原告A3に対する被告の説明義務違反は認められない。
(イ)原告A3は,被告担当者から,大きく借金をすることが相続税対策となると勧められて,合計1億5000万円の借金をし,この返済については,信託期間終了時の本件共有持分権の売却によって容易に返済できるからと言われたので,借入金の返済について元本据置一括払方式を選択し,また,不動産信託については,貸付信託と同じようなものであるとの説明を受けて,元本保証があるかのような説明をされたと主張し,原告A3本人はこれに沿う陳述(甲28)ないし供述をしている。
(ウ)しかしながら,前記2(2)ウのとおり,原告A3は,東京大学及び東京歯科大学で教育を受け,東京歯科大学を卒業して医療法人の院長を務め,高額の年収を有する知識人であり,多数の不動産を有し,賃貸物件の管理等を業務とする会社まで設立していた者であること,前記ア(イ)のとおり,リンクのパンフレットに基づき,リンクの仕組みについて説明を受けたこと,前記ア(ウ)(オ)のとおり,本件A3売買契約書及び本件A3信託契約書の交付を受け,原告A3の妻において重要事項説明書の交付と説明を受けていることを考えると,原告A3は,リンクについて,購入した信託不動産の共有持分権を信託して,一体的に管理処分し,信託期間終了時において,一括して売却して,その売却代金を受け取るというもので,本質的には不動産投資であるこ
とは容易に理解できたと考えられるし,不動産投資には元本保証はなく,不動産市況によって本件共有持分権の売却価格に変動が生ずることを当然理解しており,原告A3において,リンクを貸付信託と同様,元本保証がある商品であると誤解することはなかったと認められる。
また,被告担当者が原告A3の1億5000万円の借入金について,信託終了時の売却価格で容易に返済できると述べたとしても,被告担当者がそのことを保証したものではなく,被告において将来の見通しを述べたにすぎないものであり,リンクが不動産投資であることを理解していた原告A3において,そのことを十分理解していたと考えられる。
ウ以上によれば,被告の担当者において,原告A3に対する説明義務違反は認められない。
(4)原告A4について
ア証拠によれば,原告A4が,リンクを購入した経緯について,以下の事実が認められる。
(ア)被告阿倍野橋支店担当者H7(以下「H7」という。)は,当時約3600万円の所得を有し,所得税及び住民税対策に関心のあった原告A4に対し,昭和63年9月ころ,リンクについて,パンフレット及びサミット内部資料に基づき,商品内容を説明して購入を勧誘した(甲17,27,乙6(枝番を含む。),30,95,原告A4本人)。
(イ)原告A4は,H7に対し,同月16日,購入申込書兼印鑑届を提出し,同月26日,被告との間で,本件A4売買契約を締結し,その際,重要事項説明書の説明と交付を受けた(甲27,乙1,31,95,120の4,原告A4本人)。
(ウ)原告A4は,被告から,平成元年1月26日,リンクの購入資金として1億円を借り入れ,被告との間で,本件A4信託契約を締結した(乙119の4)。
イ(ア)前記ア(ア)のとおり,原告A4は,リンクのパンフレット及びサミット内部資料に基づき説明を受けているから,前記2に判示したところが,原告A4に当てはまり,基本的に原告A4に対する被告の説明義務違反は認められない。
(イ)原告A4は,同原告がリンクを購入したのは,被告担当者から,リンクが相続税対策になり,危険性もないと説明されたからであると主張し,原告A4本人も,cは,土地が安いときに買っているし,渋谷駅に近いから,絶対に値下がりすることはないと言われたし,元本保証のある安全な商品であると思ったとこれに沿う陳述(甲27)ないし供述をしている。
(ウ)リンクのパンフレットには,cは,立地条件の良いビルであるなどの記載があるから,被告の担当者においても,cが立地条件が良く,地価の値上がりが見込めるビルであるという説明をしたことを推認することができる。
しかし,被告担当者がそのことを保証したものではなく,被告において将来の見通しを述べたにすぎないものであるし,他方において,前記2(2)エのとおり,原告A4は,大阪大学医学部を卒業した開業医であり,大阪府医師会の理事等を務め,高額の年収を有する知識人であり,多数の不動産,多額の有価証券等を有していること,前記ア(ア)のとおり,原告A4は,リンクのパンフレット及びサミット内部資料に基づき,リンクの仕組みについて説明を受け,重要事項説明書の交付と説明を受け,本件A4売買契約書及び本件A4信託契約書の交付を受けていることを考えると,原告A4は,リンクが,不動産共有持分権を購入して信託し,被告において一体的に管理及び処分するもので,信託期間終了時の最終配当は,その時点での信託不動産の売却価格
に左右されるものであり,その本質は不動産投資であることは容易に理解できたと考えられるし,不動産投資には元本保証はなく,不動産市況によって共有持分権の売却価格に変動が生ずることをも当然理解しており,原告A4において,元本保証がある商品であると誤解することはなかったと認められる。
ウ以上によれば,被告において,原告A4に対する説明に義務違反があると認めることはできず,原告A4の主張は理由がない。
なお,原告A4は,サミット内部資料に基づいて説明を受けているが,前記1(4)ウに判示したとおり,リンクには,一般的に元本保証としての買取り制度が存在したとは認められず,原告A4には,亡Bと異なり,相続が発生していないから,相続時の買取り制度についての説明義務違反も認められない。
(5)原告A5について
ア証拠によれば,原告A5が,リンクを購入した経緯について,以下の事実が認められる。
(ア)被告岡山支店従業員H8(以下「H8」という。)は,平成元年9月下旬ころ,原告A5が経営する医療法人と原告A5個人の顧問税理士を務めていた0税理士と共に,原告A5を訪れ,原告A5及びその妻に対し,リンクのパンフレットを示しながら,リンクについて説明を行った(甲31,乙18の1,93,証人M)。
(イ)原告A5らは,H8に対し,平成元年10月5日,リンクc購入希望申込書を提出し,同申込書には,原告A5の年収は約4000万円,購入目的は,所得税対策と値上がり期待であると記載されていた(乙28,93)。
(ウ)原告A5らは,H8に対し,同年11月2日,購入申込書兼印鑑届を提出し,原告A5は,被告との間で,同日,本件A5売買契約を締結し,重要事項説明書の説明と交付を受けた(乙2,29,105,120の3)。
(エ)原告A5は,被告との間で,同年12月19日,本件A5信託契約を締結した(乙120の3)。
イ(ア)前記ア(ア)のとおり,原告A5は,リンクのパンフレットに基づき説明を受けているから,前記2に判示したところが,原告A5に当てはまり,基本的に原告A5に対する被告の説明義務違反は認められない。
(イ)原告A5は,リンク購入に当たり,被告から,危険性の説明を受けず,地価が下落することは絶対にないから,借入金については,満期時に売却代金を充当して返済できるなどとの説明を受けて契約を締結したと主張し,証人Mは,これに沿う陳述(甲31)ないし証言をしている。
(ウ)リンクのパンフレットには,cは,立地条件の良いビルであるなどの記載があるから,被告の担当者においても,cが立地条件が良く,地価の値上がりが見込めるビルであるという説明をしたことを推認することができる。
しかし,本件全証拠によるも,被告担当者が本件共有持分権の時価の上昇や売却代金によって借入金を返済できることを保証したとは認めることはできず,被告担当者は,いずれも将来の見通しを述べたにすぎないものと認められるし,他方において,前記2(2)オのとおり,原告A5は,岡山大学医学部を卒業して医療法人の院長をしており,高額の年収を有する知識人であり,不動産及び有価証券等を有していること,原告A5の妻も津田塾大学数学科を卒業した知識人であること,前記ア(ア)(ウ)(エ)のとおり,原告A5は,リンクのパンフレットに基づき,リンクの仕組みについて説明を受け,重要事項説明書の交付と説明を受け,本件A5売買契約書及び本件A5信託契約書の交付を受けていることを考えると,原告A5は,リンクが,不動産共有持分権
を購入して信託し,被告において一体的に管理及び処分するもので,信託期間終了時の最終配当は,その時点での信託不動産の売却価格に左右されるものであり,その本質は不動産投資であることは容易に理解できたと考えられるし,不動産投資には元本保証はなく,不動産市況によって共有持分権の売却価格に変動が生ずることをも当然理解しており,原告A5において,元本保証がある商品であると誤解することはなかったと認められる。
ウ以上によれば,被告において,原告A5に対する説明義務違反があったと認めることはできず,原告A5の主張は理由がない。
(6)原告A6について
ア証拠によれば,原告A6が,ゲインを購入した経緯について,以下の事実が認められる。
(ア)原告A6は,昭和63年当時,P銀行からゲインと同種の商品であるメッツという商品について勧誘を受け,これを購入しようとしたが,P銀行から,メッツの購入はくじ引きになると言われた。
そこで,原告A6は,被告が販売していたゲインについてはダイレクトメールで知り,被告岡山支店の担当者H9(以下「H9」という。)にメッツの購入がくじ引きになることを話したところ,被告においては,ゲインの申込みをすれば,必ず売却するという対応であったため,これを購入することとした。
原告A6は,既にP銀行から説明を受けて,ゲインと同種の商品であるメッツの仕組みや借入金利息を損益通算できることによる所得税の節税効果の仕組みについても知っていたため,H9は,原告A6に対し,ゲインについて詳細な説明はしなかっ
た(甲29,乙13,19(枝番を含む。),26,92,原告A6本人)。
(イ)原告A6は,被告との間に,平成元年1月28日,本件A6売買契約を締結し,重要事項説明書の説明と交付を受けた(甲19,29,乙3,92,105,乙120の2,証人成田,原告A6本人)。
(ウ)原告A6は,同年3月16日,被告から1億円を借り入れ,被告との間で,本件A6信託契約を締結した(甲20,29,乙27,106,119の2)。
(エ)原告A6は,同月23日には,P銀行から,メッツを購入した(甲29,乙13,原告A6本人)。
イ(ア)前記ア(ア)のとおり,原告A6は,ゲインのダイレクトメールを取得し,これを読んで,被告にゲインの購入の申込みをしているから,前記2に判示したところが,原告A6に当てはまり,基本的に原告A6に対する被告の説明義務違反は認められない。
原告A6本人は,ゲインのダイレクトメールを受け取ったことがないと陳述(甲29)ないし供述しているが,証拠(乙26)によれば,原告A6は,dビルの購入申込書において,ゲインを知ったきっかけとして,ダイレクトメールであると記載していることが認められ,原告A6本人の前記陳述及び供述は採用できない。
(イ)原告A6は,ゲインを購入するに際し,被告から危険性についての説明は受けていないと主張し,原告A6本人は,被告担当者から本件共有持分権が毎年7パーセント以上上昇して,信託期間終了時には倍になると言われたなどと陳述(甲29)ないし供述している。
(ウ)ゲインのダイレクトメール(乙19(枝番を含む。))には,dビルについて,立地条件が良いという趣旨の記載があるし,サミット内部資料(甲17)には,相続メリットを試算した記載があり,10年後の本件共有持分権の時価が,1.97倍となり,路線価が約1億円となるとの記載もあるから,被告担当者において,本件共有持分権の価格について,毎年7パーセント以上上昇して,信託期間終了時には倍になると述べたことが推認されないわけではない。
しかし,前記2(3)ウに判示したとおり,被告が信託期間終了時の本件共有持分権の時価の上昇率を7パーセントと保証したり,断定したことを認めることができず,被告として将来の見通しを述べたにすぎないものであるし,他方において,前記ア(エ)及び前記2(2)カのとおり,原告A6は,岡山大学医学部を卒業して医院を開業しており,高額の年収を有する知識人であり,多数の不動産と有価証券等を有し,ゲインの購入とほぼ時を同じくして,P銀行からメッツを購入しており,また,ゲイン購入後多数回にわたって不動産の購入と売却を繰り返している者であること,前記ア(ア)(ウ)(エ)のとおり,原告A6は,ゲインのダイレクトメールを取得し,重要事項説明書の交付と説明を受け,本件A6売買契約書及び本件A6信託契約書の交付を受けているこ
とやP銀行からメッツの仕組みについての説明を受けていることを考えると,原告A6は,ゲインが,不動産共有持分権を購入して信託し,被告において一体的に管理及び処分するもので,信託期間終了時の最終配当は,その時点での信託不動産の売却価格に左右されるものであり,その本質は不動産投資であることは容易に理解できたと考えられるし,不動産投資には元本保証はなく,不動産市況によって共有持分権の売却価格に変動が生ずることをも当然理解しており,原告A6において,ゲインが元本保証がある商品であると誤解することはなかったと認められるし,被告担当者が本件共有持分権について,毎年7パーセント以上上昇して,信託期間終了時には倍になると述べたとしても,被告として将来の見通しを述べたにすぎないものであり,被告が
信託期間終了時の本件共有持分権の時価の上昇率を7パーセントと保証したり,断定したと誤解をすることはなかったと認められる。
ウ以上によれば,被告において,原告A6に対する説明義務違反があったと認めることはできず,原告A6の主張は理由がない。
4信託契約違反について
(1)原告らは,まず,信託不動産の受託者である被告は,善管注意義務及び誠実義務を負っているところ,被告がこれらに基づいて具体的に負うべき義務の内容については,信託契約書の文言から形式的に解釈するのではなく,原告ら委託者兼受益者が被告に対し本件共有持分権を信託した意図ないし目的である「資産の保全」に適合するように解釈されるべきであり,そうすると,被告は,原告らの損害が拡大することを防止する義務を負っているというべきであり,本件において,損害拡大防止義務の具体化として,不動産市況に応じて信託不動産の管理方法変更義務を負っていたと主張するので検討する。
ア原告らから本件共有持分権の信託を受けた被告は,信託法第20条に基づき,信託の本旨に従って善良な管理者の注意をもって信託事務を処理する義務(善管注意義務)を負っており,信託法第4条は,「受託者ハ信託行為ノ定ムル所ニ従ヒ信託財産ノ管理又ハ処分ヲ為スコトヲ要ス」と定めているから,受託者である被告は,信託行為によって定められた内容に従って信託財産を管理処分することにおいて,善管注意義務を負っているというべきである。
なお,原告らは,善管注意義務とは別に誠実義務をも主張するが,原告らが主張する損害拡大防止義務が被告の義務として導かれるか否かは,善管注意義務の具体的内容として判断すれば足りるのであり,本件において,誠実義務を問題とする必要はないと考えられる。
イ前記第2,1(2)ウ,(6)ウ,(7)ウ及び証拠(甲7,乙119(枝番を含む。))によれば,本件原告ら信託契約では,信託の目的を信託不動産にかかわる共有持分権の一体的管理及び管理終了に伴う一体的処分と定め,信託期間である約11年間(aについては平成元年1月26日から平成12年3月15日まで,bについては平成元年12月19日から平成12年3月15日まで,dビルについては平成元年3月16日から平成12年5月16日まで),被告は,信託不動産の管理業務を行い(ただし,デベロッパーに管理業務を委託できる。),デベロッパーに対して,被告が相当と認める条件で信託不動産を一体として賃貸し,被告は,収支計算書を作成して原告らに報告するとともに,賃料収益から原告らに対し収益を支払い,被告は,信託期間満了
時に被告が定める価格(被告が指定する不動産鑑定業者による不動産鑑定評価額を基準とする。)及び方法により信託不動産を一体として売却し,信託終了時に残存する信託の元本は,最終計算の承認を得た後,金銭をもって原告らに交付することが定められていたことが認められる。
そうすると,本件原告ら信託契約における信託行為によって定められた被告の義務は,信託不動産の一体的管理と賃貸,収支計算書の作成報告と収益の支払,信託期間満了時の信託不動産の一体的売却と金銭の交付であるというべきであるから,被告は,この範囲で善管注意義務を負い,不動産市況に応じて信託不動産の管理方法の変更を行い,原告らの損害が拡大することを防止する義務を負っていたということができない。
ウ原告らは,原告ら委託者兼受益者が被告に対し本件共有持分権を信託した意図ないし目的は,「資産の保全」であり,信託不動産の一体的管理及び処分は,資産の保全という目的を達成するための手段にすぎず,資産の保全に適合するように善管注意義務も解釈されるべきであると主張する。
(ア)前記2(3)ア(ウ)に判示したとおり,サミットパンフレットには,資産の保全という言葉が数多く使用されているが,サミットパンフレットにおいて記載されている資産の保全の内容は,予算に合わせて共有持分権を購入できること,返済計画に合わせてローンを選択設定できること,C又はDが信託不動産を一括して借り上げるため,オーナーに手間が一切かからないように運営がシステム化されていること,共有持分権を信託することによる信託配当は不動産所得となって,その所得金額は他の所得と損益通算ができること,相続の際には共有持分権を実勢価格より低い路線価格で評価されること,資産の保全とは被告に信託されるので長期にわたって資産価値を維持できること,最終配当は持分割合に応じて確実に売却代金を受け取ることができるこ
とであり,また,資産の保全に将来の大きな資産の形成といわれている内容が含まれるとしても,それは,約11年後の信託期間満了時における売却益の期待や将来的に有利な条件で売却できる可能性があるという事柄であって,信託期間にかかわらず不動産市況に応じて信託不動産の資産の保全を図るということを意味するものではないし,本件原告ら信託契約からも,そのような趣旨を読みとることができないのは前記イのとおりであるから,原告らが被告に対し本件共有持分権を信託した意図ないし目的が信託期間にかかわらず不動産市況に応じて信託不動産の資産の保全を図るという趣旨であったと認めることはできない。
(イ)仮に,原告らが被告に対し信託したそれぞれ個人の意図ないし目的が信託期間にかかわらず不動産市況に応じて信託不動産の資産の保全を図るという趣旨であるとしても,かかる意図ないし目的は,およそ本件原告ら信託契約の内容にもなっておらず,サミットパンフレットからも読み取ることができず,さらに,被告に対し信託をした原告ら以外の委託者兼受益者の意図ないし目的が同一であるとすることもできないし,また,原告ら個々人の意図ないし目的により善管注意義務の内容を決するべきとすることは,信託契約の当事者間において,何を信託の目的として権限を行使するべきかの基準を曖昧にし,信託契約で定めた権限を行使するか否かについての判断も困難にするものであるから,このような原告らの意図ないし目的によって,善管注意
義務の内容を決するべきであるとの原告らの主張は採用することはできない。
エ次に,原告らは,信託法第23条を根拠に,信託行為の当時予見することができなかった特別の事情が発生し,信託行為の定めに従って信託財産の管理を続けることが委託者兼受益者の利益に適しなくなった場合には,受託者である被告は,裁判所に信託財産の処分も含め,信託財産の管理方法の変更を請求する義務を負うと主張する。
(ア)しかしながら,信託法第23条は,信託行為の当時予見することのできない特別の事情により,信託財産の管理方法が委託者兼受益者の利益に適さなくなった場合に,管理方法の変更を裁判所に請求することができる旨を定めた規定であり,受託者において,そのような場合に信託財産の管理方法の変更を裁判所に請求する義務を負うことまで定めた規定とは解されない。
(イ)また,信託行為の当時予見することのできない特別の事情により,信託財産の管理方法が委託者兼受益者の利益に適さなくなった否かは,信託契約を前提にして契約の目的を達成することができなくなったかという観点から検討すべきものであり,前記イのとおり,本件原告ら信託契約において,信託の目的は信託不動産の一体的管理及び処分であるから,本件全証拠によるも,これが信託行為の当時予見することのできない特別の事情により不可能となり,信託財産の管理方法が委託者兼受益者の利益に適さなくなったということはできない。
オさらに,原告らは,本件共有持分権を取得した平成元年当時の近隣地価の指数を100とした場合,同2年の指数は104,同3年の指数は107であったが,同4年は100,同5年は76,同6年は51,同7年は36,同8年は26,同9年は24,同10年は24,同11年は22と著しく下落しており,不動産市況の回復の見込みは絶望的であったから,信託目的の達成が不可能になって信託は終了したとし,仮に,信託の目的を達することができないといえないまでも,被告は,平成4年末,平成5年末及び平成9年の各段階において,管理変更義務を負ったと主張する。
(ア)まず,前記イのとおり,本件原告ら信託契約において,信託の目的は信託不動産の一体的管理及び処分であるから,不動産の地価が下落していたことをもって,本件原告ら信託契約における信託目的の達成が不可能になって信託は終了したとは到底いうことができない。
(イ)証拠(甲11)によれば,平成元年から平成11年まで,原告らの主張のとおり,不動産の時価の指数が推移していることが認められるが,平成4年から平成11年にかけて続いた地価の下落の途上において,不動産市況は底であり,今後は回復に向かうとの見解が存在したことは十分考えられ,本件共有持分権を購入し被告と信託契約を締結した顧客らの中において,不動産市況の見通しについて,さらに下落すると予想する者もいれば,もはや底であり回復すると予想する者もいたことは,容易に想像されることであって,そのように種々の見通しを有する者から,不動産共有持分権の信託を受け,これを一体的に管理及び処分する契約を結んでいた被告において,原告らが主張するように,平成4年末,平成5年末,平成9年末の各段階において,
信託不動産を一体として売却するなどの管理変更義務を負ったということはできない。
平成4年末,平成5年末,平成9年末の各段階において,引き続き地価が下落することは明白であり,被告において不動産市況が回復しないことを認識し得たから,管理方法を変更する義務があったというのは,結果論にすぎない。
カ以上によれば,被告の善管注意義務,誠実義務違反,損害拡大防止義務違反,管理方法変更義務違反をいう原告らの主張は理由がない。
(2)次に,原告らは,被告が,本件各信託契約を締結したすべての委託者兼受益者を平等に扱う義務を負うところ,一部の委託者兼受益者についてのみ,信託期間の中途での受益権の譲渡を認めて損切りをさせ,原告らに対し,その事実を告知せず,中途売却の機会を喪失させたのは,平等義務に反すると主張し,一方,被告は,それぞれ別個の契約である被告と委託者兼受益者の信託契約に基づき,被告において,委託者兼受益者相互間を平等に取り扱う義務はないと主張するので,この点について検討する。
ア前記第2,1(8)(9)(10)のとおり,被告との間で,a信託契約を締結した顧客は20名,b信託契約を締結した顧客は16名,dビル信託契約を締結した顧客は34名存在するところ,前記1(1)ア,(3),(4)イのとおり,デベロッパーから本件共有持分権を購入した顧客は,被告に対し,必ず本件共有持分権を約11年間信託することが決められており,しかも,信託期間中,委託者兼受益者には,原則として受益権譲渡が認められず,信託契約を解除することも認められておらず,信託財産の管理処分については,受託者に委ねられて,被告において信託不動産を一体的に管理及び処分することになっており,委託者兼受益者の受益権の処分は制限されていたことが認められる。
イそして,前記1(4)イのとおり,複数の委託者兼受益者を前提とする本件信託契約において,委託者兼受益者の受益権の処分を制限し,被告において信託不動産を一体的に管理及び処分することにしたのは,複数の委託者兼受益者全体の利益を保護するという観点から合理性が認められるが,一方,各委託者兼受益者との間の本件各信託契約は同一の内容であり,本件各信託契約において,委託者兼受益者の受益権の処分を制限した受託者としては,委託者兼受益者相互を平等に取り扱う義務を負うと解するのが相当であり,被告は,別個の委託者兼受益者との間に信託契約を締結したことを理由に,委託者兼受益者を平等に取り扱う義務はないとの被告の主張は採用できない。
ウところで,前記第2,1(8)(9)(10),前記1(1)キの各事実及び証拠(甲45,50(枝番を含む。),51ないし53,乙43ないし89,91,94,103,証人E5,証拠確認)によれば,サミットは,販売当初は,相続や破産の発生などやむを得ない事情がある場合に,被告から許可を受けて信託期間中に受益権を譲渡する以外は,一切受益権の譲渡ができない商品であったが,被告東京不動産営業部は,平成8年ころから,サミットについて,相続や破産の発生などのやむを得ない事情がある場合でなくても,委託者兼受益者が,不動産投資の適格を持つ投資家に対し,信託不動産の共有持分権を譲渡し,譲受人が被告と新たに,本件各信託契約を結ぶ場合には,被告と委託者兼受益者との間で本件各信託契約を解除することを認めることとしたこ
と,被告において,委託者兼受益者に対し,中途売却を望むか否かを確認し,これを望んだ場合には,買主を探すサービスをすることとなり,aについては別紙a受益権譲渡人欄記載のとおり9名が,bについては別紙b受益権譲渡人欄記載のとおり12名が,dビルについては別紙dビル受益権譲渡人欄記載のとおり22名が,共有持分権を売却して,被告との間の信託契約を解約し,第三者に受益権を売却し,新たに各受益権譲受人らが被告との間で,共有持分権について本件信託契約を締結したこと,受益権譲受人としては,G及びFが多数を占めており,G及びFは被告の不動産営業部の取引先であり,被告の役員がG及びFの役員となったり,被告を退職した従業員がG及びFの従業員となっていることが認められる。
エ前記ウの事実によれば,委託者兼受益者が,被告に対し,受益権の譲渡又は信託契約の解約を求めてきた場合に,委託者兼受益者によって,特定の委託者兼受益者についてのみ,受益権の譲渡を認め,他の委託者兼受益者については,受益権の譲渡を認めないという恣意的な対応を取ったり,同一時期に受益権の譲渡を求めてきた顧客について,特定の委託者兼受益者については,受益権の譲渡先の紹介を行うが,他の委託者兼受益者については,受益権の譲渡先の紹介を行わないという恣意的な対応を取ることは,平等義務に反すると解される。
また,前記のとおり,サミットは,相続や破産の発生などやむを得ない事情がある場合にだけ,被告から許可を受けて信託期間中に受益権を譲渡するできる商品であったから,被告において,相続や破産の発生
などのやむを得ない事情がある場合でなくても,委託者兼受益者が,不動産投資の適格を持つ投資家に対し,信託不動産の共有持分権を譲渡し,譲受人が被告との間に,新たに本件信託契約を結ぶ場合には,被告と委託者兼受益者との間で本件信託契約を解除することを認めることとしたのであるから,この取扱いの変更について,委託者兼受益者に知らせることなく,委託者兼受益者に受益権の譲渡を行う機会を奪った場合には,平等義務に違反するというべきである。
オもっとも,委託者兼受益者が,受益権の譲渡を求めてきた時期によっては,経済情勢の変動が原因となって,受益権の譲渡先を紹介できなかったり,また,紹介できたとしてもその買取り価格が異なるのはやむを得ないことであって,このように対応が異なった場合に平等義務に反しているということはできないし,また,受益権の譲渡先を紹介した後,委託者兼受益者と譲渡先の間で,買取り価格等の条件が折り合わず,結局受益権の譲渡にまで至らなかったりしても,平等義務に反しているということはできない。
また,被告が,委託者兼受益者に対し,従前の取扱いを変更して受益権の譲渡が可能になったことを通知する方法は,被告の裁量によるものと考えられるのであり,被告が取扱いの変更を文書で連絡しなかったことをもって違法とすること
はできない。
カなお,被告は,受益権の譲渡は,売主と買主の間の相対取引であり,受託者である被告にとっては関係のない事柄であると主張するが,前記のとおり,被告が,本件各信託契約における従前の取扱いを変更し,相続や破産の発生などのやむを得ない事情がある場合でなくても,委託者兼受益者が,不動産投資の適格を持つ投資家に対し,信託不動産の共有持分権を譲渡することを認め,委託者兼受益者に対し,本件各共有持分権の譲受人として,被告の関係する会社を紹介していること,本件各共有持分権の譲受人が本件各信託契約を結ぶことを条件として,本件各信託契約の解除に応じていることからすると,被告に無関係の事柄であるということは到底できず,被告の主張は認められない。
キ以上によれば,被告において,委託者兼受益者に対し,従前の取扱いを変更して信託契約を解除して受益権を譲渡することが可能となったことを伝えて,受益権譲渡の機会を与えるとともに,委託者兼受益者にやむを得ない事情がなくても受益権の譲渡を承諾した平成8年以降は,委託者兼受益者において,本件共有持分権の中途売却を求めてきた場合には,経済情勢等から可能な限り,受益権の譲渡先を紹介し,条件がまとまれば,受益権の譲渡を承諾して,委託者兼受益者を平等に取り扱う義務を負っていたと解するのが相当である。
かかる観点から,被告が,原告らに対し,平等義務違反の行為があったか否かを個別に検討することにする。
5原告らの個別的事情による平等義務違反について
(1)原告A1について
ア証拠によれば,原告A1がリンクを購入してからの経緯について,以下の事実が認められる。
(ア)原告A1は,被告から,平成8年にaについての信託不動産状況報告書を受領した(甲11,30,弁論の全趣旨)。
(イ)原告A1は,平成8年ころ,共同所有者から,所有しているビルの2フロア分の売却の打診を受けており,2フロアの売却によって譲渡益が出るため,本件共有持分権の売却による損失と損益相殺することを考えていた。
そこで,原告A1は,不動産の顧問税理士に相談した上で,平成9年5月2日,被告渋谷支店に赴き,a分の共有持分権の価格について尋ねるとともに,本件共有持分権の中途売却について尋ねた。
被告渋谷支店担当者H1(以下「H1」という。)は,不動産市況が低迷しているため,信託終了時には,損失が出る見通しであること,原告A1が希望するのであれば,本件共有持分権の買手探しに協力することを伝え,また,後日,原告A1の妻に対し,他の顧客の売却事例として,6000万円から6500万円であったと報告し
,その際にも,本件共有持分権の売却を希望するか否かを尋ねたが,原告A1からは明確な返答はなかった(甲30,乙100,原告A1本人)。
(ウ)その後も,原告A1から,被告に対し,本件共有持分権を売却してほしい旨の明確な依頼はなかった。
原告A1は,平成10年11月ころ,被告渋谷支店の前波に対し,リンクの最終売却価格について,問い合わせたところ,分からないとの回答であったため,信託期間満了時において,信託不動産を売却せずに,そのまま顧客に引き渡す方がよいのではないかと述べた(原告A1本人)。
(エ)原告A1は,共同所有者から売却の打診を受けたビルの2フロア分については結局売却をしていない(原告A1本人)。
イ原告A1は,H1に対し,中途売却の可否について問い合わせたが,相続とか特別な事情の人の場合以外は認められないと返答されたので,中途売却を諦めたと主張し,原告A1本人は,これに沿う陳述(甲30)ないし供述をしている。
しかし,原告A1本人は,被告から原告A1の妻に対し,他の顧客の売却事例として,6000万円から6500万円の事例があった旨の報告がされたことを認める供述をしており,被告において,中途売却の可否について相続などの特別な事情の場合以外は認められないと返答しながら,他の顧客の売却事例を紹介するのは不自然であり,原告A1本人の前記陳述及び供述は採用できない。
ウそして,前記アの事実によれば,原告A1が被告に対し,本件共有持分権の売却を申し入れなかったのは,結局,その所有するビルの2フロアの売却を行っておらず,そのために買主を探したという事実も認められないことからすると,本件共有持分権の売却による損失を2フロアの売却益で損益相殺するという話が具体的には進まなかったからと推認できるのであり,被告において,原告A1に対し,本件共有持分権の中途売却が可能であり,原告A1が希望するのであれば,本件共有持分権の買手探しに協力することを伝えているから,被告には,平等義務違反の行為があったとは認められない。
(2)原告A3について
ア証拠によれば,原告A3がリンクを購入してからの経緯について,以下の事実が認められる。
(ア)原告A3は,昭和63年9月20日購入したeを平成7年9月7日売却して,売却損を確定させた(乙20の1,91)。
(イ)原告A3は,被告から信託不動産の状況を説明したいとの連絡を受けて,平成9年2月12日,顧問税理士であったMを同道して,被告東京中央支店八重洲を訪れて会合を持った。
原告A3は,被告担当者H2(以下「H2」という。)から,信託財産状況報告書に基づき,信託終了時に元金割れとなる可能性について説明を受けた。
原告A3は,被告においてこれまで信託不動産が信託終了時に元金割れを起こすことについて何の対策を取っていないことを批判するとともに,M税理士は,被告に対し,元本は確保してもらいたいとの希望を述べた(甲11,28,33,34,乙91,107,原告A3本人)。
(ウ)原告A3は,同月14日,H2に対し,本件共有持分権の評価額を知らせるように要請したが,評価が困難であるとの回答があったので,被告に本件共有持分権の売却を依頼した場合に,被告はどんな評価をつけて顧客に紹介するかとの問い合わせをファックスでしたところ,H2は,同月28日,原告A3に対し,具体的な価格を知りたいのであれば,信託受益権を購入する意向のある買主(投資家)を探して,購入価格を提示させるという方法があること,原告A3において希望するのであれば,被告としてその前提で活動できるとのファックスを送付した。
原告A3は,H2から最終的に本件共有持分権の評価額が6000万円であるとの回答を受けたが,6000万円の金額では不満であったので,中途解約の申出はしなかった(甲28,35,
乙123,原告A3本人)。
(エ)しかし,その後,原告A3は,同年10月ころ,H2に対し,本件共有持分権の中途売却を申し入れたが,被告から買手の紹介はなく売却は実現しなかった(甲28,乙91,107,原告A3本人)。
イ原告A3本人は,原告A3の問い合わせに対し,被告から本件A3信託契約の中途解約が可能であることや買手探しを手伝うという誠意のある回答がなかったと陳述(甲28)ないし供述をしているが,前記ア(ウ)(エ)のとおり,H2において,原告A3の問い合わせに対し,同原告の希望があれば,被告として活動できる旨の回答をしていること,本件共有持分権の評価額が6000万円であることを回答し,原告A3は,被告に対し,平成9年10月になって本件共有持分権の処分を申し入れているのであるから,被告が原告A3に対し本件A3信託契約の中途解約が可能であることや買手探しを手伝うことを述べていなかったとは認められず,原告A3本人の前記陳述ないし供述は採用できない。
ウそして,原告A3が同年2月の時点において,中途売却を申し入れなかったのは,本件共有持分権の評価額に不満があったからであり,原告A3に対する被告の対応に平等義務に違反する行為があったと認めることはできない。
しかしながら,前記ア(エ)のとおり,原告A3は,平成9年10月ころ,H2に対し,本件共有持分権の中途売却を申し入れたが,被告から買手の紹介はなかった。
H2は,被告において,買手探しに着手したが経済環境の激変もあり買手との話し合いがまとまらなかったと陳述する(乙91,107)が,前記第2,1(8)ないし(10)によれば,aについては,平成9年10月22日にR1がGに受益権を譲渡し,bについては,同月17日R2が,同月28日にR3が,平成10年2月19日に有限会社R4が,それぞれGに受益権を譲渡し,dビルについては,平成9年10月16日にR5株式会社が,同年11月4日にR6かつ及びR7が,同月19日にR8が,同月25日にR9が,それぞれGに受益権を譲渡し,平成10年1月8日にR10がR11株式会社に受益権を譲渡していることが認められ,これに加えて,前記4(2)ウに認定した被告とGとの関係,平成9年10月以前においてもGに対し多数の受益権の
譲渡が行われていることを考えると,Gに対する受益権の譲渡は被告のあっせんによって行われたと推認されるから,平成9年10月以降の経済環境の激変によって,原告A3の中途売却の申出については,買手との話合いがまとまらなかったとするH2の前記陳述は採用し難い。
そうすると,被告において,原告A3以外の委託者兼受益者については,平成9年10月以降もGに対する受益権譲渡を認めている事例が多数存在するのに,平成9年10月に,原告A3から本件共有持分権の中途売却の申出を受けながら,同被告に対し,買主を紹介しなかったのは,被告において,H2が前記陳述書でその理由を述べているほかには,何ら合理的理由を明らかにしていない以上,平等義務に違反する行為であるといわなければならない。
エ本件全証拠によるも,平成9年10月以降のリンクの中途売却の価格を明らかにする資料はないが,前記ア(ウ)のとおり,その直前に,原告A3は,H2から本件共有持分権の評価額が6000万円であるとの回答を受けているので,本件共有持分権の中途売却価格は6000万円と認めるのが相当である。
そして,前記第2,1(4)エのとおり,原告A3は,信託終了時において1399万0001円を受領したから,原告A3は,その差額である4600万9999円の損害を被ったというべきであり,これと相当因果関係のある弁護士費用としては,同損害の約7パーセントに相当する322万円を認めるのが相当である。
したがって,原告A3は,被告に対し,平等義務違反による不法行為に基づき,4922万9999円の損害賠償請求権を有する(なお,原告A3は,平等義務違反を理由とする債務不履行又は不法行為を選択的に主張して損害賠償を請求していると解されるから,弁護士費用の損害賠償請求が認められる不法行為請求を認めることとするが,その余の請求については,債務不履行を理由としても認められない。)。
(3)原告A4について
ア証拠によれば,原告A4がリンクを購入してからの経緯について,以下の事実が認められる。
(ア)原告A4は,新聞報道等により,不動産購入資金の借入金利息については,損益通算ができなくなるとの税制改正の動きがあることを知り,リンクが,所得税,住民税対策にならなくなるのではないかと考え,平成2年12月13日,被告阿倍野橋支店財務相談課課長H10(以下「H10」という。)に対し,リンクの中途売却をしたいと申し入れた。
これに対し,H10は,税制改正については,新聞報道がされている段階であり,税制法案が可決されたわけではなく,損益通算のメリットがなくなると決まったわけではないし,リンクは,信託期間中において原則として受益権を譲渡できず,信託契約の解除もできないことを説明し,中途売却はできないことを説明した(甲27,36の1,2,乙40の8,原告A4本人)。
なお,被告は,被告阿倍野橋支店従業員H11(以下「H11」という。)が,原告A4から,平成2年12月に,中途売却についての申入れを受けたことはないと主張し,H11が当時被告阿部野橋支店に在勤していなかったとする証拠(乙129)も提出しているが,他方において,平成2年12月ころに,税制改正を危惧して,原告A4から,中途売却の申出を受けたと主張しているから,上記のとおり,認定することができる。
(イ)原告A4は,平成3年の税制改正により,不動産所得の金額の計算上,土地購入資金の借入金利息については,他の所得と損益通算できなくなったため,サミット購入のための借入金について,平成3年12月26日に6545万円,平成4年1月27日に2700万円,同年12月28日に残額を繰り上げ返済した(甲27,乙96,原告A4本人)。
イ前記ア(ア)のとおり,原告A4が,被告に対し,平成2年12月ころ,中途売却を求めた際に,被告において,これを認めなかったことが平等義務に反するかについて検討するに,前記1(1)キのとおり,サミットについては,販売当初,原則として受益権の譲渡はできず,信託契約の解除もできない商品とされており,前記第2,1(8)及び前記4(2)ウによれば,平成2年12月当時,a信託契約の委託者兼受益者で,受益権譲渡や信託契約の解除をした者はおらず,この時点においては,被告は,委託者兼受益者からの希望があっても,受益権の買取り先を探すことは行っていなかったことが認められる。
そうすると,平成2年12月時点においては,当初の契約内容どおり,受益権の譲渡は,やむを得ない事情がない限りは認められず,信託契約の解除も認められていなかったのであるから,この時点において,原告A4からの中途売却の申出に応じなかった被告の対応をもって,平等義務に反するということはできない。
ウ次に,原告A4は,平成4年12月又は平成5年1月ころ,再び被告に対して中途売却を申し出たが応じられなかったと主張し,原告A4本人もこれに沿う陳述(甲27)ないし供述をしている。
(ア)しかしながら,原告A4の陳述(甲27)ないし供述以外に,原告A4が,被告に対し,平成4年12月又は平成5年1月に中途売却を申し入れたとの証拠はなく,これを裏付ける客観的な証拠は何ら存在しないし,S及びH12(以下「H12」という。)は,原告A4から平成4年12月又は平成5年1月ころに本件共有持分権の中途売却の申入れがあったことを否定する陳述をしている(乙96,97)。
(イ)前記ア(イ)のとおり,原告A4は,平成3年の税制改正により土地購入資金の借入金利息については,損益通算ができず,節税メリットが受けられなくなったため,サミット購入資金の借入金について繰り上げ返済をしているから,本件共有持分権を有している主な目的は,信託期間中の賃料収益からの配当金の支払を受けることと本件共有持分権の売却によるキャピタルゲインを期待することであったと認められる。
ところで,前記2(2)エ(イ)のとおり,原告A4の妻は,平成元年7月に手持ちの現金で購入したh1を平成8年5月まで所有していたことを考えると,原告A4において,平成4年末や平成5年初めの段階において,不動産の地価が回復することはないとの見通しを有していたとは認められず,被告に対し,上記時点で本件共有持分権の中途売却を申し出たとは認め難い。
(ウ)そうすると,原告A4が,被告に対し,平成4年12月又は平成5年年1月に中途売却を申し入れたとの事実はいまだ認めることはできないから,被告がこの時点で中途売却に応じなかったことが平等義務違反になるとの原告A4の主張は前提を欠く。
エ原告A4は,被告から平成8年ないし9年の時点で,本件共有持分権の中途売却を勧められたことはないと主張する。
前記ア(ア)のとおり,原告A4は,被告に対し,平成2年12月の時点において,既に中途売却を求めたところ,被告から,サミットは,原則として受益権の譲渡ができず,信託契約の解除もできないとして,これを拒否されていたのであるから,被告が,従前の方針を変更して,委託者兼受益者に損切りの意向があれば,中途売却を認め,被告において買手探しに協力することにしたことを考慮すると,原告A4に対し,その旨を告知し,同原告の意思を確かめる義務を負っていたと解するのが相当である。
(ア)原告A4本人は,平成8年や9年ころ,被告から損切りの話はなかったと供述をしている。
一方,平成6年10月から被告阿部野橋支店の課長をしていたH12は,被告阿部野橋支店と原告A4は,平成8年当時,h1の売却代金を被告阿部野橋支店に預金するように依頼できるほど良好な関係にあり,同年秋ころ,担当者のH13が原告A4を訪問し,信託不動産の状況報告書に基づき,不動産市況の状況や信託契約終了時の手続などを説明するとともに,原告A4の意向があれば中途売却ができ,被告において買主を探す協力をすること,中途売却の価格は5000万円程度であることを説明したが,原告A4は,本件共有持分権を信託終了時まで所有する意向で,被告の道義的責任を追及する態度に終始しており,それ以上話が具体化しなかったと陳述(乙97)している。
(イ)前記2(2)エ(イ)のとおり,原告A4の妻は,h1について,平成8年5月に売却しているから,原告A4において,この時点で,本件共有持分権についても損切りをする意向を持っていた可能性があるが,しかし,一方,前記(1)(2)及び後記(4)(5)の判示のとおり,被告は,原告A1,原告A3,原告A5,原告A6のいずれに対しても,本件共有持分権の中途売却の意向を確かめていることが認められ,さらに,証拠(証人E5)によれば,信託契約について中途解約をして共有持分権を売却できるということは,すべての委託者兼受益者に告知をしていることが認められ,これらの事実によれば,被告が原告A4に対してのみ,損切りの話をしないことについて合理性はなく,被告阿倍野橋支店担当者H12が,原告A4に対し,損切りの話しを持ってい
ったのに,原告A4が被告の道義的責任を追及してそれに応じなかったとの陳述内容は,十分信頼できるといえる。
そうすると,原告A4の陳述ないし供述以外に平成8年や9年ころ,被告から本件共有持分権の中途売却の話はなかったことを裏付ける証拠がないことに照らすと,いまだ,被告が,本件共有持分権の中途売却の話をしなかったと認めることはできず,この時点においても,被告に平等義務違反の行為があったと認められない。
(4)原告A5について
ア証拠によれば,原告A5がリンクを購入してからの経緯について,以下の事実が認められる。
(ア)Qは,平成6年ころ,被告岡山支店に対し,リンクについて中途解約できないかと尋ねたところ,被告は,被告において,買主を探すことはできないが,委託者兼受益者において買主を探してくれば対応すると返答した(甲31,証人M)。
(イ)被告岡山支店従業員E5(以下「E5」という。)は,Qに対し,平成8年12月19日,信託財産の状況報告書に基づき,信託契約終了時の手続,信託不動産の賃貸借の状況及び不動産市況の状況等について報告し,原告A5において,損失を確定させる希望があるのであれば,6000万円台半ばでの買手探しに協力できると申し出た。
Qは,顧問税理士であった0税理士とも相談の上,売却価格が金額的に不満であったこともあって,損切りの希望をしなかった(甲11,31,乙94,証人M,証人E5)。
イ原告A5は,平成6年ころ,被告に対し,損切りの可能性について問い合わせたのに,自分で買主を探してくれば対応するという程度の対応しかしなかったのは平等義務に反すると主張する。
しかし,前記第2,1(9)及び前記4(2)ウによれば,平成6年の段階において,bの不動産共有持分権について,既に受益権を譲渡していたのは,1口分を有していた者と2口分を有していた者の他にはデベロッパーであるCのみであり,本件全証拠によるも,これらの者が,被告に対し,本件共有持分権の中途売却を求めたところ,被告において,買主を探すのに協力したと認めるに足りる証拠はない。
そうすると,被告において,平成6年当時,損切りの意向があるのであれば,自分で買主を探してくれば対応するという対応をとったことが,平等義務に違反した行為であったということはできない。
ウ次に,原告A5は,平成8年か9年ころ,損切りの話は聞いたが,被告の担当者から,不動産市況は底であるとして,損切りをした方がよいと積極的に勧められなかったのは説明義務違反となると主張し,証人Mもこれに沿う陳述(甲31)ないし証言をしている。
(ア)まず,被告担当者において,不動産市況は底であると言ったかについて検討するに,証拠(乙94,証人E5)によれば,被告担当者E5は,Qが,被告に不動産市況の低迷による責任を負わせようと,損切りの判断について,被告の判断に従うようなそぶりを見せていたところ,損切りは,委託者兼受益者において決断するべきものであるから,E5において,不動産市況は底であると断定するような言い方はしないようにと気を付けていたことが認められるのであり,これと,証人Mの陳述ないし証言のほかに,原告A5の主張を認めるに足りる証拠がないことに照らすと,E5において,このころ,不動産市況は底であるから損切りはしない方がよいことを勧めたと認定することはできない。
(イ)また,前記3(2)エのとおり,被告は,委託者兼受益者から損切りを求められた場合に,ある委託者兼受益者について,買主探しに協力して以降は,他の委託者兼受益者についても買主探しに協力するという限度で,平等義務を負うものであって,損切りの決断をするのは委託者兼受益者であり,被告において,損切りを強く勧めなかったことは,そもそも平等義務違反にも説明義務違反にも当たらない。
そして,前記ア(ア)のとおり,Qは,顧問税理士であった0税理士とも相談の上,本件共有持分権の売却価格の金額について不満であったこともあって,損切りの希望をしなかったのであり,自らの意思によって,本件共有持分権の中途売却をしなかったものと認められる。
(ウ)よって,被告の対応が,平等義務又は説明義務に違反しているとの原告A5の主張は理由がない。
(6)原告A6について
ア証拠によれば,原告A6がゲインを購入してからの経緯について,以下の事実が認められる。
(ア)原告A6は,平成8年12月ころ,被告から信託不動産の状況報告書に基づき,信託財産の賃貸借の状況及び不動産市況の状況等について報告を受けた。
E5は,原告A6に対し,平成9年5月か6月ころ,本件共有持分権について中途売却をする意向があるのであれば,被告において買手を探すのに協力することは可能であると申し出たが,原告A6は,被告に対し,借入金の金利を下げることや顧客にのみ損失を負わすのはおかしいなどと言って被告が責任を分担することを要求して,本件共有持分権の中途売却の意向は一切示さなかった(甲21,44,乙94,証人E5,原告A6本人)。
(イ)原告A6は,平成11年5月8日,原告A6宅を訪れたE5に対し,再び,ゲインについて被告は利益を得ているのに,顧客に対してのみ損失を負わすのはおかしいなどと言って,被告に対し損失補填をするように要求するとともに,本件共有持分権の中途売却の事例について,どの程度の価格で売却できたのかを明らかにするように求めたが,E5は,1,2年は取引事例がないと言って,具体的な金額を明らかにしなかった。
その後においても,原告A6が,被告に対し,本件共有持分権の中途売却を求めたことはなかった(甲29,55(枝番を含む。),乙94,証人E5,原告A6本人)。
イ原告A6は,被告から平成11年5月に至るまで中途売却についての情報を知らされず,また,同月には被告担当者から虚偽の説明を受けるなどして平等義務に違反した対応をされたため,中途売却を不可能にされたと主張し,原告A6本人も同様の陳述(甲29,44)ないし供述をしている。
(ア)しかしながら,証拠(甲55(枝番を含む。),原告A6本人)によれば,原告A6は,P銀行から購入したメッツについては,具体的金額を提示されて中途売却の説明を受けたのに,中途売却に応じなかったこと,原告A6は,本件共有持分権の値段が下がっているのでそもそも売却に賛成でなく,被告の対応に憤慨していたことが認められ,これらの事実によれば,前記ア(ア)(イ)に認定したとおり,原告A6は,一貫して本件共有持分権の価値が下落し原告A6に損害を生じることについて被告の責任を追及して損失補填を要求しており,中途売却の意向を示していなかったことは明らかであり,被告の対応によって本件共有持分権の中途売却を不可能にされたとの原告A6本人の前記陳述ないし供述は採用できない。
また,前記ア(ア)のとおり,被告担当者E5は,平成9年5月か6月ころ,原告A6に対し,中途売却の意向があれば,買手探しに協力するとの申出をしており,被告において,原告A6に中途売却についての情報を知らせなかったという平等義務違反は認められない。
(イ)次に,前記ア(イ)のとおり,E5は,原告A6から本件共有持分権を中途売却した際の価格を明らかにするように求められたのに,1,2年(証人E5は,1,2年とは平成10年,11年のことであると証言している。)は,取引事例がないとして,中途売却の具体的な金額を明らかにしなかった。
ところで,前記第2,1(10)によれば,dビルにおいて,平成10年以降受益権を譲渡している事例は,同年1月8日にR10がR11株式会社に対し,同年3月 30日にTがR11株式会社に対し,それぞれ受益権を譲渡した2例のみであり,証拠(乙78)によれば,後者については,相続に伴う譲渡であると推認されるから,平成10年以降の中途売却による受益権譲渡事例はわずか1例であり,E5がこの情報を得ていなかったことも考えられ,原告A6が主張するように,E5が殊更虚偽の説明をしたとまで認定することはできない。
E5において,被告の本社に確認した上で,平成10年におけるR10の中途売却の金額や平成9年において多数行われた中途売却事例における金額を原告A6に対し明らかにすることが,同原告に対する誠実な対応
であったということができるが,E5が,原告A6に対し,上記の情報を知らせなかったことをもって平等義務に違反する行為であったということはできない。
加えて,前記(ア)のとおり,原告A6は,P銀行からメッツについて金額を提示されて中途売却の説明を受けたのに中途売却に応じなかったことからすると,E5から中途売却事例の金額を聞いたとして中途売却の意向を示したとは到底考えられないし,仮に,平成11年5月時点において,原告A6から中途売却の意向が示されても,前記のとおり,平成10年1月8日を最後に中途売却による受益権譲渡の事例がないことを考えると,被告において,経済情勢の変動により買手が見つからず,結局買手を紹介できなかったと推認されるのであり,被告の行為と原告A6の損害との因果関係も認められない。
(ウ)したがって,原告A6の平等義務違反の主張は理由がない。
6結論
以上によれば,原告A2の被告に対する説明義務違反による不法行為に基づく請求については,9200万9999円及びこれに対する平成12年6月24日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,原告A3の被告に対する平等義務違反による不法行為に基づく請求については,4922万9999円及びこれに対する平成12年6月24日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから,これらを認容することとし,原告A2及び原告A3のその余の請求及びその余の原告らの被告に対する請求は,いずれも理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。

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